銚子電気鉄道は1日、南海電気鉄道の2200系を譲り受け、観光列車として改修した22000形第2編成のメディア関係者向け出発式・体験乗車会を開催した。出発式で22000形第2編成の愛称も発表され、「次郎右衛門」に決定。4月1日からの運行開始を予定しているという。
銚子電鉄は2023年、南海電鉄から2200系1編成(2両編成、車両番号「モハ2202」「モハ2252」)を譲り受け、銚子電鉄の新車両22000形「シニアモーターカー」(2両編成、車両番号「クハ22007」「デハ22008」)として2024年3月にデビュー。南海電鉄での約30年前のカラーリングを復元した「銚電オリエンタルグリーン」「銚電エメラルドグリーン」の塗色で活躍している。
2024年8月には、さらなる安全・安定輸送の実現と新たな観光資源の発出を期待し、南海電鉄が所有する2200系1編成(2両編成、車両番号「モハ2201」「モハ2251」)を譲受。観光列車として改修を進めてきた。車内の座席シート柄や吊り革を港町・銚子の雰囲気に装飾し、展望席やカウンターバーを設置するなどアコモデーション改造(車内設備の改造)を施したという。
車体の外装カラーは南海電鉄の現行塗装を採用。車両番号を「22005」(元「モハ2201」)と「22006」(元「モハ2251」)に改番しており、第1編成と同様、南海電鉄の22000系(改造前の2200系の形式)がデビューした当時の車両番号を採用しているとのこと。銚子電鉄は22000形第2編成を観光列車化するにあたり、昨年12月にクラウドファンディングを実施。集まった総額1,201万569円を観光列車化の費用に充てており、「銚子観光の玄関口」となる列車をめざすとしている。
メディア関係者向けの出発式は仲ノ町駅で開催。22000形の新車両となる第2編成と、旧塗装仕様の第1編成が並んだ。銚子電気鉄道代表取締役の竹本勝紀氏、南海電鉄取締役鉄道事業本部長の梶谷知志氏、銚子市長の越川信一氏らが出席し、竹本社長は22000形の第2編成について、「銚電のフラッグシップとして観光改造を施し、乗って楽しい日本一のエンタメ鉄道をめざす銚子電鉄にふさわしい、わくわく感に満ちた車両に仕上がっています。改造に際し、南海電鉄の加太線や、当社と姉妹鉄道の契りを交わしている和歌山電鐵の車両を参考にしました」と説明。「この車両がたくさんのお客様を乗せて、ゆっくりと、力強く、末永く走り続けることを願います」と挨拶した。
22000形第2編成の愛称とヘッドマークも出発式でお披露目された。愛称に決定した「次郎右衛門(じろうえもん)」は、江戸時代に紀州(現・和歌山県)から銚子へと渡り、漁業技術の伝承や漁港の建設、外川のまちづくりに尽力した偉人「崎山 次郎右衛門」(「崎」は「たつさき」)に由来している。大阪・和歌山から銚子へ渡ってきた22000形第2編成も長く愛される車両になってほしいとの願いを込め、愛称を「次郎右衛門」と命名したという。
出発式に続いて体験乗車会が行われ、出発式の出席者や報道関係者らを乗せた22000形第2編成「次郎右衛門」が仲ノ町~外川間を往復した。新車両の内装は銚子方(22005)・外川方(22006)で異なり、銚子方の車両は猫、外川方の車両は魚をモチーフとしたデザインに。どちらの車両もロングシート主体だが、乗務員室後方に前面展望が可能な座席を各車両2席ずつ配置している。外川方の車両において、連結部付近に4人で座れるボックスシートとテーブルも設置した。
銚子方の車両はカウンターの下に猫が描かれ、床面に猫の足跡も。吊り革の一部が猫をイメージした形状となっている。ひまわりが咲く様子をシートの柄に採用しつつ、種の部分が「ぬれ煎餅」になっているひまわりもあり、銚子電鉄ならではの遊び心を感じた。外川方の車両も、吊り革は魚(さば、いわし)をイメージした形状に。多くの魚が泳いでいる様子をシートの柄に採用している。
体験乗車会で仲ノ町~外川間を往復。復路は「シニアだけどすごいヤツ。」のヘッドマークを掲げ、「汐見橋 - 岸里玉出」の方向幕で走行した。車内で台湾人YouTuber、リンリンさんへの委嘱状交付式も行われた
銚子電鉄はこの新しい観光列車を活用し、アジア圏からのインバウンド旅客の集客もめざすとしており、その一環で台湾人YouTuberのリンリンさんを銚子電鉄アンバサダーに起用。リンリンさんは出発式に出席したほか、体験乗車会の車内で委嘱状交付式も行われた。
22000形第2編成「次郎右衛門」は4月1日から運行開始し、通常ダイヤの中で運用される予定。新車両の導入に伴う既存車両の置換え等は予定していない。竹本社長は報道関係者らとの質疑応答で、「現状のダイヤを維持するには最低4編成必要ですが、3編成の時代が10年続きました。さすがに無理があるということで、車両の運用に余裕を持たせるため、もう1編成どうしても必要ということになりました」とコメント。銚子電鉄は2013年に減便するまで1日33往復を運行していたが、今回、新車両を加えた4編成とすることで、「いずれは本数を以前の状況に近づけたい。まだ決まったわけではありませんが、そのような思いで4編成体制をしっかり堅持したい」と語った。