小泉今日子と中井貴一が主演を務めるフジテレビ系ドラマ『続・続・最後から二番目の恋』(毎週月曜21:00~ ※TVer、FODで配信)の第10話が、16日に放送された。
鎌倉の古民家へ越してきたテレビドラマプロデューサーの千明(小泉)が、その隣家に住む市役所職員の和平(中井)と出会い、和平の家族とともに恋や友情を育んでいく大人のロマンチック&ホームコメディ。第3シーズンとなる今作は、還暦間近の千明に定年を迎えた和平という、さらに円熟味を増した彼らの“今と未来”が丁寧に描かれていく。
どんな連続ドラマでも“最終回前”であれば、次回のラストをより盛り上げるための“引き”があるはずなのだが、今作にはそれが潔いほどに何もない。だからこそ“らしさ”が詰まった回であった。
和平&広行の“手錠”のオチは…
これまで何度も述べたように、今作の特徴は“何も起こらない”こと。しかし第5話では、“防犯ベル”をキーアイテムに、フリとオチが見事なコメディーの一遍に仕立てたり、第6話では千明の両親を初めて登場させて新しい視点を加えたり、第8話ではシーズン1から続いた和平の弟・真平(坂口憲二)が抱える“爆弾”に一区切りをつけたりと、このシーズン3においては、意識的に物語を動かしているようにも思えた。
だからこそ“最終回前”の今回も、その流れに沿って、あえて動きのある展開を用意して最終回へとつながれるのではないかと予想していた。そしてその通り今回の冒頭では、手錠でつながれた和平と典子(飯島直子)の夫・広行(浅野和之)が突然映し出され、その“なぜ?”をさかのぼる形をとる…という、これまでになかった遊び心のある構成を見せた。
当然、その“なぜ?”によって大きな“引き”を作り、よりドラマチックに最終回へ続く流れだと思っただろう。むしろ、ここで広行を再登場させて、ラスト前に花を添えるとは、「なんてこの作品らしいんだ!」とすら思ったくらいだ。
しかし、あの“手錠”に対して大きなオチはなく、ただただそのてん末を楽しく見せ切った挙げ句、この2人が手錠をつながれたままエンディングへ向かってしまったのだ。つまり、今作のアイデンティティである“何も起こらない”を、まさか最終回前で強調させる。そのための“手錠”であり、さかのぼるように見せた構成だったのだ。
全員の“ドラマ”は終着しているように思える中で最終回へ
とはいえ、“手錠”という意味深に加えテロップでも煽りを入れ凝った構成まで見せたのに、それがアイデンティティとはいえ、最終的に“何も起こらない”ことには、多少の不満は出るものだ。
だが、そんな不満は抱かせず、逆に潔さまで感じたのはなぜか。“手錠”によるてん末をバカバカしく描き、それがバカバカしければバカバカしいほど、今回描かれた和平の娘の巣立ちによる孤独や、千明の頑張って生きてきたことへのやるせなさ――今作が長年かけて最も描きたかったであろう、“いつまで経っても愛おしい大人たち”が浮かび上がってくるということを、最終回前で改めて鮮やかに見せることに成功させたのだ。
千明の“月9”は無事提出され、和平の市長問題にも決着がつき、また真平も万理子(内田有紀)も未来へ希望に満ちあふれており、典子もまた新たなチャレンジに成功。そして和平の娘・えりな(白本彩奈)も彼氏の優斗(西垣匠)と順調で…と、最終回前まで来て、登場人物たち全員の“ドラマ”は終着しているようにも思える。
だからこそだ。だからこそ、今作の最終回は、何が描かれ、どんな終わり方が待っているのか、楽しみだ。