3番目に注目されたシーンは20時36分で、注目度69.7%。恋川春町が遺書をしたためるシーンだ。

朋誠堂喜三二とともに春町の自宅を訪れた蔦重は、静かに横たわる春町の亡骸と対面した。春町の妻・しず(谷村美月)から黄表紙に書かれた辞世の句を渡された蔦重は、くずかごに破り捨てられた紙片があるのに気が付くと、「御新造様、こちら触ってもよろしいですか?」としずに断りを入れ、1枚ずつつなぎ合わせていった。それは春町が心中を吐露した遺書だった。

松平定信は春町を仮病と見抜いており、このままでは自家はともかく、小島藩松平家や蔦屋たちにも累が及ぶと考えた春町はすべてをまるく収めるにはもはや切腹しかないと考えたのだ。しかし、途中まで書き進めるうちに、この遺書は恩着せがましいと思い破り捨てたのだろう。生真面目な春町らしい、覚悟の決め方だった。

「最高にべらぼうだよ春町先生」

ここは、春町の切ない決断に視聴者の関心が集まったと考えられる。

松平定信からの追及を逃れるため、蔦重は春町に死を偽装して別人になり替わる策を提案し、主君・松平信義も春町を守るために同意するが、小細工を見抜いた定信は、直接春町の自邸を訪れることとした。万策尽きた信義は春町に逐電を勧めるが、春町は敬愛する主にこれ以上迷惑をかけられないと判断し、覚悟を決める。

SNSでは「武士としても戯作者としても真面目過ぎる最後だよ。最高にべらぼうだよ春町先生」「一世一代の命を張った一発ネタなんだろうけど笑えないよ春町先生…」「春町先生、真面目過ぎるが故に切腹を選んでしまったのがツライ」と、春町を偲ぶ投稿が集まっている。

このシーンでは春町の妻・しずが初めて登場したが、彼女と春町は喜三二の紹介で知り合ったようだ。春町と喜三二の親密さがよく分かる。しずを演じる谷村美月はホリプロ・ブッキング・エージェンシーに所属する大阪府出身の35歳。大河ドラマは2013年『八重の桜』以来2度目の出演。谷村と恋川春町を演じる岡山天音は、池井戸潤原作の2018年の映画『空飛ぶタイヤ』で共演している。この映画には次郎兵衛役の中村蒼や、丈右衛門だった男役の矢野聖人も出演している。