韓国の実力派俳優ソン・ジュンギが、新たな一面を見せるドラマ『マイ・ユース(My Youth)』(フジテレビの動画配信サービス・FODで国内独占配信中)。子どもの頃の心の傷を今もなお引きずるソンウ・ヘ(ソン・ジュンギ)が、初恋の人と再会したことをきっかけに、止まっていた時間を少しずつ取り戻していく姿を描いた、ヒューマンロマンス作品だ。
W主演を務めるのは、映画『ハン・ゴンジュ 17歳の涙』での迫真の演技で韓国映画界に鮮烈な印象を残し、以降も映画やドラマで活躍するチョン・ウヒ。軽やかかつ、自然体でありながらも、登場人物の心情に寄り添う繊細な演技で話題を集める2人が、“青春の続きを生き直す”物語を全12話で紡いでいく。ドラマ配信前に来日を果たしたソン・ジュンギに、本作に込めた思いや役との向き合い方について話を聞いた。
「あまりにも好きすぎて…」ドラマ『First Love 初恋』にハマる
ジュンギは、ドラマ『ヴィンチェンツォ』(Netflixジャパン1位)、『太陽の末裔Love Under The Sun』(韓国で最高視聴率41.6%)、『財閥家の末息子~Reborn Rich~』(2022年韓国最高視聴率ドラマ)など、数多くのヒット作に主演。日本でも多くのファンの心をわしづかみにしてきた、世界の韓流ブームをけん引するトップ俳優だ。
彼がこうしたロマンス作品に出演するのは、およそ9年ぶり。前作『財閥家の末息子 Reborn Rich』との対比が、出演の決め手になったという。
「あの作品は、スケールの大きなストーリーと複雑な世界観が魅力でしたが、その反動というか、次はもっと日常に根ざした、静かだけど心に響く作品に惹かれていたんです。そんなときに『マイ・ユース(My Youth)』の台本と出会い、“ぜひやりたい”とすぐに思いました」(ジュンギ、以下同)
実は、宇多田ヒカルのヒット曲から生まれたNetflixオリジナルドラマ『First Love 初恋』にも、浅からぬ影響を受けたようで…。
「知り合いの勧めで見たのですが、途中から惹き込まれ、一気見してしまいました。『マイ・ユース』の台本と出会う少し前だったと思いますが、記憶をたどるような構成や、静かで美しい空気感に心が動いたのは確かで…。後から考えるとあの作品が、自分の中に残っていて、今作への出演にも何かしらの影響があったのかもしれません」
物語の舞台となった雪の北海道にも心を奪われたそうで、取材翌日に行われたイベントで、「今年の冬には、久しぶりに行ってみたい」と語っていた姿も印象的だった。
「あまりにもこのドラマが好きすぎて以前、東京に来た際、企画プロデュースをされた方とお会いして、質問責めにしてしまったほど(笑)。本当にすばらしかったです」
役と向き合う“俳優ソン・ジュンギ”流のこだわり
『マイ・ユース』でジュンギが演じるのは、元・天才子役という経歴を持つ、小説家でフローリストのソンウ・ヘ。華やかなキャリアの裏で、幼い頃に受けた心の傷や人間関係の裏切りによって、いまも周囲に心を閉ざしたまま日々を送っている。
台本を読み、彼の心に最初に浮かんだ感情は、「切なさ」と「ときめき」だったという。
「ソンウ・ヘは、子どもの頃のつらい記憶や感情を、今でもまだ引きずっていて…。完全には大人になりきれず、どこか子どものままでいるような人物なんです。表面的には穏やかに暮らしているかのように見えたとしても、心の奥底にはずっと癒えることのない痛みを抱え続けている。でも、心の傷や“愛の欠乏”といった満たされない要素があるからこそ、周囲の人々の優しさや、初恋の人との再会のときめきが、より鮮やかに感じられる部分もあって…。切ないけれど、すごく美しい物語だと感じました」
そこはかとなく“陰を感じさせる”雰囲気をまとっているとはいえ、ソンウ・ヘは決して“陰鬱な青年“ではない。「こんなステキな花屋の店員がいたら、ちまたで話題にならないわけがないだろう…!」と、思わずツッコミを入れたくなるほど爽やかで、黙っていても自然と魅力がダダ漏れる。ぶっきらぼうだが、天然で少し抜けているところも、“そそられてしまう”ゆえんだ。
そんな彼が、チョン・ウヒ演じる、芸能マネージメントの仕事一筋で“猪突猛進”タイプのキュートな女性ソン・ジェヨンと再会し、少しずつ心を開いていく過程が、草花に囲まれた優しい世界の中で丁寧につづられていく――。
物語の鍵となる第2話では、ソンウ・ヘと彼の初恋の人であるソン・ジェヨンの幼少期のエピソードが別キャストによって自然と描かれており、ジュンギ本人は出演していない。それでも彼は、その回の台本を、「最も多く読み込んだ」と明かす。
「自分が出ていないシーンだからこそ、あの頃の感情を深く理解したかったんです。彼が抱えているものの“原点”に触れることで、より一層深みが出せると思ったので」
役と向き合う上では、「まずは、そのキャラクターと自分に似ているところを探す」のが、“俳優ソン・ジュンギ”流のこだわりだ。
「小さな共通点を見つけて、そこから徐々に世界を広げていく。そうしないと、ナチュラルな演技にはならない気がするんです。ただ、今回は役柄との共通点を見つけるのが、本当に難しくて…。でもだからこそ、第2話の台本を何度も読み返して、彼の感情に寄り添うように心がけました」

