南海電気鉄道の一般車両2200系が2025年春をもって引退する(観光列車「天空」は除く)。現在残る2編成のうち、1編成に復元塗装を施して運行することとなり、1月19日に汐見橋駅で「2200系復元デザイン車両お披露目会セレモニー」が行われた。

  • 南海電鉄の2200系復元デザイン車両がお披露目された

    南海電鉄の2200系復元デザイン車両と(写真左から)梶谷知志氏、西上逸揮氏、麻生剛史氏

2200系は1969年に22000系として製造され、橋本駅以南の山岳区間も含めた高野線で運用された。1990年代に2200系に改番し、2000~2001年にかけてワンマン化改造を実施。高野線から撤退した後、多奈川線など各支線で運用されてきた。2009年に1編成(2両)が観光列車「天空」に改造されている。

近年は廃車が進み、2025年春に「天空」を除く2編成(計4両)が引退する予定。南海電鉄から一般車両2200系が消滅することとなった。引退に先立ち、2200系1編成(モハ2231・モハ2281)に復元塗装を施し、約30年前に見られたオリエンタルグリーンの車体にエメラルドグリーンの帯を再現。復元塗装をモチーフにした2種類の記念ヘッドマークも用意された。

ちなみに、2200系の譲渡先である銚子電気鉄道で、2024年3月から復元塗装を施した車両(22000形)が営業運転を開始しているが、南海電鉄において2200系への復元塗装は初めてだという。

  • 2200系復元デザイン車両の汐見橋方(モハ2231)

  • 2200系の車体長は17m級で小ぶりな印象

  • ドア横に南海の旧社章が掲出されている

  • 旧塗装と車番の組み合わせ

  • モハ2281に掲出されたヘッドマーク

  • モハ2231に掲出されたヘッドマーク

汐見橋駅で行われたセレモニーでは、南海電鉄常務執行役員の梶谷知志氏をはじめ、2200系の譲渡先である銚子電気鉄道取締役の西上逸揮氏、和歌山電鐵代表取締役専務の麻生剛史氏も出席した。梶谷氏は2200系の略歴を紹介し、最後に「銚子電鉄、和歌山電鐵で2200系が『シニアモーターカー』として活躍することを期待しています」と締めくくった。

かつて「角ズーム」という愛称で親しまれた車両だった

先述の通り、改番前の22000系は1969年に登場し、高野線で活躍してきた。高野線は橋本~極楽橋間に50パーミルの急勾配が存在しており、大きな牽引力が必要となる。一方、平坦部では100km/hの高速運転を行わなければならない。この2つのミッションを実現した車両が、22000系の先輩にあたる21000系(1958年登場)であった。21000系は平坦区間と山岳区間に対応する車両のため、カメラのズームレンズになぞらえ、「ズームカー」と呼ばれた。

21000系は片側2ドアで丸型の車体を有し、「丸ズーム」の愛称でも親しまれた。後に登場した22000系は、21000系を継承しながらも、扉は両開きになっている。車体は角ばった形状となり、21000系の「丸ズーム」に対し、22000系は「角ズーム」の愛称で親しまれたとのこと。「丸ズーム」21000系・「角ズーム」22000系ともに山岳区間を走行するため、車体長は17m級となっている。

  • 2200系復元デザイン車両の岸里玉出方(モハ2281)

実際に2200系を見ると、車体は南海本線の7100系に似ている。しかし、車体長が20m級である7100系に対し、2200系の車体長は17m級なので、どうしても小ぶりに見える。1両あたりのドア枚数は片側2ドアなので、片側4ドアと比較するとワンマン運転に適していると言えるだろう。

復刻塗装はオリエンタルグリーンにエメラルドグリーンの帯だが、これは21000系から踏襲した塗装である。昭和期の南海本線における通勤電車の一般塗装は濃淡のツートンカラーだった。そのため、「緑色の南海電車」と言っても南海本線と高野線では基本的に塗装が異なっていたのである。

筆者は22000系時代の高野線での活躍を見たことはないが、緑色の車体はさぞかし高野山に映えたことだろう。現行塗装への変更は1990年代前半のことであり、1994年の関西空港の開業も相まって、南海電鉄のイメージは大きく変わった。

  • 幕回しで見られた「青準急」の種別幕

  • 「赤準急」の種別幕も見られた

  • 2200系復元デザイン車両の車内

  • 貴重となりつつある網棚

  • 当日は車内にフォトスポットが設けられた

  • 1970年に製造されたことを示す銘板

車内レイアウトは、車いすスペースを除くと22000系時代と同じロングシートとなっている。昭和の車両で当たり前のように見られた網棚が、令和の時代では貴重かもしれない。窓はすっきりとした1段下降窓になっている。

2200系復元デザイン車両は、全体的に昭和の電車を体現しているが、整備は行き届いている。「汐見橋線」と呼ばれる汐見橋~岸里玉出間も「都会のローカル線」といわれ、随所に昭和らしさを残す。汐見橋線で2200系復元デザイン車両に乗ると、昭和を体感する小旅行が楽しめることだろう。

2200系復元デザイン車両は2025年春までの運行を予定している。汐見橋線をはじめ、高師浜線、多奈川線、加太線、和歌山港線でも運用に就く予定とのことだった。