
ネイト・スミスと言えば、コリー・ウォンやジョー・ダートも擁するフィアレス・フライヤーズの「Ace of Aces」(2018年)は衝撃的だった。あんなにかっこいいファンクのドラミングがこの世にあるのかと、何度も何度も見返した。魔術的な気持ちよさ、目を離せない魅力がネイトのドラムにはある。
ネイト・スミスは世界最高峰のドラマーと言っても過言ではなく、ジャズもファンクもヒップホップも、さらにはロックも叩くことができる。個人的にはその中でも、ファンクという部分において彼は別格だと考えている。それは大林武司、ベン・ウィリアムスとのTBNトリオを観たときにも思った。たった3人で演奏されるファンクのグルーヴで会場の全員が体を揺らしていたが、その鍵はネイトのドラムにあった。
僕はいつかネイトに「ファンク」の話を聞いてみたかった。それがジャズやヒップホップとどう繋がっていくのか、どう融合させているのかについても。
ネイトは2月25日(火)に大阪、2月27日(木)・28日(金)に東京のビルボードライブで、キーファー、カートゥーンズとともに来日公演を行なう。3人ともヒップホップ、ジャズ、そしてファンクを内包した音楽を奏でている。これは絶好の機会だと思った。
キーファー、カートゥーンズとのトリオによる演奏
「Funky Drummer」からの学び、ジャズとファンクの融合
―ファンクにのめり込んだきっかけは?
ネイト:僕がファンクにのめり込んだのは19歳か20歳の頃で、ハマったきっかけはジェームス・ブラウンだった。彼の音楽は幼少期からずっと耳にしていたけれど、本格的に好きになったのはドラムを始めてから。大学時代にジェームスの大ヒット曲のCDを見つけたのがきっかけだった。その時、ジェームス・ブラウンの音楽は素晴らしいだけでなく、時代を超越していることに気づいてね。だから、彼の周りでプレイしているミュージシャンたちがどんな人たちなのか、たくさん読んで調べたんだ。それがきっかけでブーツィー・コリンズやメイシオ・パーカーといった、彼のバンドが輩出した素晴らしいミュージシャンのことも知った。その系譜はさらにアウトキャストまで続いている。
―JBのどの曲が特に刺さったのでしょう?
ネイト:最初に聴いたのは「Papa Dont Take No Mess」で、あの曲の最初の1小節、もしくは7〜8小節目のあたりがビズ・マーキーの「The Vapors」で使われたサンプルだと気づいたんだ。ハマったのはヒップホップの方が先だったよ。中学や高校の時に周りが聴いていたからね。でもファンクは、そのあとに自分で発見したんだ。まずはサンプリングの部分に気づいて、そこから曲の残りが気になってバンドやドラムについて調べたんだ。
―JBの「Funky Drummer」も当然研究したと。
ネイト:彼の『グレイテスト・ヒッツ』を発見してから1年くらい、「Funky Drummer」のことは知らなかったんだ。あの曲は長尺で、中盤と終盤に(ドラマーの)クライド・スタブルフィールドが新しい世界を発見する、実に素晴らしいブレイクダウンがあるよね。このブレイクダウンは何度もサンプリングされて、様々なアーティストたちに使われてきた。あのレコードを初めて聴いた時、最初に僕を魅了したのはあの部分だったんだ。そして僕は、あのグルーヴを演奏することに人生を費やした。ファンク出身のドラマーや、ファンクに興味を持っているドラマーは、みんなあのグルーブをマスターする必要がある。ジャズなら「Giant Steps」、ファンクは「Funky Drummer」だよね。
―「Funky Drummer」のあの有名なドラムのフレーズは、どんなところがすごいと思いますか?
