6代目プレリュード登場を機に、歴代プレリュードを振り返る|若き日の記憶に刻まれた青春のクルマ

6代目プレリュードがもうじき登場する。ほぼ四半世紀ぶりの復活。昭和40年生まれの筆者にとって、自分で買ったことはないにも関わらず、「わが青春のプレリュード」と呼んで差し支えないほど、若き頃の記憶に刻まれたモデルのひとつである。

【画像】改めて歴代プレリュードを並べて、乗ってみる。世代ごとのエクステリアとインテリア(写真31点)

いったいホンダプレリュードとはどういう存在だったのか。25年もの空白があれば、その存在すら”知らない人”だっている。そこでホンダは歴代5モデルを一同に集め、実際に触ってみることで”失われた25年”を取り戻す試みを催した。ツインリンクもてぎのミニサーキットにおける「イッキ乗り」企画である。

歴代プレリュードを並べて見るのは筆者も初。パッと見て記憶と激しく共鳴する存在といえば、やはり昭和57年に誕生した2代目だ。免許を取ったころ、デートカーとして一世を風靡した。あの頃はハイソカーというジャンルもあって、その頂点にはソアラが君臨し、クラウンやマークⅡ三兄弟のスーパーホワイト軍団がバカスカ売れていた時代だったが、プレリュードはあくまでも若者のデートカー、噛み砕いていえば”ナンパで威力を発揮する車”であった。

当時は若い女性もDCブランドと同じくらいに車をよく知っていて、プレリュードは差し詰めレノマ的な存在だったように思う。コンパなどでは車を持っていることが前提で、いきなり「ナニ乗ってるの?」と聞かれたものだ。そんな時、馬鹿正直にセリカとかスカイラインとか言おうものならちょっとダサかったけれど、「ペケペケ」と答えると、「わ!プレリュード?」とルンルンな調子で返ってきた。筆者が乗っていたのは同じXXでもプレリュードの最高級グレード(当時)ではなく、セリカXXだったけれど。

友人にはこんな悲劇もあった。シティのブルドッグに乗っていた彼は「軽自動車みたい」と蔑まれるのが嫌で、大いにバイトに勤しみ、ついにプレリュードの中古を買った。けれども予算の都合でXXではなくそれはXCかXZだった。するとどうだ。女の子からは「ペケペケじゃないと意味ないよ」、なんて言われてガックシ。そのうちSiというさらに上位グレードが追加されるに及んで「運転の楽しいブルドッグに乗っていれば良かった」、と自動車部だった彼は後悔していた。ちなみにお嬢様学校の女子大生が相手だと「最低でもソアラ、できればビーエムよね」という不文律があったのでセリカやスカイラインな庶民は近付かない方が身のためだった。

かなりデフォルメされた記憶かもしれない。本当はそこまでシビアではなかったようにも思う。けれどもそんなふうに記憶が残されていること自体、プレリュードの威力は凄まじかったのだ。

改めて歴代モデルを眺めてみる。やっぱり2代目のデザイン、2ドアセダンというか端正なノッチバッククーペで、フロントエンジンにしてはノーズの低いスタイルが最もプレリュードらしいと思う。3代目はその進化版でしかない。ほとんど同じように見える。なんでも2代目をデザインする際、ハード側にも相当な無理を聞いてもらっていたらしい。たとえばフェンダーミラーをできるだけ低い位置に取り付けたいがためにワイパーの払拭面積をさらに広げるなど、デザイナーがエンジニアに無理を強いたポイントがたくさんあった。とにかくハードポイントはデザイナー側に託されていた。かっこいいデザインのためのハードを作ったというわけだ。だからたったひと世代でハード側を消費するわけには行かない。3世代目が登場した時、「ノーズは(ミドシップの)フェラーリより低い」ことが話題になった。

ここでデートカーカテゴリーに強力なライバルが登場する。S13”アートフォース”シルビアである。ホンダは焦った。3代目は最も売れたプレリュードだったけれど、S13 登場以降は明らかにジリ貧の様相を呈していたからだ。そこで大胆なモデルチェンジを決断する。第4世代はホンダクーペや初代のデザインエッセンスをモダンに取り入れつつ、2代続いた2ドアセダン的に華奢なスタイルを改めて、グラマラスなクーペデザインを採用したのだった。そして走りにもさらにこだわった。4代目は挑戦に溢れたプレリュードだったと思う。

実際に2、3、4代を乗り比べてみれば、2代目はのちのNSXにつながる視界の良さが美点で気軽快な乗り味に終始、3代目はその進化版ではあるけれどなんだか個性に乏しく、4代目で劇的に楽しい乗り物になっていた。残念ながら5代目は、走りこそ良かったけれど、スタイルを先祖返りさせただけでやっぱり新鮮味に欠けていた。

個人的な発見は初代だ。青春時代の2代目インパクトが強すぎたせいか、自分の中で初代はほとんど”忘れられた存在”だった。デザイン的にも古臭くて好きじゃない、と振り向きもしなかった。今回、改めてじっくりと観察してみて、大変な思い違いをしていると思った(もしくは歳をとって好ましく思えるようになっただけかもしれないが)。

フロントビューは確かに古いシビックの延長線上にあるけれど、それはあの時代のホンダ顔だから、である。それよりもコンパクトに引き締まったキャビン、エンドピラーからノッチバックへのライン、テールランプデザインなど、見るべきポイントがいくつもあった。インテリアも時代のスペシャルティ感があって、かっこいい。特にメーター。速度計と回転計が同軸展開されていて見ていて面白い。そして何より、テスト車はどうやら特別仕様車で明るい茶色のコノリーレザーが奢られていた。どうりで古いロールスのようなやれ方をしていたわけだ。

乗ってみても初代はすでにクラシックカーの味わいで、扱い甲斐のあるものだった。当時としてはこれでも軽快なハンドリングだったのだろう。ドライブしているとクリアなウィンドウ越しの景色がなんだかセピア色に変わったような気がした。趣味の車として慈しむべき存在というわけだろう。

文:西川 淳 Words: Jun NISHIKAWA