• 中沢元紀

すべての物語には始まりがある。中沢元紀が「俳優」という道を志した原点。それは、1人の俳優への強烈な憧れだった。その人物こそ所属事務所の先輩俳優であり社長の小栗旬だ。現在所属している事務所に自ら履歴書を送りレッスン生になったのも、小栗が所属している事務所だったから。レッスン生として先の見えない不安な日々を過ごしていた頃も、中沢の心を支え続けたのは、スクリーンの中で圧倒的な輝きを放つ小栗の姿だった。

「小栗さんに憧れて事務所に履歴書を出しているので。本当につらい状況の中でも、ドラマとか映画を見ていて『やっぱりこういう存在になりたいな』っていう気持ちは大きかった。そこが変わらなかったので、今やっていることをちゃんと信じてやろうということを肝に銘じていました」。

そんな憧れの存在が、『あんぱん』の撮影現場に現れた。それは、中沢にとって奇跡のような出来事だった。「本当にびっくりしました。憧れの人が現場に来て、クランクアップを見届けてくださるっていうのが、本当に、本当にすごいことだと思うんです……」。

その言葉に続く思いは、もはや単なる憧憬ではない。明確な目標、そして覚悟だ。

「憧れてしまったからには、近づきたいし、いつになるか分からないですけど抜かしたい。それが恩返しにもなると思うので」。

  • 中沢元紀ファースト写真集『ルート』より

その揺るぎない決意の根底には、レッスン生時代に書き続けたノートの存在がある。未来への焦りと不安の中でもがきながらも、「貪欲」という言葉を何度も記し、自らを奮い立たせた日々。その精神は今も彼の核として息づいている。

「『貪欲』という言葉を多く使っていて。その精神は今でも忘れちゃいけないものだなとは思いますし、役者は満足したら終わりだと思っているので。そういう意味でも貪欲さを忘れずに、一つの作品に対しても役に対しても掘り下げていきたいなっていう気持ちは、今でも変わらずあるし、忘れたくない言葉だなとは思います」。

『あんぱん』という憧れであった連続テレビ小説という大きな航海を終え、一つの確かな自信を手に入れた中沢。ファースト写真集『ルート』は、中沢の俳優人生第一章の集大成であり、これから始まる新たな道のりのプロローグだ。憧れの大きな背中を見据え、いつかそれを超えるために――中沢の“ルート”は、まだ始まったばかりだ。

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■中沢元紀
2000年2月20日生まれ、茨城県出身。2022年、WEB CMドラマ『メゾンハーゲンダッツ ~8つのしあわせストーリー~」で俳優デビュー。2023年10月期のTBS系日曜劇場『下剋上球児』でエースピッチャー・犬塚翔を演じ注目を集めた。そのほかの主な出演作は、ドラマ『ナンバMG5』(22/フジテレビ)、『埼玉のホスト』(23/TBS)、『366日』(24/フジテレビ)、『ひだまりが聴こえる』(24/テレビ東京)、『あんぱん』(25)、『最後の鑑定人』(25/フジテレビ)、映画『沈黙の艦隊』(23)、『さよならモノトーン』(23)、『ファストブレイク』(24)など。連続ドラマW-30「ストロボ・エッジ Season1」10月31日放送・配信スタート、映画『君の顔では泣けない』が11月14日公開、『WIND BREAKER / ウィンドブレイカー』が12月5日公開。

ヘアメイク:速水昭仁 スタイリスト:田中トモコ 衣装協力:CULLNI、ロックポート