アップルの「Apple Vision Pro」に真っ向から勝負を挑むライバルが登場しました。Makuakeで早期購入が始まったのは、Apple Vision Proと同様に“空間コンピュータ”とうたうゴーグル型デバイス「Play For Dream MR」。外観や画面のデザインはApple Vision Proにソックリですが、表示性能もApple Vision Proと肩を並べるクオリティで驚かされました。

特筆すべきは、Apple Vision Proにはない魅力を備えていること。AndroidベースのOSを採用しており、ゲームを中心としたエンタメ系のVRアプリが充実。左右の手で直感的に操作できるワイヤレスコントローラーを用意していることや、別売のユニットを用意すればHDMI接続でゲーム機などの映像も表示できるなど、高い汎用性も備えています。Makuakeの超早割ならば20万円台半ばで購入できる価格設定も魅力で、エンタメ志向の高画質ゴーグル型デバイスとして注目を集めそうです。

  • Makuakeで早期購入が始まったゴーグル型デバイス「Play For Dream MR」。超早割ならば254,900円で購入でき、価格面のインパクトも大きい

Apple Vision Proに色濃く影響を受けている

2024年6月に日本での販売が始まったApple Vision Proは、精細な表示による圧倒的な没入体験が可能なゴーグル型デバイス。まるでその場にいるかのような臨場感を味わえる立体ビデオ「Apple Immersive Video」や、手のジェスチャー操作で誰でも直感的に使えることが高く評価されています。ただ、約60万円という高価格がハードルとなり、広く普及するには至っていません。

  • 日本での販売開始から間もなく1年を迎えるアップルの「Apple Vision Pro」

Apple Vision Proの日本発売からまもなく1年を迎えるタイミングで、Play For Dream MRがMakuakeを通じて日本に上陸。いち早く実機を借りて試してみました。

まず見た目ですが、Apple Vision Proにとてもよく似ています。前面や下部には複数のカメラを搭載し、周囲の現実世界をゴーグル内に表示できるほか、指を使ったジェスチャー操作にも対応。上部にはシャッターボタンを備え、前方のカメラを使って立体ビデオの撮影も可能です。前面パネルに自分の目のグラフィックスを表示する「EyeSight」に相当する機能は搭載せず、コストダウンや軽量化につなげています。外装はプラスチックを多用していますが、安っぽさはありません。

  • Play For Dream MRの外観はApple Vision Proによく似ているが、重さの増す金属やガラスの部品を極力使わずプラスチック素材を多用することで軽量化を図った。それでも質感はかなり高い

  • 前面にはカメラや各種センサー、赤外線センサーなどが多数搭載されている

  • 片側だけでもこのようにカメラやセンサーがズラリ。ハンドジェスチャーの認識を可能にしている

表示パネルは、左右それぞれに3,840×3,552ドットの高精細マイクロOLEDディスプレイをおごり、片目で4Kを超える精細な表示が可能。視野角も103度と広く、視野全体に映像が広がります。表示パネルはゴーグル型デバイスの評価を左右する存在だけに、手抜きはありません。補正用レンズの装着も可能なようですが、日本で入手できるかは不明で、Apple Vision Pro用の補正用レンズは使用できません。

  • 片目で4Kを超える精細なマイクロOLEDディスプレイを搭載。左右の目の間隔を検知して電動で調整する機構も備わっている

  • 額に当てるクッションやシールドなどのパーツは磁力でくっつくようになっており、この部分もApple Vision Pro似だ

  • 上部にはシャッターボタンとダイヤルを搭載。表示部やメイン回路を内蔵するゴーグル部は熱を持つので、空冷ファンを内蔵している。ファンの風切り音はそれほど気にならない

バッテリーとコントローラーに工夫アリ

バッテリーはヘッドバンドの後部に内蔵しており、バッテリー外付け方式のApple Vision Proとは違ってケーブルのわずらわしさがありません。重量のある前方のパネル部とは反対の後部にバッテリーを置くことで重量バランスは3:2になり、重さが前方に偏らないよう工夫。しばらく装着しても、疲れはそれほどありませんでした。

