
モータースポーツの聖地、鈴鹿サーキットに全国のポルシェオーナーが集結した。2025年5月16日から18日にかけて開催された「ポルシェパレード 2025 in SUZUKA」は、ポルシェクラブジャパン主催による、クラブ最大規模のイベントだ。今回の参加台数は262台、参加人数は382名。2年に一度のこの祭典は、今年で18回目を迎えた。
【画像】ポルシェオーナーによるポルシェオーナーのための、2年に一度のポルシェの祭典(写真69点)
今回のテーマは「さあ、ポルシェをもっと楽しもう」。言葉の通り、参加者たちは愛車とともに走り、語り、食を楽しみ、3日間をかけて「ポルシェ」に乗ること、所有すること、繋がることの魅力をあらためて体感した。
メイン会場となったのは、F1日本グランプリの開催地としても知られる鈴鹿サーキット。走行プログラムは多岐にわたり、ビギナーからベテランまで、誰もが自らのペースでドライビングを楽しめるよう構成されていた。
「フリーラン」は1回30分単位で実施され、空冷モデル専用枠やビギナー&新車枠といった細分化されたカテゴリーにより、参加者は気兼ねなく走行を楽しむことができた。
2日目は生憎の雨天となったが、ポルシェドライバーの本領発揮といったところか、ウェットの難しい路面でも躊躇いなくコースを走り抜け、ハードなドライビングエクスペリエンスを満喫している様子だった。
また、レーシングドライバーが参加者の車を運転し、マンツーマンで走行アドバイスを行うという贅沢なプログラム「ドライビングクリニック」では、各々のスキルをさらにレベルアップする良い機会となったようだった。
さらには、ポルシェジャパンが提供する試乗車を用いた「サーキットタクシー」や、ファミリーでも楽しめる「ファミリーラン」、ブレーキングとスキッドコントロールを学ぶ2時間の実践トレーニングを受けられる「安全運転講習会」なども展開され、安全面に配慮しながらも、鈴鹿サーキットという車好きなら誰もが憧れる舞台を思う存分味わえる構成となっていた。
会場内では、走行イベントにとどまらない様々な催しも用意された。ピットビル2階のホスピタリティラウンジでは、協賛企業による展示ブースやレーシングシミュレーターを用いたクラブ支部対抗のタイムトライアルが行われ、会員同士の交流の場として終日にぎわいを見せた。
また、ポルシェカレラカップのトレーラーを背景に、愛車とともに撮影できる「ウェルカムフォト」は、参加者にとって特別な記念となったに違いない。撮影された写真は参加者へ後日プレゼントされるという心憎い演出もまた、ポルシェパレードらしいこだわりである。
初日の夜はカジュアルな装いで臨むウェルカムパーティーが開催され、そして2日目の夜には、鈴鹿サーキットホテルにてフォーマルなディナーパーティーが催された。会場にはポルシェAGのマティアス・メナー氏をはじめ、ポルシェジャパンの役員、さらには海外ポルシェクラブのメンバーも姿を見せ、まさに国際的な社交の場としての趣を呈していた。
ポルシェクラブジャパンによる挨拶に続き、クラブ内での各種表彰や抽選会が行われ、格式の中にも和やかな歓談が広がる、華やぎに満ちたひとときとなった。
なかでも注目を集めたのは、当日午後に実施された「コンクール・デレガンス」の表彰式である。出展車は、550 RSスパイダーや356シリーズ、各世代の空冷911を含む計11台。いずれも丹念に仕立てられた珠玉の一台ばかりが揃った。
今回は4つの賞が設けられ、審査員には多彩な顔ぶれが揃った。ゲストとして招かれたタレントのユージ氏によるユージ賞は930カレラ、自動車評論家・飯田裕子氏の選出による飯田裕子賞には356Bが選ばれた。そして同じく評論家・西川淳氏の目を引いたのは993カレラS。最優秀賞には、圧倒的な存在感を放った550 RSスパイダーが輝いた。
また、「支部別デコレーションコンテスト」も大いに注目を集めたカテゴリーのひとつ。各支部が工夫を凝らした車両の装飾で臨み、見事上位に選ばれた支部は、翌日のパレードランにおいて先頭に並ぶという栄誉を手にした。
抽選会では、協賛企業から寄せられた豪華景品が多数提供され、当選者の喜びの声が会場のあちこちから聞かれた。なお、『オクタン日本版』からも定期購読を賞品として提供させていただいたが、ご当選の方々にはご好評をいただいたようで、嬉しい限りである。
また、2日目の午前中には、希望者のみが参加する三重県多気町にある複合施設「VISON」へのショートツーリングも実施された。片道約1時間のドライブののち、参加者たちは松阪牛のすき焼き御膳や真鯛の和膳、イタリアンランチなどから選べる昼食を楽しみ、地元グルメの食べ歩きに舌鼓を打った。サーキットを離れ、自然と美食を堪能するこの”寄り道”にも、ポルシェが日常に与える”豊かさ”が象徴されると感じたひとときであった。
最終日、鈴鹿のフルコースを使って実施された「パレードラン」は、まさにイベントのハイライト。全国から集まったポルシェたちが一堂に並び、壮観な光景を織りなした。参加者は自身の愛車とともに全体での記念撮影を行い、その後は一斉にコースイン。ゆるやかな隊列を組んで鈴鹿のフルコースを周回した。
パレードラン終了後の「フェアウェルセレモニー」では、全車両が再びホームストレートに整列し、クラクションを鳴らしながら互いに別れを惜しむようにゆっくりと帰路へ着く。大音量のポルシェサウンドとホーンのサウンドが幾重にも交差するその時間は、ポルシェというブランドに想いを馳せ、仲間と「また会おう!」と誓い合う大切な時間となった。
ポルシェパレードは単なる走行イベントではない。そこには、ポルシェとともにある人生を誇り、同じ価値観を持つ仲間とともに時間を共有するという、特別な意義が込められている。
今回の鈴鹿での3日間もまた、参加者にとってかけがえのない時間となったに違いない。それぞれが自らのポルシェとの絆を確かめ、そして次なる旅への想いを新たにしたはずだ。
文:オクタン日本版編集部 写真:佐藤亮太
Words: Octane Japan Photography: Ryota SATO