ネイト:彼(クライド)を特別な存在にしているのは、大きな音と小さな音、そしてその間にある音を使って生み出しているダイナミスの操り方だと思う。どのようにバックビートを刻んでいるのか耳を傾けると、左手がいかにアクティブかがわかる。実は2年ほど前、彼が左手でスネアドラムを叩いていたことに気づいたんだ。彼が実は左利きだったことも何年も経ってから知った。彼は左手で作曲し、左手で食事し、ドラムだけは右利きのように演奏していたんだ! あのサンプルを聴くと、彼の左手の強さと器用さがすごくわかる。
あのサンプルが素晴らしいのは、大きな音と小さな音のダイナミックなコントラスト、ドラムのチューニングの仕方、マイキングの仕方、そしてレコーディングの仕方を聴くことができるから。つまり、完璧な嵐なんだよ。このフレーズがピッタリだと思う。
―JBのバンドにはクライド・スタブルフィールドの他に、ジョン・ジャボ・スタークスというドラマーもがいました。この二人の素晴らしさについても聞かせてください。
ネイト:最初に僕がやったのは、彼らがやっていることを全てコピーすること。彼らがチューニングしたのと同じようにチューニングして、寝室にあった小さなカセットレコーダーで自分の演奏を録音して、それを聴いたんだ。とにかく、彼らと同じ音を出そうとした。でも、ジャボは特にそうだけど、彼のスネアドラムには目一杯の空気が感じられる。当時、僕はジャズ・ドラマーたちのより幅広い音のパレットを聴いて研究していた。でも、ジャボとクライドを研究してからは、ダイナミクスとタッチについて考えさせられるようになった。
Photo by Tyler Scheerschmidt
―ジャズとファンクで叩き方にも違いがあると。あなたはその二つを融合させているように思いますが、そのために参考にしたドラマーはいますか?
ネイト:イエス! 僕が参考にしているのは3人。スティーヴ・ガッド、オマー・ハキム、そしてハーヴィー・メイソン。僕はJBの後にハービー・ハンコックを知った。70年代のハービーだ。ハービーのグループは、超ハードなファンクから自由で浮遊間のあるジャズまでサウンドが幅広く、様々なハーモニーの要素やカラーを持っていた。それを可能にしていたのはハーヴィー・メイソンだ。彼は超タイトに叩けるし、即興をするときは自由で波に乗るようなサウンドを奏でることができる。オマー・ハキムについても、ウェザー・リポートで演奏を聴いたときに同じことを思った。彼は安定したグルーヴも奏でられるし、伸び伸びと演奏することもできたからね。
スティーヴ・ガッドといえば、グローヴァー・ワシントンを思い出す。グローヴァーも、僕が子供の頃から好きなミュージシャンなんだ。父親が彼のレコードが大好きで、ずっと聴いてきた。彼の音楽はもっとグルーヴ重視だったけど、ソロ作を聴けばわかるように、彼はフレージングに焦点を置いてきた。彼はいつも、クライマックスの瞬間に到達する方法をわかっている。そしてスティーヴは、彼が演奏しているときにエネルギーや勢いを供給するのが上手い。今挙げた3人は、僕にとってジャズとファンクの溝を埋める橋渡しの役割をしているドラマーだ。トニー・ウィリアムズやビリー・コブハムだとファンクよりもジャズ色が強いけど、この3人は両方のバランスが綺麗に取れている。
―ファンクというのは機能的な音楽で、一方のジャズはフレキシブルで自由な音楽だと思います。二つの矛盾したものを組み合わせるような部分もあるのかなと。
ネイト:僕はその二つがそこまで正反対だとは思わない。ファンクは規律を重んじるものだと思うし、ジャズもそうだと思う。ジャズはなんでも演奏していいという思い込みを持っている人もいるかもしれないけど、そうではないんだ。ジャズは一つの言語から生まれたもので、その言語は時と共に進化している。アート・ブレイキーの演奏とジャック・ディショネットの演奏は違うし、ジャックの演奏とエリック・ハーランドの演奏も違う。ファンクも同様で、クライドのようなプレイを聞くこともあれば、レオン・チャンクラーやデニス・チェンバーズのような演奏を聴くこともある。同じようなプレイをしていても、彼らのプレイの仕方や空間には違いがあるんだ。だから、ファンク・バンドで演奏するときは、周りのミュージシャンが持つそれぞれの言語に耳を傾けることがすごく重要になってくる。僕は、ファンクにはジャズと同じくらいたくさんの自由があると思うよ。
―そこで聞きたいのが大林武士、ベン・ウィリアムスとのTBNトリオです。最小限のトリオの編成でもファンクとジャズの魅力のどちらも感じられる。あのトリオにおけるファンクとはどんなものなのか教えてもらえますか?
