kurayamisaka、初ワンマン完遂 変幻自在のアンサンブルに宿る巧みなディテール

2022年に東京・大井町で結成した5⼈組ロックバンド、kurayamisaka。FUJI ROCK FESTIVAI24によるオーディションステージROOKIE A GO-GOに選出されるなど、注目度が高まっている中、初のワンマンライブ「kurayami saka tte doko? #4-初めての単独公演編-」が渋谷CLUB QUATTROで行われた。チケットは即日完売だ。

【画像】kurayamisakaライブ写真(全31枚)

会場BGMが大きくなり、5人のメンバーがステージに姿を現すと、大きな拍手が巻き起こった。薄暗いステージ上で楽器を手にし、ドラムセットを囲むようにして5人が円になり、手を合わせて「ウェイ!」と気合を入れる。そこからすぐに演奏に移行するのではなく、無音の中で詞曲を手がける清水正太郎(Gt)が「今日は僕たちの初めてのワンマンライブに起こしくだりありがとうございます。しかも満員御礼ということで本当にありがとうございます。楽しんでいきましょう。始めます」と丁寧に挨拶するのだからなかなか珍しいオープニングだ。

爆音が鳴り響き、一斉にフロアから拳が上がった。約1分間の「theme(kimi wo omotte iru)」からライブはスタート。3本のギターとベースとドラムから成る90年代オルタナロック直系の重厚なアンサンブルに内藤さち(Vo/Gt)のゆらゆらとゆらめくような歌が乗り、高揚と不穏が同時に高まっていくような感覚に襲われる。シームレスで「cinema paradiso」へ。ドラムスの堀田庸輔と内藤以外の3人、清水、フクダリュウジ(Gt)、阿左美倫平(Ba)はおもむろに向き合ったり、ギターを天高く突き上げたり、堀田に挑むように接近したり、体を激しく上下に動かしながら楽器をかき鳴らしたりと獣のような動きをするのだから目が離せない。そこに内藤の透明度の高いメロディアスなボーカルが混ざり合い、えも言われぬ中毒性を放っていく。

Photo by タカギタツヒト @tatsuhito_tkg

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3曲目は「seasons」。イントロで清水とフクダと阿左美が一斉にギター&ベースを掲げる光景が何かが始まる予感を高める。超轟音オルタナなイントロとは裏腹に、この曲はkurayamisakaの曲の中でも随一のポップなメロディを宿しているのだから面白い。00年代オルタナとJ-POPが無邪気に混ざり合ったかのような異質さがあるのだ。両拳を掲げるオーディエンスや拍手喝采するオーディエンスの姿が目に入り、既にkurayamisakaは多くのリスナーと共闘関係が築かれているのだと感じた。そう考えるとライブ冒頭の清水の丁寧な挨拶も、これから同志と共に音楽を共有する時間が始まることに対する儀式のようなものなのだと納得する。

Photo by タカギタツヒト @tatsuhito_tkg

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内藤が「初めてのワンマンライブです。集大成のような気がするんですが、初ライブのような気持ちで今日を迎えました。皆さんにこうして会えたことがすごく嬉しいです」と話した。MCはとても初々しく、等身大だ。オーディエンスの歓声に対し、嬉しそうに「ありがとう」と口にした内藤。たゆたうようなアンサンブルと浮遊感のあるボーカルがメロウなグルーヴを紡ぐ「last dance」。清水のメロディアスなギターリフがとびきりキャッチーで清涼感と切なさが共存する「ハイウェイ」。オーディエンスがとても心地よさそうに体を揺らす。

内藤が「さっき皆さんがここに入ってくる時の映像を見ながら過ごしてたんですけど、すごい気持ちになりました。年齢も生き方も違うし、昨日最高だったかもしれないし、最低だったかもしれない。私たち含めて同じバンドを好きになってここに集まってくれたんだなって思うと胸がいっぱいになりました。本当にありがとう!」と感謝を伝えた。清水が「今日初めてkurayamasakaを見てくれた方もずっと見に来てくれてる方ももいると思うんですが、ここからのセクションは新曲をいっぱいやるんで、全員同じ条件下で楽しめると思うのでついてきてください」と告げて、バンドが敬愛するASIAN KUNG-FU GENERATIONのDNAを感じる鋭利なオルタナロック「metro」を演奏。続いて、もったりとしたアンサンブルから「kurayamisaka yori ai wo komete」へ。幾度となくアンサンブルと歌がぶつ切りになる残響レコード感溢れるポストロック×シューゲイザーな曲だ。カウントアップからグランジーな「sunday driver」へ。「Smells Like Teen Spirit」のような質感がありながら、闇ではなく光に抜けようとするような展開が随所に織り込まれ、そこにシャープなギターリフが入り、ぐいぐいとオーディエンスの心を掴んでいく。サビでは清水とフクダと阿左美がジャンプをしながら楽器を弾き、躍動感を増大させた。

Photo by タカギタツヒト @tatsuhito_tkg

清水が「ここからは知ってる曲をばんばんやるのでまだまだ楽しんでいきましょう」と言って、「modifi Youth」を演奏。清水の朴訥としたボーカルパートから内藤のブライトなボーカルパートを経て二人でハモる。ノスタルジックなメロディが宿ったシンプルなオルタナロックだ。二人が歌うサビではたくさんの拳が突き上がり、間奏では清水とフクダが近距離で向かい合って楽し気にギターをかき鳴らし、青春の煌めきと儚さをまき散らす。オーディエンスが歌うパートもあり、一層kurayamisakaのライブの求心力を高める。ポップで清涼感溢れる音像から一転、凶暴なアンサンブルが轟き、「curtain call」へ。阿左美がおもむろにベースを置いてステージ上手に走っていき、ピックをフロアに投げ込み、一気にフロアが沸騰。先の展開が予想つかないアナーキーな曲だが、ふくだのギターのカッティングと内藤のメロディがとてもキャッチーで強力なポップソングになっている。続いて、バンド結成前後の時期にサビをSNSにアップした途端、瞬く間に拡散された「farewell」。和なメロディが猛烈にノスタルジーを呼び起こす。終盤、5人の楽器がぎゅいぎゅいと唸りを上げ、大きな歓声が上がった。

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清水が「アンコールがあったらなって思ってもう1曲新曲作ってきました。僕はkurayamisakaでは基本的に架空の歌詞を書くんです。でもこの曲で初めて自分自身のことを書きました。『あなたが生まれた日に』という曲です」と告げた。轟音から始まり、時折高速になるアンサンブルに内藤の毅然としたボーカルが乗る。後半は重厚な低速アンサンブルに展開するというフックありまくりの曲で、kurayamisakaの底知れなさを感じた。

Photo by タカギタツヒト @tatsuhito_tkg

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ライブ中、清水は2025年にまとまった音源を出すことを告知した。5月からは東名阪ツアー「kurayamisaka tte, doko?#5 ”つま先から頭の隅に流れるツアー”」がスタートする。kurayamisaka は2025年に躍進が期待されるニューカマーであることは間違いないだろう。