  • カーブを描く後方のふくらみ(右)にバッテリーを内蔵している。とてもスマートな作りだ

  • ヘッドバンドの長さ調整は後方の大型ダイヤルでできる

バッテリー込みの重量は約650gで、Apple Vision Pro(本体のみで600~650g)とほぼ同等ですが、Apple Vision Proは別途353gのバッテリーが必要なため、総重量ではPlay For Dream MRの方が軽く仕上がっています。

スピーカーは耳部分に内蔵されており、ドルビーサラウンドの立体音響の再生にも対応。ただし、音質は標準的で、Apple Vision Proの方が格段に優れている印象です。

左右の手で扱えるコントローラーが付属し、指を使わなくても直感的な操作が可能。指によるジェスチャー操作やアイトラッキングによる操作にも対応していますが、現時点ではコントローラーの方が精度が高いと感じます。

  • 付属のワイヤレスコントローラー。USB Type-C経由で充電する

  • リングがないタイプなので、とてもスマート

別売STBの接続でHDMIの映像がワイヤレスで表示できる

見た目やハードウエアのスペックはApple Vision Proとよく似ていますが、機能面は違いが多く見られます。特に注目すべきは、対応アプリの多さ。Play For Dream MRはAndroidベースのOSを採用しており、カジュアルなVR卓球ゲームから、Steam VRで提供されている本格的なアドベンチャーゲームまで、幅広いタイトルが用意されています。アプリの少なさが課題とされるApple Vision Proと比べると、大きな優位性といえるでしょう。

【動画】画面やUIはとにかくApple Vision Proソックリ。バーチャルキーボードでの文字入力は、コントローラ経由でパキパキできる

また、専用のセットトップボックス「Dream Box」を使えば、HDMI経由でPCやゲーム機、DVDレコーダーなどを接続し、さまざまなソースの映像をワイヤレスで表示できます。Apple Vision Proは、このような外部ソースの汎用的な表示には対応しておらず、ここでもPlay For Dream MRの柔軟性が際立ちます。

  • 専用のセットトップボックス「Dream Box」。バッテリーを内蔵しており、電源用のUSB Type-Cケーブルをつながずに使える

  • Dream BoxをNintendo SwitchやPS5などのゲーム機に接続すれば、Play For Dream MRでゲームが楽しめる。映像はワイヤレスで飛ばせるので、Play For Dream MRにケーブルを接続する必要はない

【動画】Nintendo Switchのゲームを表示したところ。PS5などの重量級ゲームを映し出せば大迫力でプレイできる

  • MacやWindowsパソコンの画面も投影でき、大画面で作業できる

【動画】パソコンの画面も投影でき、細かな文字もしっかり確認できる

動画配信アプリやイマーシブビデオがないのは残念

一方で、使っていて気になる部分もあります。まず、せっかくの高い表示性能をフルに活かせる動画アプリが存在しないこと。アプリストアを覗くと、中国ベンダーのゲームアプリは数多く見つかるものの、YouTubeやNetflixといったおなじみの動画配信アプリは見当たらず、YouTubeもブラウザーでの平面的な表示にとどまるため迫力はいまひとつ。Apple Vision Proで見る人を驚かせたイマーシブビデオ(立体ビデオ)も用意されていません。

【動画】専用のアプリストアは、やたらゲームのラインナップが多いものの、なじみのある動画配信アプリや実用アプリは見つけられず

外部デバイスやサービスとの連携がうまくいかないことがあり、Dream Boxの接続が不安定だったり、SteamVRとの接続ができない問題も発生。このあたりは、ファームウエアやソフトウエアのアップデートでの改善に期待したいところです。

ソフトウエアのアップデートで大化けする可能性も

近ごろ、ゴーグル型よりも手軽に使える眼鏡型のXRグラスが続々登場していますが、Play For Dream MRはそれらと比べても圧倒的な表示性能を誇ります。ソフトウエアやアプリの成熟にはまだ課題があるものの、ハードウエアの完成度が高いため、今後のアップデート次第でユーザー体験が大きく向上する可能性を秘めています。

Makuakeでの超早割価格は、Play For Dream MR本体が最大29%オフの254,900円から、Play For Dream MR本体+Dream Boxのセットが最大31%オフの277,900円となっています。プロジェクターに代わるエンタメ向きの大画面&高画質デバイスとして、動画やゲームを満喫したい人は気になる存在になりそうです。