「長嶋茂雄でなければいけない生き方をされていたんだなって思ったわけです」 徳光和夫が語る長嶋茂雄の“美学”とは?
TOKYO FMで月曜から木曜の深夜1時に放送の“ラジオの中のBAR”「TOKYO SPEAKEASY」。今回のお客様は、徳光和夫さんとナイツ・塙宣之さん。ここでは、徳光さんが、生前から交流が深かった長嶋茂雄さんについて語りました。

(左から)徳光和夫さん、塙宣之さん

◆長嶋茂雄の美学

徳光:長嶋さんはね、やっぱり長嶋茂雄っていう人生を送ったと思うんですよ。これは推測の域を出ませんが“事実だろうな”と思うことが2つほどあるんですけれども。1つは、現役を退いて監督になりましても、昔の現役時代のスーツを着ることができた。それは長嶋茂雄である以上、やっぱり現役時代の長嶋茂雄の体型を損ねちゃいけないと。急に監督になって太っちゃったりなんかして。

塙:いらっしゃいますもんね(引退してから)太っちゃう人。

徳光:ですから、長嶋さんは監督時代も田園調布から多摩川辺りを常にランニングしまして体型を維持したわけですよ。

塙:すごい。

徳光:これが凄いですよね、なおかつ腹筋を鍛えてですね。

塙:へえ!

徳光:なぜ腹筋を鍛えていたかと言いますと、胴上げをされたときに体がVの字になるから。多分、監督がVの字になって胴上げされているのは、たぶん長嶋さんだけですよ。

塙:はぁ~! 確かにVの字になっていますね。

徳光:なっているでしょ?

塙:それは“お客さんが喜ぶから”というために?

徳光:それが長嶋茂雄じゃないですか。そして“常に長嶋茂雄でなければいけない”という美学だと思うんでありますけどね。

◆“長嶋語録”の裏側

徳光:もう1つは、長嶋さんって面白いことを言うじゃないですか、あれも多分に意識していたんじゃないかと思います。

塙:本当ですか?

徳光:うん。「長嶋茂雄は面白いこと言うぞ」っていうことをですね……例えば、長嶋さんが還暦のときに、記者団が囲んで「還暦を迎えたお気持ちはどうですか?」って聞いたら、「うーん、初めての還暦で……」って“二度目の還暦があんのかい!”っていう(笑)。“初めて”を付けただけで面白くなるわけじゃないですか、これは「長嶋茂雄らしいぞ」「長嶋茂雄はこういう人だぞ」っていう長嶋さんのリップサービスだと思いますね。

塙:なるほど。

徳光:ただ、最初からそういうことを(意識して)言う方ではなかったと思うんです。だんだん「自分のことを面白がってくれる人がいるな、それはこういうことなんだな」っていう長嶋さんなりの分析があったのではないかと。

塙:はいはい。

徳光:僕が体験したのはですね、長嶋さんの右半身がちょっと不自由になりまして、それからの話なんですけれども、ある実業家の息子さんの結婚式で、長嶋さんが乾杯の音頭をとることになって。そうしたら、長嶋さんが来てくださったんですが、熱が出ちゃったらしいんですよ。

しかし、ここが長嶋さんらしいところなんですけれども、タキシードを着て、出席者と同じ格好して「実はいま体調を崩しちゃって、乾杯の音頭までに体調が悪くなって退席するなんてことになると失礼だから、申し訳ないけれども代わってもらえないか」っていうことで来たわけですよ。

塙:うん。

徳光:それで後日、僕が長嶋さんと立教大学の野球部の会があったので、「あのときは大変でしたね。どのくらい熱が出たんですか?」って聞いたら「3割7分8厘」って答えたの。

塙:うわぁ(笑)。もう鉄板すぎて本当におかしいです、3割7分8厘は(笑)。

徳光:でしょ? これは嘘じゃない本当の話。そのときに俺が思ったのは、長嶋さんは長嶋茂雄を演じているんじゃないけど、長嶋茂雄でなければいけない生き方をされていたんだなって思ったわけですよ。

塙:僕らもそういうネタを(漫才で)やりますけど、嘘じゃないんですもんね。

徳光:嘘じゃないんだ、僕が実際に聞いたんだから。それを同じ立教の野球部の奴と一緒に聞いて大笑いしたんです(笑)。

塙:ちゃんと証人もいらっしゃるんですね(笑)。しかも「野球」という自分のフィールドで外さないというのも……すごい人ですね。

<番組概要>

番組名:TOKYO SPEAKEASY

放送日時:毎週月-木曜 25:00~26:00

番組Webサイト:https://www.tfm.co.jp/speakeasy/

番組公式X:@TokyoSpeakeasy