• 中沢元紀

中沢の表情を劇的に変えたもの。その核心には、連続テレビ小説『あんぱん』で生きた、千尋という人物の存在があった。撮影期間も長く、全身全霊で向き合ったこの役は、中沢の俳優人生において忘れられないという。

「本当に大きな出会いだったと思います。この先いろいろな作品をやったとしても、絶対に色濃く残っている役であり、作品です。役者としての考え方とか、そういうのも共演者の皆さんから得るものがあった現場だったので、千尋との出会いは本当に大きかったです」

この写真集のために行われたロングインタビューは、『あんぱん』の撮影を挟む形で行われた。そのため、撮影前と後で、彼の言葉の熱量や役者としての意識が明らかに変化しているのがわかる。それこそが、彼が現場でもまれてきた何よりの証拠だ。

「第一線で活躍されている先輩方とお芝居している中で、自分の中でも役者としての気持ちの面が変わったなと感じていました。もっと活躍したいという気持ちもどんどんどんどん大きくなっていますし、同学年に負けたくないという気持ちも増えてきています。いろんな感情になった1年だったからこそ顔も変わってきたんだろうなって。そういう意味でも『ルート』、道のりっていう意味を、読んでくださる方に感じていただけるんじゃないかなと思っています」

千尋という役は、もはや彼の一部となっている。その生き様は、中沢自身にとっての指針にもなった。

「千尋の精神というか、性格が自分の中に多分投影されていって、『千尋だったらどうするかな』とか考える時も実際ありますし、千尋みたいなかっこいい男になりたいなという思いもあります」