【追悼】KISSのエース・フレーリーは「永遠の道化師」だった

74歳でこの世を去ったKISSのギタリスト、エース・フレーリー。彼はロックンロールの世界を、最高のコメディアンに匹敵するウィットと笑い声で駆け抜けた。

ゴーストスリープ・トークンが匿名性を極限まで追求するよりずっと昔から、KISSはシンプルなメイクとハイヒールでロックファンを惑わせていた。だが、どれほど彼の顔や体が”スペースマン”のコスチュームに隠れていようと、その内側に抜群の間合いを持つコメディアンが潜んでいることは誰の目にも明らかだった。

10月16日(現地時間)に74歳で亡くなったKISSのリードギタリスト、エース・フレーリーは、鋭い機知と電撃のような笑い声──ファンの間で”アック!(ack!)”として知られる──で、いつも不機嫌そうなジーン・シモンズの仏頂面を打ち消していた。シモンズの”デーモン”がKISSのしかめっ面なら、フレーリーの”スペースマン”は高笑いだった。

その好例が、1979年に出演した伝説的な『トム・スナイダー・トゥモロー・ショー』である。KISSファンでなくとも必見の回で、当時のトーク番組が持っていた奔放で生々しい空気がそのまま映し出されている。司会のスナイダーがメンバーを紹介する場面──ポール・スタンレーは”スターチャイルド”、ピーター・クリスは上半身裸の”キャットマン”、ジーン・シモンズは悪魔的な装い、そしてフレーリーは”スペースマン”として登場──で、スナイダーはシモンズを「ベース(魚のバス)」プレイヤーと読み違えてしまうのだ。

するとフレーリーがすかさず割って入る。「俺はリードギタリストじゃない、”トラウト(魚のマス)・プレイヤー”だよ」

インタビューはそこから脱線していく。「それぞれの衣装の意味を教えてくれ」とスナイダーが尋ねると、フレーリーは答える。「この衣装は見ればわかるだろ?」──そしてあの愉快な高笑いを響かせた。

その後はまるでクラブのコメディアンのように、ベルトの話や、その下にあるものの話、フラッシュ・ゴードンのクローゼットを盗んだというジョークまで飛び出す。スナイダーが「君は宇宙飛行士の格好をしているんだね」と言うと、フレーリーは即座に返す。「いや、実は配管工なんだ!」

スナイダーも負けじと、「じゃあ楽屋にちょっとしたパイプがあるんだが、それを見てもらおうかな」と返すと、フレーリーは「聞かせてくれよ!」と応じ、狂気じみた拍手を交えながら爆笑した。その間もスタンレーはニヤリと笑い、クリスはくすくす笑い、シモンズは終始不機嫌な表情を崩さなかった。だがフレーリーはそんなことは気にしない。彼はその瞬間、ステージの主役だったのだ。

KISSのステージでも、彼は自分の見せ場を心から楽しんでいた。ギターソロは煙や火花、時にはロケットまで打ち上げる派手な演出で、完全にショーの一部だった。1980年代のテレビ出演では、ギターから煙を出す仕掛けを説明しようとして誤ってスモークを爆発させてしまった。

「こうして気管支炎になったんだよ」とその場でアドリブ。スタジオが煙に包まれる中、またしても最後に笑ったのはエース・フレーリーだった。

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From Rolling Stone US.