ネイト:いい質問だね。アーマッド・ジャマル・トリオは、個人的にもっともファンクなピアノ・トリオだと思う。グルーヴが最高だし、ヴァーネル・フォーニア(Dr)がアーマッドのやっていることにすごく合っていて、僕にはかなりファンキーに聴こえるんだ。ラムゼイ・ルイス・トリオにおけるモーリス・ホワイトのドラムもそう。それから、モンティ・アレキサンダーにも素晴らしいレコードがある。彼はストレートなジャズ・ピアニストだけれど、そのレコードではボビー・ダーハムがドラムを叩いていて、彼らはマーヴィン・ゲイの「Inner City Blues」のベースラインを取ったような「Monticello」という曲をプレイしている。あの演奏もとてもファンキーに聴こえる。彼らはジャズ・ミュージシャンで、誰もJBやファンカデリックとはプレイしてこなかったけど、あの柔軟性のあるグルーヴを演奏しているんだ。そこには楽しさが感じられる。ファンクはどこにでも、あらゆる状況に存在しているんだ。
ラムゼイ・ルイスやハービー・ハンコックはファンキーだった。ジョージ・デュークもそうだし、キャノンボール・アダレイやジョー・ザヴィヌルもそう。彼らの演奏を聴けば、超ファンキーだということがわかる。だから僕は、楽器編成よりも、意図の方が重要だと思うんだ。特にベン・ウィリアムスは、正統派のジャズを見事に演奏できるだけでなく、ファンク、R&B、ヒップホップの全てをこなせる。TBNは超、超、ファンキーだ。従来のジャズ・ピアノ・トリオの編成であっても、グループ内で話す言語は全く違うし、それぞれが違ったやり方でジャズに取り組むことができるんだ。
ヒップホップとの融合、人間と機械の共存
―編成の話でいうと、あなたは『Pocket Change』というドラムソロのアルバムを2作発表していますよね。あれを聴いて、たったひとりでもファンクを感じさせられるんだなと思いました。
ネイト:自分が演奏している動画を投稿したら、誰かがコメント欄に「なぜドラムが会話しているように聴こえるんだ?」と書いていた。グルーヴを演奏する時、それは空間と空間に存在するものであり、息遣いであり、それが動きを与える。ビートの上で演奏しているものが勢いを与えるんだ。『Pocket Change』は僕の大好きなドラマー、バーナード・パーティやマックス・ローチへのトリビュートでもある。クライド・スタブルフィールド、スティーヴ・ガッド、オマー・ハキムへのオマージュでもある。「ファンクは一つの箱の中に存在するのではなく、どこにでもあるものなんだ」と感じさせてくれるドラマーたちのね。正統派なジャズだってファンキーになれるし、それは起こりうる。フュージョンだってファンキーになれる。オーネット・コールマンだってファンキーな演奏ができる。『Pocket Change』で、僕は自分のドラム演奏に影響を与えた全ての偉大なドラマーたちに敬意を表している。そのドラマーたちの多くが、ファンクの文脈から出てきたんだ。
―ああやって一人でドラムを叩いているとき、他の楽器が頭の中でも鳴っているんでしょうか?
ネイト:そう、いつだってね。誰かが歌ったりサックスを吹いたりしているような、メロディックな声が聴こえてくる。あるグルーヴをある方法で演奏し始め、そのグルーヴを何度も何度も演奏し続けると、そのグルーヴとグルーヴを埋める何かが頭の中に浮かんで来るんだ。そして、想像上のメロディやベースラインに答えるように演奏していく。フレーズを叩きながら、それに答えているんだ。その素晴らしい音は、僕だけが心の中で聴くことができる。他のみんなが聴いているのは、僕がそれにどう反応しているかということなんだ。
―あなたの音楽にはジャズとファンクに加えて、ヒップホップも共存していますよね。その3つのコンビネーションにはどんな面白さや難しさがありますか?
