
バカンス明けの9月、各地のイベントが一斉に動き出した。パリ南郊のオートドローム・ド・リナ=モンレリーも例外ではない。9月27日、空気は冷たく、最低気温は一桁・濃い朝靄。吐く息が白いほどで、バイクで向かった身には冬装備が正解だった。
【画像】「Italian Meeting 2025」にアルファロメオ、フィアット&アバルトなどが集結!(写真35点)
このItalian Meetingはサーキットの運営母体であるUTACの主催。走行枠は
1)フィアット&アバルト、2) アルファロメオ、3) エレガントなセダンとクーペ(Berlines et coupés de charme)、4) スーパーカー、そして 5) モーターサイクルの5カテゴリー。アルファロメオが単独枠を持つ編成は、フランスでのアルファ人気の厚さを物語る。街場では実用のフィアットが目立つが、趣味車としてはアルファが主役だと実感する一日だった。
フィアット&アバルト枠は現行595/695系が多数派。そこへA112 Abarthやアバルト1000TCRのような往年の小兵が混ざる。ショートホイールベースに高回転ユニット、甲高いエギュゾー(エグゾーストノーツ)が観客の耳を射抜く。新旧が同じシケインを継ぎ、出力差よりも軽さとレスポンスが効く場面では、ベテランの右手が今も通用することを見せた。
アルファロメオは105/115系のベルトーネ・クーペからAlfasud/Sprintの水平対向FF、そしてGTV(116系)のトランスアクスルまで時代横断の布陣。いずれも軽量ボディ+素直な足まわりという素性がモンレリーの切り返しと相性がいい。クラブスタンドにはGiulietta Sprint/SSやMontrealも整列し、アルファの設計思想の連続性を実車で確認できた。
スーパーカー枠は名の通り人垣ができる。比較的新しい個体が中心だが、その中でひときわ注目を集めたのが1993年製作のフェラーリ P3/4(330P4/412P)仕様レプリカ。フィリピネッティ風の#24リバリー、金色センターロックのマグ、バブル形キャノピー――外観の精度が高い。当時のロッキ設計V12とGT40の対峙を想起させる存在感で、レプリカながら説得力のある仕立てだった。ストレートに響く12気筒のエギュゾーに足を止める観客が絶えない。
二輪も負けていない。Ducati 900SS/750SS、1199 Panigale、Streetfighterといった現行~近代機がコースを繋ぎ、その合間を縫ってGitane-Testiの50cc 2ストが高回転で駆け抜ける。フランス×イタリア合作の”チャンピオン・スーパー”は、往年を知る世代には懐かしく、若い来場者には小さな本気として新鮮だ。甲高い2ストの音色が大排気量の重低音に割り込み、周囲から自然と拍手が起きる。
天候は秋を飛び越えて冬の入口。それでもピットロードには笑顔が戻り、濃霧のモンレリーにエンジン音が重なる。Italian Meeting 2025は、冷たい空気をものともせず、機械と人の熱量で満たされた9月最後の土曜日になった。
写真・文:櫻井朋成 Photography and Words: Tomonari SAKURAI