第36話「鸚鵡のけりは鴨」では1789(寛政元)年の様子が描かれた。
松平定信が黄表紙好きと知る蔦重は定信を甘く見ていた。定信の政治を皮肉った黄表紙の出版を断行する蔦重だが、妻のていや鶴屋喜右衛門(風間俊介)の懸念通り、事態は悪化の一途をたどる。定信の怒りを買った3作の黄表紙は絶版。恋川春町は腹を切り、蔦重たちは悲しみに暮れた。
注目度トップ3以外の見どころとしては、奥村屋源六(関智一)が調子に乗っている蔦重に「蔦屋のくせに生意気だぞ」というシーンが挙げられる。これは関が演じている『ドラえもん』の主要キャラクター・骨川スネ夫の有名なセリフである「のび太のくせに生意気だぞ」のオマージュ。関のファンが即座に反応し、SNSで話題となった。
次に、定信と一橋治済(生田斗真)が対立を深めるシーンが挙げられる。アイヌ民族による武装蜂起「クナシリ・メナシの戦い」の原因が松前藩の圧政にあると判断した定信は、松前藩の上知を上申するが、治済は定信こそが「田沼病」ではないかと指摘する。徳川治貞(高橋秀樹)は定信をフォローしたが、治済は恋川春町の『悦贔屓蝦夷押領』をネタにさらに追い込みをかける。治済と定信の関係は回を重ねるごとに悪化していく。
そして喜三二の送別会のシーンでは吉原の面々が久しぶりに登場した。りつ(安達祐実)や扇屋宇右衛門(山路和弘)をはじめ、花魁・松の井改めおちよ(久保田紗友)の再登場に視聴者の注目が集まっている。無事に年季が明けて、手習いの師匠と一緒になった幸せな姿を見せてくれた。手習いとは町人・農民の子どもたちが読み書き・そろばんなどの基礎教育を受けること。今でいう塾の先生だろうか。元花魁は不幸な人生を歩む者が多いので、おちよには幸せになってほしい。
また、蔦重たちが病床の平秩東作(木村了)を見舞うシーンがあったが、この場面では東作が蔦重や大田南畝(桐谷健太)、須原屋市兵衛(里見浩太朗)に、平賀源内(安田顕)を見たと言った。東作はその後亡くなってしまうが、この言葉が非常に気になる。
前回でも、鳥山石燕(片岡鶴太郎)が亡くなった際に、流水文様という源内を思い起こさせる演出があった。本作では源内の死は明言されておらず、田沼意次によって逃がされたという可能性が残されている。源内の回想シーンがたびたび流されていることに加え、今回の東作の証言で源内の生存説が真実味を帯びてきたように感じるのは筆者だけだろうか。
きょう28日に放送される第37話「地獄に京伝」では、耕書堂お抱えの作家が蔦重のもとから去り、松平定信はさらに質素倹約を進める。そんな中、蔦重は吉原のために新たな企画を立てるが、ていが反対する。


