現役大学生シンガーソングライターの映秀。が、新曲「ほどほどにぎゅっとして」を配信リリース。2025年1月には約3年ぶりのアルバム発売、翌2〜3月には東名阪ツアーの開催も決定した彼の最新インタビューをお届けする。
4ヶ月ぶりの新曲は”ほどほどにぎゅっとして”。愛らしいタイトルがまずは目を惹く。「Hold Me Tight(=強く抱きしめて)」というラブソングの常套句とは一線を画したリラクシンなムード。柔らかさ、しなやかさ、軽やかさがここにはある。メロディはいつになくポップだし、リズミカルな曲調もウキウキさせられる。
「力みすぎず『ほどほどに』生きようよ、というのが根幹のテーマとしてあります」と映秀。は語る。緩すぎず気負いすぎず、ちょうどよい加減であること。その絶妙なバランスを習得するうえで、歌詞を共同制作するというキャリア初の試みも大きかった。相棒役を務めたのは気鋭のソングライター、yuba寝。映秀。が書き上げた大元を膨らませる形で、yuba寝は恋愛的なテーマを取り入れること、《ほどほどにぎゅっとして》というフレーズを曲のフックにすることを提案し、より普遍的で間口の広い楽曲になるよう導いていった。
たしかに、《今夜は一緒にいたいのさ/なんて何にも言わずに大人のふりして見つめてる》と冷静を装いつつ、《ドギマギしながら余裕なふりして恋してる》と本音を漏らし、《今だけでいいの/ほどほどにぎゅっとして》と告げるこの曲は、素直になりきれない二人のもどかしい恋模様を描いたラブソングとしても聴ける。照れ隠しのひねくれた態度は猫っぽくもあり、猫好きの映秀。が歌うことでキュンとなったのは筆者だけではないだろう。
その一方でアングルを変えてみると、《ラムネ瓶のガラス玉が/やけに輝いて見えるように/この世界はそうできてるんだ/届きそうだから美しい》というフレーズが示すように、人と人は根本的にわかり合えないという現実と向き合いつつ、それでも《わかんなきゃいいよ》と歩み寄り、心を通わせようとしている歌とも解釈できる。
「届きそうで届かないからこそ美しいっていうか。人って100パーセントお互いにわかり合えることはたぶんないですよね。わかったつもりになる方が怖いなと思う。そんなふうに(埋められない)距離があるのに、どこかで『わかり合えるんじゃないか』と考えるのは自然の摂理に近いというか。無理かもしれないけど、できるかもしれない。そういうところから美しい感情が湧き出てくるのかなって」
音楽は人と人を繋ぐ架け橋にもなりうる。映秀。も「まず第一にライヴをやるとき、みんなで楽しめる楽曲を作りたかった」と語っているように、この曲は彼のファンである縁(えにし)、もしくは音楽そのものに向けたラブソングとも言えるのかもしれない。
「《綺麗 綺麗だよ/滴る汗と笑顔がとっても/まるでアイラブユー》というサビのフレーズは、自分がライヴで歌う姿を想像しながら書きました。お客さん一人一人の笑顔や汗を見ながら、そこにラブを感じてきたので。《毎分毎秒いつもこの胸はキュンとしてる/このまま二人でいられないもどかしさ》というのも、ずっとライヴが続けばいいのにってステージにいる時は思うし、でもそうはいかないからこそ余計にドキドキするし、みたいな(笑)」
小沢健二『LIFE』から学んだこと
制作面で念頭にあったのは、先ごろリリース30周年を迎えた小沢健二の大名盤『LIFE』。盟友・角野隼斗も在籍するPenthouseと一緒に”今夜はブギー・バック”をカヴァーしたこともあったが、今回リファレンスとして聴き込むうちに改めてハマり、シンガー・ソングライターとしての凄みに気づかされたという。《楽しいねって言いながら/ちょっとつまんなそうにしてるのもラブリー》というくだりにも、そのリスペクトが垣間見える。
「特に繰り返し聴いたのは”ラブリー”、”僕らが旅に出る理由”、”愛し愛されて生きるのさ”。情景が浮かぶ詞も素晴らしいですし、一番グッと来たのはメロディライン。誰が歌ってもいい曲になる、鼻歌で歌いたくなるメロディに感銘を受けました。サウンドメイクも独創的で、ハープやクラヴィネットも使いつつ、ビートはファンキーだったりして。今の自分がやりたいポップな音楽と近しいというか、シンパシーをめちゃくちゃ感じましたね。ハピネスな感じといい、自分の音楽とリンクする部分がすごくあるなと思って」
溌剌としたメロディやテンションに新機軸を感じる一方、ソウル/R&Bを基調とした音作りは『LIFE』とも共振しつつ、これまで築き上げてきたスタイルの延長線上にあるとも言えそうだ。「何度でも聴けるサウンドを作ってくれるし、どうやっても普通にならない」と映秀。が信頼を寄せる竹内聖が今回もアレンジを担当。『LIFE』が生音主体であるのに対し、”ほどほどにぎゅっとして”はブラスやオルガン、クラヴィネットの音色も取り入れつつ、ビートを中心にデジタルな質感も目立つ。プレイリストで流れたときに「今の楽曲」と認識できるような音像を追求するため、もうひとつ参照したのがNY出身の兄妹ソウル・バンド、Lawrence。彼らの人気曲”Do You Wanna Do Nothing with Me?”辺りと聴き比べてみるのも面白い。
年明けには待望の3rdアルバム『音の雨、言葉は傘、今から君と会う。』のリリースも決定。前作からここまでの3年間、映秀。は「みんなが歌える曲、聴いた人の記憶に残る曲を作りたい」と言い続け、歌を届けることにフォーカスしてきた。”ほどほどにぎゅっとして”もまた、そんな試行錯誤から誕生したラブリーな名曲であり、《今だけでいいの》と歌いながらも長く聴き継がれそうな予感がしている。
CLUB QUATTRO TOUR "音の雨、言葉は傘、今から君と会う。" ティーザー映像
映秀。
デジタルシングル「ほどほどにぎゅっとして」
再生・購入:https://eisyu.lnk.to/hodogyu
3rd Album『音の雨、言葉は傘、今から君と会う。』
2025年1月22日(水)リリース
『映秀。CLUB QUATTRO TOUR "音の雨、言葉は傘、今から君と会う。"』
2025年2月21日(金) 名古屋・NAGOYA CLUB QUATTRO 開場18:15/開演19:00
2025年2月22日(土) 大阪・UMEDA CLUB QUATTRO 開場16:15/開演17:00
2025年3月1日(土) 東京・SHIUYA CLUB QUATTRO 開場16:15/開演17:00
チケット:5,500円(オールスタンディング)
プレイガイド最速先行(先着)
【受付期間】11/11(月)12:00 ~ 11/24(日)23:59
【受付URL】https://eplus.jp/eisyu2025/
オフィシャルサイト:https://eisyu0317.com