連続テレビ小説(朝ドラ)、大河ドラマにとどまらず、「ドラマ10」「土曜ドラマ」「夜ドラ」などのドラマ枠で話題作を送り出しているNHK。近年は広報活動を積極化し、首都圏や地方でドラマの世界観が体験できるリアルイベントを展開。SNSへの投稿を促進させるなど、視聴者を巻き込んだ取り組みを行っている。同局のドラマ展開広報プロデューサー・郷原陽介氏に、ドラマの広報活動に注力する理由やテレビへの思いを聞いた。
NHKは7月12~13日、東京タワー(東京都港区)で今夏放送のドラマ10『舟を編む ~私、辞書つくります~』、土曜ドラマ『ひとりでしにたい』、夜ドラ『あおぞらビール』や、朝ドラ『あんぱん』、大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』など5ドラマを集めたイベント「NHKドラマフェスティバル2025夏in東京」を開催した。イベントでは、巨大ビジュアルや小道具の展示に加え、ドラマの体験コーナーも設置して魅力をPR。展示物はすべてスマートフォンでの撮影やSNSへの投稿を可能にし、拡散を狙った。ドラマスタッフと直接話ができるのも魅力の1つ。東京会場では取り組みに共感した『あんぱん』の倉崎憲チーフ・プロデューサーも運営スタッフとして1日中来場者を迎えた。
同イベントを主導したのが、2年半前にNHKドラマ部内に立ち上がった“ドラマ部展開チーム”だ。もともと事務系の部署にいたという郷原氏を中心に少人数で構成された同チームでは、SNSやHPでドラマの広報などを行うほか、昨年冬からは定期的にリアルイベントを開催。きっかけは、俳優の山下智久が主演したドラマ『正直不動産2』だったという。
「最初に手がけたのが『正直不動産2』のPRイベントです。イベントのメーンは『山下さんと同じ風を浴びる』コーナー。山下さん演じる永瀬財地は風が吹くと本音を言ってしまうキャラクターなので、その風を視聴者の方にも浴びてもらおう、と(笑)。来場者に実際ドラマの撮影と同じ方法で送風機で風を浴びてもらい本音を言う、そして山下さんになりきった映像を見てもらう……という内容です。イベントは口コミで回を追うごとに人が増えていき、最終回放送後の会場は入場制限するほどでした」
イベントの反響は視聴者にとどまらず、NHKの地方局からも多くの問い合わせがあった。「『うちの県でもやってもらえないか』という声がいろいろな地方局からあって……イベントは当初3カ所で終わるはずだったのですが、問い合わせがすごくて。結果的に、全国9カ所で開催しました」と郷原氏。こうした反響を受けて、以降、番組を盛り上げるために視聴者を巻き込む形のリアルイベントを展開することになったという。
イベントは、首都圏と地方での開催をワンセットとし、これまでに8企画、20会場で実施。クール毎の実施を基本に、『東京サラダボウル』や『舟を編む』などドラマでは反響を先読みし単独でも開催。ドラマのコアファンだけではなく、まだ観ていない層も取り込み、楽しんでもらえることを意識している。
「前回は横浜駅近くの商業施設内で開催しました。多くの人が通る場所でやることで、何かな? と興味を持った人に入ってもらえると考えたからです。今は、リアルイベントの強みでもあるコンテンツとの偶然の出会いの演出を積極的にしていますね。NHK局内は設備面等利点が多いですが、もっと開かれた場所で開催することを意識しています。体験内容も、コアなファンにだけ分かるものではないコーナーを設置して、誰にでも楽しめる、誰かに話したくなる体験を自身が視聴者だったらの視点で考えています」
イベントはドラマの放送中に開催する。写真撮影、SNS投稿をすべて許可しているため、来場したコアファンがSNSで拡散し、また新しい来場者を呼び込み……という流れも期待できる。「来場者のみなさんは想像以上にSNSで発信してくれますね」と郷原氏。これまで20回以上にわたって開催してきたイベントの反響を聞くと、「ありがたいことに毎回好評です。ドラマスタッフとの距離の近さも評判になっています」。ドラマの視聴率にも良い影響を与えている可能性があり、開催のモチベーションになっているという。
「視聴率は、おおむね初回が高く、そこから下がっていくイメージですが、このドラマフェスがきっかけかは分かりませんが『終盤からまた盛り返す』という傾向が最近は結構あるんです。それはより多くの人にNHKのドラマを応援してくれているということも言えるかもしれないので、自分自身のモチベーションになっていますね」




