りんかい線の新型車両71-000形が10月1日から運行開始。同日に東京テレポート駅で出発式が開催された。事前に運行開始日を公表していたこともあり、当日は関係者だけでなく、一般来場者も多数見学に訪れていた。
運行初日の71-000形は、東京テレポート駅を始発とする列車(新木場行)を皮切りに、しばらくりんかい線内を往復していたが、通勤時間帯になると通勤快速としてJR埼京線に乗り入れ、川越駅まで運行した。筆者は東京テレポート駅での出発式を取材した後、新木場駅から川越駅まで71-000形の通勤快速にも乗車した。今回はそれぞれの様子を紹介したい。
東京テレポート駅で出発式、「りんかる」も登場
71-000形の出発式では、まず改札内コンコースにてテープカットを実施。特設ステージ横に用意されたモニターで71-000形の走行シーンを再生しつつ、司会が車両概要の説明を行った。その後、東京臨海高速鉄道代表取締役社長の西倉鉄也氏が登壇した。
既存の70-000形から71-000形への置換えに関して、西倉社長は「当社で初めての世代交代」とし、「安全性、安定性、快適性、バリアフリー、セキュリティすべてにおいて、現在の車両を大きく上回る性能の実現をめざしました」と説明。新型車両ならではの特徴を多数挙げた上で、「71-000形が皆様のご利用に際し、これまで以上に快適さと彩りを添えることができますよう精一杯努めてまいります」と述べた。その後、りんかい線キャラクター「りんかる」も登場し、西倉社長ら5名によりテープカットが行われた。
71-000形は、東京テレポート駅を始発とする同駅16時7分発の新木場行として入線。その際、一般来場者からも歓声が上がり、乗車した鉄道ファンが先頭車両に移ってくる様子もうかがえた。管理駅長の飯島康之氏と「りんかる」が右手を高く掲げる発車合図を受け、71-000形が警笛を大きく鳴らしながら新木場方面へ発車。列車が去った後、ホーム上で一般来場者から大きな拍手が起こった。
ちなみに、ホームに降りてから71-000形が入線するまで少し時間があり、その間、大崎方面の列車に向かって「りんかる」が手を振る場面もあった。後で調べたところ、10月1日は「都民の日」で、一部を除く都内の学校は休校になっていたとのこと。そのため、平日ながら小学生から高校生くらいの鉄道ファンも多数見られた。
りんかい線内を往復する71-000形に乗車
東京テレポート駅から新木場駅まで距離が短いこともあり、出発式の終了後、71-000形はすぐに東京テレポート駅に折り返してきた。71-000形は同駅16時25分発の大崎行として入線。筆者も早速乗車することにする。同時刻に列車が発車した。
ここで、71-000形の外観と内装を改めて見ておこう。外観において、前面は既存の70-000形にも見られた丸みや色を継承しつつ、優しい微笑みをデザインしている。側面は、窓の上辺から腰部にかけて、エメラルドブルーのグラデーションを背景に、スカイブルーの波線を3本配置。先頭部には白とターコイズグリーンを配した。車端部の車番・号車・ピクトグラム表示の背景が、隣の車両につながるようにデザインされている。種別・行先表示はフルカラーLED。E233系をベースに、総合車両製作所の「sustina」車体を採用した。窓の高さまで色が付けられているため、ホームドア越しでもよくわかり、ひときわ明るい印象に見受けられた。
内装は壁面を白、床面をグレー基調とし、妻壁と吊り手にネイビーを取り入れている。座席はロングシートで、ビル群を表現する青いブロックパターン(優先席は赤)をデザイン。適度なやわらかさで座り心地も良い。大型の袖仕切りは、中央部がガラス張りになっており、妻壁に波の揺らぎを表現する横目の柄が入っているが、じつは70-000形で採用されていた木目調のオマージュにもなっている。総じて落ち着いた空間になっており、その中に散りばめられた、臨海副都心を表現するアクセントカラーが引き立っていた。
71-000形は全車両にフリースペースを設けるとともに、床面高さを70-000形から50mm低くしている。これにより段差が軽減され、車いす・ベビーカー利用者も乗車しやすくなる。ドア上部には、70-000形より大きい17.5インチのディスプレイを2基ずつ設置。荷棚と一部吊り手も低く設計され、吊り手は握りやすい形状になっている。加えて、車体幅が70-000形より150mm拡大され、混雑時の圧迫感が軽減される。