ネイト:ヒップホップを演奏することの難しさは「マシーンを模倣している」という部分。音の一貫性こそが、最も難しいことだと思う。JBやスライ・ストーン、さらにモータウンのセッション・ドラマーにまで遡っても、彼らは自分が演奏するパートにとても献身的で、自分たちのパートもサウンドの大きな一部だということを理解していた。だから、曲のどんな部分でも、彼らは全力でプレイし、自分のパート、ビートを一貫して演奏するんだ。最初の一音から最後の一音まで燃え続けなければならないことを理解していたから、音が中断されることがない。
一方でヒップホップの場合は、エネルギーはMCやボーカリストが供給するもので、ドラマーはまた違った一貫性を維持する必要がある。僕たちが聴いて育ったサンプルだけでなく、機械が完璧かつ正確に演奏したものを模倣しないといけない。だから、ドラマーがヒップホップにアプローチするうえではもう一段階、精度の高いレイヤーが必要だ。それを実践しているのがクエストラヴ。彼はトップだと思う。それから、クルアンビンのDJ(ドラマーのドナルド・ジョンソン)も素晴らしい。彼はクエストラヴのようだよね。この二人は僕にとってもインスピレーションだね。
―機械的なものをエミュレートして演奏するのがヒップホップ的なドラマーのあり方だとおっしゃいましたが、一方でそこにジャズが加わると、即興演奏も入ってくるので人間的な部分が加わるわけですよね。ということは、ジャズとヒップホップが共存する音楽を演奏することは、機械になったり人間に戻ったりを繰り返すような作業なのでしょうか?
ネイト:機械を模倣するために演奏しているときは、それに最も近い模倣をしようとしている。でも他のミュージシャンたちとステージに立つ時は、人間性が必ず出てくる。それに関しては、オーディエンスの力も大きいんだ。観客は常に方程式の一部。彼らから得られるエネルギーは、僕らのプレイに大きく影響する。お互いから得るエネルギーが、僕らのプレイを左右するんだ。だから僕たちは、マシンのような一貫性を目指してベストを尽くしながら、人間に戻ることもできる。僕らが演奏するときには、常に人間的なエネルギー交換が行われているからね。
キーファー、カートゥーンズとの化学反応
―あなたは今度、キーファーと来日公演を行なうわけですよね。彼の音楽の面白さを聞かせてもらえますか?
ネイト:まだ多くの人がキーファーのジャズ・ピアニストとしての素晴らしさに気づいていないと思うんだ。彼は楽器の歴史について詳しく、ポスト・バップや80年代、90年代のジャズ・ピアノのアーティストについても本当によく知っている。そして、キーファーはロバート・グラスパーにも影響を与えているマルグリュー・ミラーの大ファンなんだ。ビートでも音でも、彼が作り奏でるものからは、ジャズ・ピアノとハーモニーの知識からくる深みが感じられるんだ。
―ベーシストのカートゥーンズについてはいかがでしょう?
ネイト:彼はまるでプロデューサーのようにプレイする。バンドのサウンド全体を本当によく理解していて、自分がどこに位置しているのかを把握しながら演奏するってこと。そしてキーファーと同じように、彼の知識の深さもあまり人々に知られていない。彼も奥深さを持っているんだ。そして、彼はいつ何を演奏すべきかを見事にわかっている。
―そもそも二人とは、どのようにして知り合ったんですか?
ネイト:僕はずっと両方の大ファンで、Instagramで彼らをフォローしていた。彼らの投稿にいいね!していたんだ。
―普通にファンだったと(笑)。
ネイト:そう。2023年の夏にモントリオール・ジャズ・フェスティバルからレジデント・アーティストとして招待されたとき、彼らもバンドリーダーとして同じフェスに参加することが決まっていた。僕はそのフェスのために、3つの異なるトリオを作ったんだ。一日目は僕とリオーネル・ルエケとスナーキー・パピーのマイケル・リーグ。三日目は僕とヴルフペックのコリー・ウォンとヴィクター・ウッテン。そして、二日目のトリオが僕とキーファーとカートゥーンズ。彼らに会ったのはその夜が始めて。でも、そのトリオで演奏した時のエナジーが完璧だったんだ。
―その3人だとどんなことができると思って、そのトリオを結成したんですか?
