放送中の『もしもこの世が舞台なら、楽屋はどこにあるのだろう』(フジテレビ系)で菅田将暉の演技を見ているとき、「近年は『ミステリと言う勿れ』などの物静かな役柄が増えたけど、以前はこういう熱い男の役が多かった」と感じさせられた。
想いを寄せる女性教師の婚約者を殴る生徒役を演じた『大切なことはすべて君が教えてくれた』(フジ系、2011年)、復讐に執念を燃やす脱獄犯を演じた『ランナウェイ~愛する君のために』(TBS系、11年)など、いくつかの作品が頭に浮かんだ中、「今では最もレアな姿かな」と思ったのが『ラヴソング』(フジ系、16年 ※FODで配信中)。
菅田は福山雅治、藤原さくらとの三角関係を熱っぽく演じて強烈なインパクトを放った。同作は『じゃあ、あんたが作ってみろよ』(TBS系)で話題の夏帆が意外な役柄で出演していたことも含め、あらためてどんな作品だったのか。ドラマ解説者・木村隆志が掘り下げていく。
いきなり菅田将暉が福山雅治に頭突き
第1話冒頭、物語は神代広平(福山雅治)がベッド上で女性からビンタされるシーンで幕を開けた。福山が1990年代から続く稀代のモテ男ぶりを見せた次のシーンは、ヒロインの佐野さくら(藤原さくら)が登場。ただ、「サクラ満開の道をバイクで走り、花びらが口の中に入ってけげんそうに吐き出す」というシーンだった。
どちらも「美しさから醜さへの落差を見せる」という演出家こだわりのオープニングだったが、この2シーンで『ラヴソング』が一筋縄ではいかない作品である様子がうかがえた。
神代は臨床心理士として働きながらも、女性の家を転々とするだらしない男。ミュージシャンの道を挫折し、音楽の未練を断ち切れずにいるほか、過去の恋愛から人を愛せなくなっていた。
さくらは児童養護施設で育ったあと自動車整備工場で働いているが、吃音症から人と話そうとせず周囲となじめずにいる。たびたび喫煙シーンがはさまれるなど、やさぐれたキャラクターとして描かれた。
ある日、さくらの上司が神代に彼女の症状を診てもらう機会が設けられ、2人は出会う。その後、神代は言語聴覚士の宍戸夏希(水野美紀)を介した音楽療法で、さくらの音楽的な才能に気づき、彼女とともに再び音楽の道を歩みはじめていく……。
菅田が演じたのはそんな、さくらに想いを寄せる幼なじみの天野空一。アルバイトをしながら調理師専門学校に通っているが、誤解から「菅田将暉が福山雅治に頭突きする」というシーンもあるなど、本気で2人と向き合う熱い男として描かれた。さらに専門学校の事務員・渡辺涼子(山口紗弥加)との危うげな関係性、歌手デビュー前の歌唱シーンなど、現在の活躍に至る片りんがうかがえる。
一方、夏帆が演じたのは、さくらにとって児童養護施設時代からの姉代わりである中村真美。一緒に住みながらキャバクラで働いているが、結婚が決まり、親に捨てられた過去に悩みながらも出産に挑む姿を演じた。さくらが歌をはじめるきっかけも「真美の結婚式でスピーチをする」という目標のためであり、最終話まで影響を与える重要な役柄だったのは間違いない。