筆者が乗車した71-000形の列車(大崎行)は、定刻通り東京テレポート駅を発車。ドアの開閉はラック・アンド・ピニオン式で静かに動作し、70-000形より静かに感じた。制御方式はIGBT素子のVVVFインバータ制御で、E233系と同じ音を発する。筆者は3号車を利用したが、鉄道ファンだけでなく通勤利用者や観光客も乗車しており、立席が出る程度には混雑していた。大井町駅で乗客が多少入れ替わったものの、ほとんどの人が大崎駅まで乗車した。
終点の大崎駅には16時38分に到着。予想通り、ここでも多くの鉄道ファンが待ち構えており、新宿方面への乗換え客と鉄道ファンでホームはあふれ返った。黄色い線から出ないよう、注意喚起のアナウンスも行われていた。後続の通勤快速に接続した後、71-000形は折返しの新木場行として16時45分に大崎駅を発車。再び地下へ入っていった。
りんかい線の列車は大崎駅で折り返す列車もあれば、JR埼京線に乗り入れ、渋谷・新宿方面へ直通する列車もある。埼京線の大崎~新宿間は相鉄・JR直通線の列車も走行し、E233系の他に相模鉄道の12000系も使用される。りんかい線の71-000形が運行開始することで、埼京線はJR東日本のE233系と、E233系をベースにした私鉄・第三セクター鉄道の車両が行き交う路線にもなった。ベースとなる車両は同じでも、会社ごとに異なる個性が現れていることに驚いた。
71-000形、運行初日から通勤快速で川越線へ
出発式が行われた後の71-000形は、りんかい線内をしばらく往復したが、運行初日から早速、川越行の通勤快速としても運行された。筆者も大崎駅から新木場駅へ移動し、71-000形の通勤快速を川越駅まで乗り通すことにした。71-000形の前に埼京線開業40周年記念ラッピング列車が入線したこともあり、同駅のホーム先端付近にも鉄道ファンの姿が見られた。
今回も筆者は71-000形の3号車に乗車。新木場駅を18時44分に発車した時点では、まだまだ車内に余裕があり、通勤利用者より鉄道ファンのほうが多いくらいだっが、隣の東雲駅から通勤利用者が続々と増え、東京テレポート駅までで座席はほぼすべて埋まった。19時4分に大崎駅に到着し、いよいよJR埼京線へ乗り入れる。
乗務員交代を終え、71-000形の通勤快速は19時5分に大崎駅を発車。りんかい線内以上に車内は混雑し、恵比寿駅から赤羽駅まで、利用者はそのつど入れ替わるものの、混雑は続いた。池袋駅までは山手線と並行しており、埼京線のほうが駅が少ないため、山手線外回りの列車を追い抜く様子も見られた。
赤羽駅から大宮駅までは快速運転を行う。同区間の途中停車駅は武蔵浦和駅のみ。浮間船渡~戸田公園間で荒川を渡り、埼玉県に入った。見晴らしの良い高架区間を高速で走ることに加え、北与野駅付近まで新幹線と並走する。外が暗いので正確に把握できなかったが、71-000形の通勤快速は「はやぶさ・こまち39号」または「やまびこ・つばさ157号」と運よく並び、鉄道ファンとしても面白いひとときだった。ただし、新幹線のほうが速いので、少しずつ追い抜かれて後を見送った。
新幹線には追い抜かれる通勤快速だが、埼京線の種別では最も速い。武蔵野線との乗換駅である武蔵浦和駅で大宮行の各駅停車と接続した後、大宮駅までノンストップで走行する。「はやぶさ・こまち32号」とすれ違ったあたりで北与野駅を通過し、地下区間へ。19時48分、71-000形の通勤快速は大宮駅に到着した。大宮駅でも通勤利用者に加えて多くの鉄道ファンが71-000形を待っていたようで、注意喚起のアナウンスも聞こえた。
大宮駅からはそのまま川越線に直通する。19時52分に同駅を発車し、鉄道博物館付近で地上に上がってから大きく左にカーブ。開館時間中なら、鉄道博物館の館内からも通過シーンが見られるだろう。大宮駅から再び混み合うものの、隣の日進駅で多くが下車。そこから先は単線区間となり、対向列車との待ち合わせも行った。荒川を渡ってさいたま市から川越市に移り、南古谷駅の手前で川越車両センター横を通過。やがて東武東上線が接近し、20時17分、川越駅に到着した。71-000形は同駅20時25分発の通勤快速として新木場方面へ折り返す。
71-000形は今後も増備が進められ、2027年度上期中に全8編成(10両編成×8編成)がそろう予定となっている。70-000形の意匠を受け継ぎつつ、現代水準の設備にアップグレードした71-000形。内装も高級感ある雰囲気で快適に利用しやすい。外観も明るい車両に見受けられた。今後は日中の川越線直通や埼京線内折返しなど、他の運用にも活躍を広げていくだろう。