ネイト:彼らのことはプロデューサーやソングライターとしても尊敬しているし、才能ある楽器奏者であり、インプロヴァイザーでもある。特にキーファーはそう。だから、一緒に何をやるにしても、そこにダイナミックな音楽的物語が生まれることはわかっていたんだ。ステージに上がって15分間同じグルーヴを演奏するだけのパフォーマンスには絶対にならないだろうってね。つまり彼らを選んだ理由、僕が彼らと一緒に演奏するにあたって一番興奮していたのは「音楽的な対話が生まれることの大きな可能性」だった。見たことのない世界に行けると思ったんだ。彼らはジャズにも精通しているし、(様々なジャンルへの)柔軟性も備えている。ただのヒップホップ、ジャズ、もしくはブーンバップのセットではなく、もっとアップダウンの波がある演奏ができるだろうと思った。実際、彼らと一緒に演奏するようになってから、僕自身のレパートリーも大幅に広がったんだ。
―あなたたち3人は、それぞれビートメーカーとしても活動しています。ビートを作る人たちがバンドを一緒にやることで、どんな面白さが生まれると思いますか?
ネイト:僕がキーファーとカートゥーンズと演奏したときにやりたかったのは、それを撮影し、編集して、僕たちが始めて出会った日に作ったものを捉え、それを人々に見てもらうことだった。だからモントルー出演時の映像をYouTubeに投稿し、SNSにもアップしたんだ。どんな反応が返ってくるか興味があった。そしてわかったのは、その光景がビートメイクの文化から出てきた人々も惹きつけるものであったこと。たくさんのDJやプロデューサー、ヒップホップ・アーティストがこのプロジェクトを気に入ってくれたんだ。その理由はおそらく、僕たちがみんなヒップホップのルールを理解しているから。僕たちはループを再生しながら、そこに音楽を注入し、生きた音楽を作っている。僕があのトリオを作った時に望んでいたのは、ミュージシャンたちと一緒に演奏しアートを重ねることでアイディアを拡大させつつ、音の間にちゃんと呼吸する空間を存在させることだった。そうすることで、それぞれのパートに音楽性の拡大の余地が生まれるからね。ループは僕たちに成長するため、演奏するための多くのスペースを与えてくれるものなんだよ。
―最後にあなたの大きな影響源でもある、昨年11月に亡くなったクインシー・ジョーンズについても伺いたいです。
ネイト:僕の父はクインシー・ジョーンズが大好きだったんだ。父は彼のレコードがどのように作られ、それがステレオでどう聴こえるかにも興味を持っていた。彼はレコードをかけると、その全てのレイヤー、声、ドラム、そういったものに耳を傾けていたんだ。だからクインシーは、僕の人生の早い段階で、優れた音楽家の基準みたいな存在になった。単に彼の音楽が素晴らしいだけでなく、僕の人生に関わる人たちが、彼の音楽の素晴らしさを教えてくれたから。父や兄も含めてね。
その後、僕はクインシーの音楽と自分なりの関係を築くこともできた。自分で作曲やプロデュースをするようになって、ますます彼の素晴らしさにのめり込んでいったんだ。彼は偉大なアレンジャーだったと僕は思う。人をアレンジし、ミュージシャンをアレンジし、ヴォーカリストをアレンジし、全てのピースを見事に組み立てる。彼は素晴らしいコネクターだったんだ。僕は、クインシーに二度会うことができた。2013年か2014年にノース・シー・ジャズ・フェスで会って、彼の作品を愛していると伝えることができた。それから2018年、モントリオール・ジャズ・フェスでの彼の誕生祝いで演奏することになったんだ。ただただ名誉な出来事だった。
―クインシーが関わった作品で特に好きなものをいくつか挙げるとすれば?
ネイト:『The Quintessence』というレコードがある。たしか1962年、インパルスから発表された作品だ。ビッグバンドとの録音で、素晴らしい作曲術とゴージャスな音楽を堪能することができる。70年代の『The Dude』も素晴らしいヒット曲ばかりで好きだな。それから、『Back On The Block』も最高だった。90年代的なサウンドだったり、好き嫌いが分かれるような瞬間もあるんだけど、あのアルバムの幅と野心はすごく大きかったと思う。TAKE 6、サラ・ヴォーン、マイルズ・デイヴィス、ビッグ・ダディ・ケインを同じレコードにフィーチャーしてるんだからクレイジーすぎる。クインシーが世代間の架け橋になっていたんだ。
Nate Smith feat. Kiefer & CARRTOONS来日公演
2025年2月25日(火)ビルボードライブ大阪
1st stage 開場16:30 開演17:30
2nd stage 開場19:30 開演20:30
2025年2月27日(木)・28日(金)ビルボードライブ東京
1st stage 開場16:30 開演17:30
2nd stage 開場19:30 開演20:30