• 松本梨香

舞台役者としてキャリアをスタートさせた松本だが、活動初期の頃に結核を患い、医師から「このまま舞台をやったら死にます」と宣告され、一度は断念。そんな松本に声優の道を勧めたのが俳優の名古屋章さんだった。

「表現やお芝居を私から取ったら何もなくなってしまうと思っていたときに、ラジオドラマなどもやられていた名古屋章さんから『声の表現をやってみたらどうだ。マイクの前でもお芝居はできるよ』と言われて、『やってみようかな』と」

オーディションを受けて『おそ松くん』のチョロ松役をつかみ、1988年に声優デビュー。1991年に『絶対無敵ライジンオー』で初めて主役を務め、1997年には『ポケットモンスター』の主人公・サトシ役と出会い、2023年まで26年にわたって命を吹き込んだ。

「サトシは私の一部。長く演じていると、脚本にも私らしさが反映されるようになり、そういう意味でもオリジナルキャラクターのサトシは分身のような存在です。みんなに愛されているキャラクターなので、これからも大切にしていきたい」

さらに、「ゲットだぜ!」という決めセリフについて「神様からのギフトだと思っています」としみじみと語る。

「これを言うとみんなすごく喜んでくれるんです。そんなものは普通、持たせてもらえない。長くやってきたおかげですし、これからも大切にしていけたら。みんなが笑顔になってくれる限り言い続けていくつもりです」

また、「音解きトリップ~江の島編~ 声響く島、龍の秘宝」のナビゲーターを務める松本の声を聞いて、サトシを思い浮かべる人もいるのではないかと予想する。

「サトシは自分そのまま。松本梨香=サトシ。今回は龍の役ですが、サトシを身近に思ってくれている人が私の声を聞いたら、サトシを思い浮かべると思うんです。『こんなところにサトシがいた!』という感じで、サトシと旅している気持ちになって楽しんでもらえてもうれしいです」