
『Octane』UKスタッフによる愛車レポート。今回はデルウィン・マレットが、不調に見舞われた1946年タトラT87のメンテナンスについて綴る。
【画像】エンジンを降ろして整備する羽目になったデルウィンのタトラT87(写真4点)
いろいろあったのだが、まずは簡単にまとめて話そう。私のタトラは、燃料供給の問題、フロントブレーキの不調、そしてどこか下の方から聞こえる謎の異音を解消するため、修理工場へ預けられた。これらの問題はすべて解決され、このビーストは我が家に戻ってくる準備ができたという。車を引き取りにルイスへ行ってロードテストを行い、願わくは異音がなくなったタトラでのんびりとクルージングして帰ってきたいものだ。
しかし、そんなはずもなかった。数マイル走ったところで、トップギアでのクラッチの滑りが悪化していることが判明した。加速ができず、自宅まで70マイルを走って帰宅することは明らかに無謀だと悟った。ミッションは中止だ。AA(イギリス自動車協会)に電話だ。修理工場まで牽引し、整備士のヤノスと話をしたが、彼はやや落胆ぎみだった。
単にクラッチケーブルの調整の問題だったのか、それともおそらく、ベルハウジングの周囲にオイルが付着していたことから推測すると、クラッチのセンタープレートが汚れていたのか。困惑するヤノスに故障の診断をしてもらうことにし、帰途についた。
その後は、悪いニュースばかりだった。クラッチケーブルを調整しようとしたところ、かなり腐食したネジ付きケーブルの端が折れてしまった。点検してみると、アジャスターが長年にわたってケーブルにぶら下がっていたようで、いつ壊れてもおかしくない状態だった。それでもヤノスは、ステンレススチールで改良版のアジャスターを作製した。でも残念ながら、これ以上クラッチの調整ができないことが判明した。問題は、明らかにセンタープレートにあった。こうなると、残る唯一の方法はエンジンを取り出すことだった。
T87のエンジンを取り外すためには、重たいエンジンフードを必ずしも取り外さなければならないわけではない。ただ、その方が作業が楽になるし、万が一フードが落ちてきたときに命にかかわる怪我をする可能性を回避できることは確かだ。(驚くべきことにリッドは、そのヒンジとなるフィンの頂点にあるボルト1本だけで、ボディに固定されている)。リヤのバランス(飾り)とバンパーも取り外す必要があるが、大して時間はかからない。ただ、こういった作業を他人にやってもらうとなると、時間はもちろんお金もかかることになる。
エンジンを外し、クラッチも外したところ、つい最近発生したと思われる状態が判明した。フライホイールの表面にはヘアライン状の亀裂が入り、過度の摩擦で変色していた。なので、修理のためにフライホイールまで取り外すはめになった。外された部品を見ようと再びルイスを訪れた後、フライホイールとクラッチを持ってボードンのクラッチ専門店オルカ・クラッチに預けた。フライホイールの仕上げとセンタープレートの表面加工は、数日以内にできるそうだ。
約束通り、数日後に大部分の亀裂が機械で取り除かれた(一部は深すぎたようだ)フライホイールが、T87と再会するために私はまたルイスへと向かう。結果をお楽しみに。
文:Delwyn Mallett