子どもたちの日常に潜むリスクと、それに対する“備え”の重要性を伝えるべく、異色のタッグが実現した。キリンビバレッジと東京海上日動火災保険は9月11日、聖ドミニコ小学校の生徒を対象に、「防災×免疫」をテーマとした特別授業を開催。それぞれの専門分野を活かし、日頃から健康や震災に備えておく必要性を強調した。

  • 聖ドミニコ小学校(東京都世田谷区)

    聖ドミニコ小学校(東京都世田谷区)

■キリン×東京海上日動が「防災×免疫」の特別授業を実施!

9月1日の「防災の日」に合わせ、なぜ食品・飲料メーカーのキリンと損害保険会社の東京海上日動が手を組んだのか。実は両社はそれぞれ、子ども向けに「免疫授業」と「防災授業」を全国で展開してきた実績を持つ。一見、異ジャンルに思えるが、その根底には「日頃からの“備え”によって、自分と大切な人の未来を守る」という共通の理念が存在するようだ。

  • キリンビバレッジ 島田亜季さん

    キリンビバレッジ 島田亜季さん

「みんなが健康でいるために、普段やっていることは何かな?」。1限目は免疫の仕組みについて、キリンビバレッジの島田亜季さんが特別授業を担当。子どもたちの手元には、9つのマスが書かれたビンゴシートが配られた。健康維持のために、普段から取り組んでいることを6つ書き出し、オリジナルのビンゴカードを作成するゲーム形式の授業である。

教室内には「呼吸する!」「よく食べる!」と元気な声が飛び交う。中には「推し活!」というユニークな回答も。リラックスした雰囲気の中、子どもたちは「健康」というテーマを自分事として捉え始めたようだ。

本題である「免疫」について、島田さんはアニメーション動画を用いて解説。体内に侵入したウイルスや細菌と戦う「免疫勇者」というキャラクターを通じ、目には見えない体内の防御システムを視覚的に伝えていく。

そのうえで島田さんは、「この免疫勇者も、いつも元気なわけじゃないんだ」と呼びかけ、免疫力が低下する原因として「不規則な生活」「偏った食事」「運動不足」「睡眠不足」などを列挙する。

それでは、どうすれば免疫の力を最大限に引き出せるのか。その答えのひとつが「免疫ケア」だ。

島田さんは「毎日お風呂に入る」「バランスの良い食事」「適度な運動」「十分な睡眠」「たくさん笑う」、そして「乳酸菌を摂る」といったポイントを提示する。

さらに、キリンが研究を続ける「プラズマ乳酸菌」が、免疫細胞全体を活性化させる司令塔「pDC(プラズマサイトイド樹状細胞)」に直接働きかけるというメカニズムについて解説し、「一般的な乳酸菌は一部の免疫細胞しか活性化できないけど、プラズマ乳酸菌は王様(司令塔)を動かすから、免疫細胞全体が活性化されるんです」と訴え、その重要性を強調した。

続く2限目は、東京海上日動の池田義隆さんが防災に関する授業を担当した。

「日本で1日に起きる、人間が感じないような小さな地震の数は、次のうちどれでしょう? 7回、70回、700回?……正解は、700回です」。クイズから始まった授業に、子どもたちは早くも興味津々だ。

池田さんは、地震や津波が発生するメカニズムを、プレートの動きを図解しながら丁寧に説明。津波の恐ろしさを伝えるため、東北大学で撮影された実験映像も用意された。水槽に街の模型を置き、そこに「通常の波」と「津波」を発生させる。通常の波ではプカプカと浮いていた模型が、津波では一瞬にしてすべて押し流されてしまう様子が映し出される。

「津波の速さは、海の沖合ではジェット機と同じくらい。陸に上がってきても、オリンピックの短距離選手より速いんです。だから、津波が来てから逃げても間に合いません」(池田さん)

授業では、具体的な避難行動についても学んだ。「もし、帰り道で地震が起きたら?」という問いかけに対し、ガラス張りの建物からは離れる、ブロック塀には近づかない、カバンで頭を守るといった行動を一つひとつ確認。さらに、家族が離れ離れになったときのために、災害用伝言ダイヤル「171」の使い方や、事前に避難場所を話し合っておくことの重要性を強調した。

特別授業を終えた島田さんは、今回の取り組みについて「子どもたちが自分の体調に自分で気づき、行動できるようになってほしい」と狙いを改めて説明。「商品の宣伝ではなく、社会とつながる場として大きな意味がある。正しい理解が広がれば、将来的に商品を手に取ってもらえるきっかけにもなる」と感触を語った。また、自身の経験も踏まえながら「防災には備蓄だけでなく日常的な体調管理が重要。免疫ケアは災害後の心身の健康維持にも役立つ」と述べた。

東京海上日動の池田さんも「災害時に子ども自身がどう行動できるかが命を守る鍵。授業を通じて家庭で話し合い、地域全体の防災意識向上につながれば大きな成果」とコメント。「直接的な売上にはならなくても、社会への貢献そのものが非常に有意義」と強調した。