現在放送中の大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』(NHK総合 毎週日曜20:00~ほか)で長谷川平蔵宣以を演じている歌舞伎俳優の中村隼人にインタビュー。2023年の舞台『巌流島』以来、公私ともに交流があるという主演の横浜流星とのエピソードや撮影の裏話を聞いた。
江戸時代中期の吉原を舞台に、東洲斎写楽、喜多川歌麿らを世に送り出し、江戸のメディア王にまで成り上がった“蔦重”こと蔦屋重三郎(横浜流星)の波乱万丈の生涯を描く本作。隼人が演じている平蔵は、のちに老中・松平定信に登用され「火付盗賊改方」を務め、凶悪盗賊団の取り締まりに尽力。池波正太郎の小説『鬼平犯科帳』の主人公“鬼平”としても知られ、中村吉右衛門さんをはじめ、数々の名優が演じてきた時代劇のヒーローだ。
横浜とは、クランクイン前から蔦重と平蔵の関係について話し、共通認識を持って演じているという。
「平蔵は、親の七光りで仕事をしているといったやっかみを受けて、肩身の狭い思いをしている中で、『べらぼう』においては蔦重が一番年が近くて理解者というか気が許せる仲。蔦重にとっても、吉原で生まれ育ってきた中で気を許せる相手。もちろん唐丸とかいますが、大人同士で気を許せるのは平蔵なのかなと思います。こういう話をクランクイン前にして、お互い特別な立ち位置に見えればいいねと。蔦重や平蔵が孤独になればなるほど2人のつながりは強いのかなという話をしました」
公私ともに交流のある2人の関係性も、蔦重と平蔵を演じるにあたってプラスになっていると隼人は語る。
「第1回でいきなり僕の前で歌舞伎の見得をやったときはびっくりしましたし、笑いをこらえるのに必死でした(笑)。初対面だったらああいうシーンにはならなかったと思うんです。彼が『国宝』で歌舞伎俳優の役を演じたということもあると思いますが、流星の持っている遊びの部分と、蔦重が持っている陽気なムードメーカー的なところがリンクして、ああいうところにつながったと思うので。そういうのは端々に、平蔵を手玉にとってカモにしてやろうという表情だったり。重いシーンが多い中で、平蔵とのシーンはコメディチックなので、彼自身も楽しんでやっているのかなと思います」
見得は完全に横浜のアドリブで、事前に何も聞かされてなかったという。
「カメラが回っていないところで、畳を確認して足を踏み出す練習をずっと練習していて、『何やってんの?』って聞いたら、『いや別に、畳の感じをね』って。そうしたらいきなりあれをやって。OKが出たんですけど、ずっと『いや~見得がさ~』と言っていて、そのあと別のシーンを撮ってから戻って、あそこだけ撮り直していましたから(笑)」
また、横浜について「年下なので、かわいいなと思うところが多い」と述べた上で、蔦重を演じる大変さを慮り、さらに座長として現場を牽引する姿を称える。
「蔦重は非常に明るくてムードメーカー的な役ですが、横浜流星くんは物静かな人間なので、蔦重を演じることに対する心にかかる負荷はすごいと思うんです。これだけ大変な日程で、大先輩方と共演していて、想像を絶するようなストレス、プレッシャーを感じていると思いますが、そういうのを感じさせないカラッとした性格で、彼は周りに声をかけて引っ張っていくより、自分の芝居を見せて引っ張っていく役者さんなのかなと。後悔のないように1シーン1シーン臨んでいる姿を見て、すごいなと思います」
そんな横浜が中心にいることで、いい緊張感のある現場になっているようで、「主演がテストからきっちりやってきたら、こっちも負けてられないなと。役者のライバル心をくすぐるのが彼は非常にうまいです」と語っていた。
1993年11月30日生まれ、東京都出身。二代目中村錦之助の長男。2002年2月歌舞伎座『寺子屋』の松王丸一子小太郎で初代中村隼人を名のり初舞台。古典歌舞伎だけでなく『スーパー歌舞伎II ワンピース』や新作歌舞伎『NARUTO-ナルト-』などにも出演。NHKのBS時代劇『大富豪同心』シリーズで主演を務めるなど、映像作品でも活躍している。
2月15日(土)[金曜深夜]
0:45~1:45 第1回「ありがた山の寒がらす」
1:45~2:30 第2回「吉原細見『嗚呼(ああ)御江戸』」
2:30~3:15 第3回「千客万来『一目千本』」
2月16日(日)[土曜深夜]
0:10~0:55 第4回「『雛(ひな)形若菜』の甘い罠(わな)」
0:55~1:40 第5回「蔦(つた)に唐丸因果の蔓(つる)」
1:40~2:25 第6回「鱗(うろこ)剥(は)がれた『節用集』」
※NHKプラスの配信でイッキ見も可能
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