フジテレビのドキュメンタリー番組『ザ・ノンフィクション』(毎週日曜14:00~ ※関東ローカル)から生まれた初の美術展『落合皎児 回顧展 LIFE AFTER LIFE』が、12日から27日まで、東京・上野の森美術館ギャラリー(入場無料)で開催される。

  • 落合皎児さん(右)と、作品『water mirror』collagragh(plate art)

この美術展は、放送開始から30年を迎える『ザ・ノンフィクション』で、番組史上初の3週連続放送となった『炎の中で死んだ父を僕は知らない』(24年11月~12月放送)をきっかけに実現したもの。

2024年4月、76歳になる落合皎児さんが、火事で突然この世を去った。全焼した住居の隣にあるアトリエに遺されたのは、画家である皎児さんが描いた大量の絵、そして約1500万円の借金だった。

80年代にバルセロナで活動した皎児さんは、ピカソやミロ、タピエスといった巨匠と並ぶ“スペインの現代画家150人”に選出され称賛を受けていた。一方で、酒浸りで変わり者で、幸せな家庭を築くにはほど遠く、日本に帰国後に離婚。長男の陽介ギフレさんは12歳で実家を飛び出し、寮生活。父の存在に悩まされ続けた家族は心を病み、母は孤独死、弟は20歳で命を絶った。家族を振り回した父に息子は複雑な思いを抱えながら生きてきたのだ。

陽介ギフレさんは、父のことをよく知らない。父はどんな人物で、どんな画家だったのか、なぜ家族を壊してしまったのか……迷いながらも、亡き父の人生を知るための旅に出る。親戚や親友、画廊関係者など、生前の父を知る人々を訪ねて回る旅は、画家としての原点を育んだスペインへ。旅の中で、父の人生は“家族を翻ろうした父”から“苦悩と執念の中で絵を描き続けた一人のアーティスト”として息子の目に映り始めた。

番組放送後、大きな反響が寄せられたことを受け、父が命懸けで描き残した作品と父の生きた軌跡を広く世に紹介するべく、今回の回顧展開催が決定。版画作品など約20点を展示、番組映像の一部が上映される。

コメントは、以下の通り。

■落合陽介ギフレさん(落合皎児さん・長男)

「2024年4月11日、焼け跡に立ちのぼるすすの匂いと、春の日差しが交錯する中で、私はただ呆然と立ち尽くしていました。焼け残った父のアトリエには、奇跡のように無傷で佇む数々の絵。それらだけが、あの空間で唯一“生”を感じさせる存在でした。“なんとかしてあげたい”――その衝動のような思いから、父を知る人々に会い、ゆかりの地を巡り、父の絵とその生涯を知る旅が始まりました。そこで知った、父の情熱と苦悩、その奥にある純粋さ…、肯定し切れなかった父に対し、深い愛情と尊敬が心に芽生えていきました。本展は、落合皎児という画家の力と光を、私なりに形にまとめたものです。ご覧いただく皆さまの心に、何かがそっと残れば幸いです」

■『ザ・ノンフィクション』西村陽次郞チーフプロデューサー

「1995年に放送開始して以来30年、“時代を生きる人々の心”を描いてきたドキュメンタリー番組『ザ・ノンフィクション』。今回の落合皎児回顧展は、番組から生まれた初めての美術展になります。旧知のテレビディレクターである息子の陽介ギフレさんから企画提案を受けて実現した番組は、テレビドキュメンタリーの枠を超えて、取材対象者の人生の軌跡と故人の遺した作品に、実際に触れることができる美術展へと展開することになりました。観客それぞれが、“1人の人生の物語”を感じ取ることができる“体感型ドキュメンタリー”と言える空間に、ぜひ足を運んでいただければと思います」

【編集部MEMO】
落合陽介ギフレさんはマイナビニュースの取材に、今後の展望について、「アトリエを片付けていたら、若い頃に描いたと思われるとんでもないレベルの絵が見つかったんです。これがあれば、世界のどこに行っても恥ずかしくない展覧会ができると思うので、日本だけでなく各国いろんなところでやりたいです」と語っている。