俳優の井之脇海と金子大地がW主演を務めるテレビ東京のドラマ『晩餐ブルース』(毎週水曜25:00~)が、現在TVerで第1話から4話まで配信中だ。
本作は、高校時代の友人である田窪優太(井之脇)と佐藤耕助(金子)が、ただ一緒に晩ご飯を食べる“晩餐活動(略して晩活)”を通して心を通わせていくというストーリーで、SNSでは仕事に疲弊した優太が耕助と温かいご飯を囲むことで互いを癒していく様子に共感が集まっている。
『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい(通称:チェリまほ)』や『SHUT UP』など話題作を手がけ、本作のプロデューサーを務めるテレビ東京の本間かなみ氏が、制作秘話や詰め込んだこだわりなどを語った。
見返すべき名シーン7選
――まずはそれぞれのエピソードで、本間さんが特にこだわって作られたシーンや、注目ポイントを教えてください。
社会で頑張っている人たちへのエールになればいいなと思って作っている作品なので、全話共通して、私たちが生きている世界と地続きの物語として捉えてもらえるよう意識して制作しています。
毎回作品のファーストシーンとなる、第1話の冒頭はこだわって作っているのですが、今回は仕事に向かっていく戦士たち、その閉塞感のようなものをイメージして作ったシーンでした。
第1話では、洗い物をしながら優太がポツリポツリと話し始めた今日の出来事を、耕助が事情も分からないのに「いいよ、聞いてる」と言いながら受け止めるシーンがあります。あの「いいよ、聞いてる」というセリフからは耕助のパーソナルな部分が見えますし、さらに、誰かと一緒に食事の時間を過ごすこと、ただ自分を受け止めてくれる人がいる尊さが伝わったらいいなと思って作りました。
――第4話では、その第1話での耕助の料理が実は耕助にとって久しぶりの自炊だったことが明らかになりましたね。
第1話で耕助が料理を作るとき、エプロンをつけてから「よし」と言っていましたよね。あれは、実は久しぶりに料理を作る緊張や気合が入り混じった「よし」だったんです。もう一度第1話を見てもらうと、あのシーンから読み取れるものが少し変わってくると思います。
――第2話と第3話についてはいかがでしょうか。
第2話の、優太が耕助に“仲間宣言”するシーン。嘘をついている耕助にどう寄り添えるか考えての精一杯の気持ちを、「俺らも、仲間だよな」という一言のセリフに込めました。それを言うまでの優太の表情も最高なんですが、言葉を受け取ったときの耕助の表情がすごく素敵で。現場で見ていて、グッときてしまいました。監督に「ここは耕助のワンショットも撮ってください! 」とお願いしたくらいです(笑)。
第3話は、蒔田葵(草川拓弥)のくすぶりが見え隠れする回。公園のベンチを眺めて過去の自分を思い出し、それを振り切るようにスマホを開くシーンがあるのですが、台本上のト書きには「自分で自分の回想を振り切る」としか書かれていませんでした。ここのお芝居はどうなるんだろう? と気になっていたのですが、草川さんがとても繊細で素敵な表現をしてくださったので、視聴者の皆さんにもそこに注目していただきたいです。
――本間さんや周囲の方の経験談などを反映させた部分はあるのでしょうか?
次から次へと仕事が舞い込んで、捌けているか捌けていないのかも分からなくなっている部分ですね。降りられないランニングマシーンに乗せられているような焦燥感は、優太を通して描けたらいいなと思っていました。また第4話にあった、上野ゆい(穂志もえか)の「私が女だからダメなのか、頑張り方が間違ってるのかとか、いろいろ考えたけど、たぶん私が私だからダメなんだよね」というセリフ。
これは、自分の経験をベースにしたところがあります。テレビ業界に限らず、女性やホモソーシャルに馴染めない人が男性社会で生きていくとき、自信をなくす瞬間はおそらく何度もあると思うんです。本当は根深い構造のせいで理不尽に奪われているだけでも、自分自身に問題があるとか足りないって思わされてしまう。どんな仕事をしていても心を寄せられるよう、”接地面の広さ”は意識しました。
――撮影の小道具、セットなどに関しての狙い、こだわりがあれば教えてください。
耕助の部屋は、『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』で美術を担当してくれた伊藤圭哉さんにお願いをしました。伊藤さんの美術デザインには温かみがあり、ちゃんとそこに“人が生きている”ような、手触り感のある愛おしいお部屋にしてくれました。
――料理シーンやレシピに関してはいかがでしょうか?
冬に食べたくなるものをネットでリサーチして、ストーリーと関連性のあるものを探りながら決めていきました。第2話に登場するグラタンにカボチャとズッキーニを入れたのは、二つともウリ科の仲間だからです。先ほどお話しした「仲間宣言」の言葉のトリガーになる何かを探していたのでピッタリだと思い、さらにグラタンに入れたらおいしそうだと思い(笑)。そういう風に、他のエピソードに関してもレシピを決めていきました。
――本間さんが特にお気に入りの料理は?
第1話に登場したポテトサラダです。ジャガイモが雪のようにふわふわしていて、さらに、そこに落とされるマヨネーズも天使みたいでかわいいんです! 今のところ、それがいちばんのお気に入りです。フードスタイリストの飯島奈美さんが作る料理はどれもおいしかったのですが、今回、カメラマンで鈴木陽平さん、照明で鈴木馨悟さんとCM業界でも活躍するお二人が入ってくださり、料理のおいしさがより伝わるように撮影してくださいました。