東京・TBS赤坂ACTシアターでロングラン上演中の舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』でマクゴナガル校長を演じている榊原郁恵にインタビュー。オーディションに受からなかったら引退も考えようという覚悟で挑んだ本作への並々ならぬ思い、そして「宝になった」という本作でのかけがえのない経験について話を聞いた。

  • 榊原郁恵

    榊原郁恵 撮影:蔦野裕

舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』は、小説『ハリー・ポッター』シリーズの作者であるJ.K.ローリングらが書き下ろしたシリーズ8作目の物語。小説の最終巻から19年後、父親になった37歳のハリー・ポッターとその息子・アルバスの関係を軸に描かれる新たな冒険物語は、世界中で多くの演劇賞を獲得している。

2022年7月の開幕当時からマクゴナガル校長を演じている榊原は、オーディションで役をつかみとったが、芸能界入りを決めた「第1回ホリプロタレントスカウトキャラバン」を除き、自身初のオーディションだったという。

「一度もオーディションを経験したことがなかったので、お話を聞いてぜひ挑戦してみたいと思いました。60歳を過ぎて、自分の将来に対して不安もあったり、そんな年代だったので、この大きなお仕事のメンバーに入れるかどうかというのは賭けだなと思いました」

そして、受からなかったら引退も視野に入れるほどの覚悟で挑んだと明かす。

「私が若いときと違って周りの環境もどんどんスピードアップしていて、それについていけているのか、また、周りに自分よりも年下の人たちが多くなってきて、正直な意見を言ってもらえているのか、自分の存在がふわふわしているように感じていたので、オーディションに参加して、自分の力で役をもらえたら少し自信が持てるかなと。もしダメなら潮時という判断をしてもいいのかなと思うくらいの覚悟でした」

オーディションはコロナ禍の影響によりリモートで行われた。

「海外スタッフの方たちが来られなかったので、映像を撮って送るという形で演技をしたのですが、オーディションの経験がないので立ち向かい方がわからず、1シーンのセリフだけ渡されて、どういう流れでこのセリフがあるのかわからない状況で演じるというのが難しかったです。まして、マクゴナガル校長はあまりにも有名な存在で、マギー・スミスさんの印象がものすごくあったので、そこになかなかたどり着けなくて四苦八苦しました」

そして、合格したときの心境を「夢のようでした」と振り返り、女優として活動を続けていこうと決意を新たにしたという。

「年齢や経歴関係なく、オーディションで役を勝ち取ったというのは自信になりましたし、『これからも、もう少し頑張りなさい』『逃げちゃダメ』と背中を押されたような気がしました」