掛金が全額所得控除、運用益も非課税で再投資…自分で育てる年金「iDeCo」のメリット“3つの税制優遇”とは?
杉浦太陽と村上佳菜子がパーソナリティをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「杉浦太陽・村上佳菜子 日曜まなびより」(毎週日曜 7:30~7:55)。「学びと成長」をコンセプトに、毎回さまざまなゲスト講師をお招きして、明日の暮らしがもっと豊かになる情報や気になるトピックをひも解いて、今よりもちょっと成長することを目指す番組です。

11月3日(日・祝)の放送テーマは、「自分で育てる、自分の年金。iDeCo最新情報!」。厚生労働省年金局 企業年金・個人年金課の笠井南芳(かさい・なお)さんをゲストにお迎えして、iDeCoの仕組みとメリット、12月の制度改正について伺いました。


(左から)杉浦太陽、笠井南芳さん、村上佳菜子



世界有数の長寿国・日本において、高齢者の暮らしの支えとしてあるのが“年金”です。

年金を大きく分けると“公的年金”“私的年金”の2種類があり、公的年金には日本に住む20歳以上のすべての方が加入を義務づけられている“国民年金”があります。会社員や公務員は、国民年金に加えて“厚生年金保険”に加入します。“私的年金”は、加入するかしないかを自由に選べる年金制度で、公的年金とは別に、将来の年金受取額を増やしたい場合に加入するものです。

◆iDeCoのメリット

私的年金の1つである「iDeCo(個人型確定拠出年金)」は、自分で決めた額を積み立てながら、その掛金を投資信託や保険、預金などで運用していくことにより、将来、公的年金とは別にプラスして給付を受けられる私的年金制度です。

基本的に20歳以上65歳未満の国民年金に加入しているすべての方が加入でき、会社員や公務員だけでなく、自営業者や専業主婦の方なども加入できます。笠井さんは「多くの国民の皆さまに、より豊かな老後の生活を送っていただくための資産形成に有効な制度の1つです。このような私的年金制度は日本だけではなく、世界のいろんな国で導入されています」と説明します。

すでに340万人以上(令和6年8月時点)が加入しているiDeCoのメリットはいくつかありますが、特に注目すべきポイントは“3つの税制優遇”です。

【1:掛金が全額所得控除】

所得控除は、掛金の全額が所得から差し引かれたうえで、所得税と住民税の負担が軽減されることです。例えば、所得税20%、住民税が10%の方が毎月2万円ずつ掛け金を払い込んだ場合、このケースでは年間で払い込んだ全額にあたる24万円が所得控除になり、年間で7万2,000円程度の税金が節約できます。

【2:運用益も非課税で再投資】

通常、金融商品を運用して出た利益には約20%の税金がかかりますが、iDeCoの場合はかかりません。さらに、その利益分はそのまま運用にまわっていくので、利益が利益を生むことで資産が増える効果がアップします。

【3:受け取り時の税制優遇】

iDeCoは老後に備えるための年金制度であるため、積み立てた掛金を好きなタイミングで引き出せるわけではなく、払い込みを終えた“原則60歳以降から” 受け取ることができます。公的年金同様、受け取るお金は所得扱いになります。その際は所得税と住民税がかかりますが、「公的年金等控除」または「退職所得控除」という制度が設けられており、どちらかの制度を利用して税制優遇を受けることができます。

◆12月の制度改正による変更点は?

iDeCoに加入する場合は、iDeCoを取り扱う金融機関などから自分で1社を選び、手続きをおこないます。また、運用商品も自分で選ぶ必要があります。なお、運用商品には投資信託、保険商品、定期預金などがあり、運用商品のラインナップは各金融機関ごとに異なります。

また、運用商品を選ぶ際のサービス内容も異なります。窓口があって対面で説明や案内がある機関もあれば、ホームページやコールセンターだけの機関もあります。笠井さんは「加入時の手数料や、毎月の口座管理費、投資信託の信託報酬など、各種手数料も金融機関や商品によって異なるので、自分に合った金融機関を選んでください」とアドバイスを送ります。

金融機関を決めた後は、申し込み用紙を入手して掛金の額を決め、運用商品を選んで加入申込をしてください。金融機関によってはオンライン申込も可能です。毎月の掛金の額は5,000円以上から始められますが、上限(拠出限度額)は加入者ご本人の働き方などにより異なります。例えば、自営業者等の場合は6万8,000円、専業主婦(夫)の場合は2万3,000円となります。会社員や公務員の場合、企業年金加入の有無、そして加入している場合でもその種類によっても限度額が異なります。

さらに、その会社員と公務員の月の掛金限度額が2024年12月より変更になります。これまで限度額が月1万2,000円だった公務員や一部の会社員の限度額が “最大2万円”に引き上げられます。さらに、会社員や公務員がiDeCoを始める場合、これまでは事業主が発行する証明書を提出する必要がありましたが、12月の改正で個人口座から積立をする場合には証明書が不要になり、簡単に加入できるようになります。

会社員の場合、限度額引き上げの対象となるかどうかは、どのような企業年金に加入しているか、また、その掛金額によって変わります。ちなみに、現在iDeCoに加入している方が、この変更に合わせて掛金の額を変更する際は、金融機関での手続きが必要です。詳細はiDeCoの加入手続きをした金融機関にお問い合わせください。

◆商品ごとの特性やリスクを理解しよう

多くのメリットがあるiDeCoですが、注意点として“運用によるリスクとリターン”が挙げられます。運用商品のなかには、高い運用益が期待できる一方で、元本を下回ってしまうことがある商品もあったり、逆に、元本は確保されているものの、運用益がほとんど見込めない商品もあります。どういった商品を選ぶかは加入者自身が判断します。

iDeCoで受け取る年金額は、積み立てた額と運用収益の合計額をもとに決定されるため、運用成績によって変動します。そうなると、リターンを期待できる商品を選びがちになります。笠井さんは「運用商品を選ぶときは、運用する期間、商品ごとの特性やリスクなどをよく理解して選ぶことが非常に重要です。詳しくは、iDeCo公式サイトで各種コンテンツをご覧ください」と呼びかけます。

資産運用においては、iDeCoと合わせてNISAも活用できます。iDeCoにはNISAにはない掛金の税制優遇がありますが、年金制度ですので、NISAとは違って基本的に60歳にならないと引き出せません。無理なく継続して拠出できる掛金額を設定することが重要です。

改めて、笠井さんは「iDeCoは、自分で育てる自分の年金で税制優遇メリットも期待できます。“老後のために今できること”としてiDeCoの加入をご検討ください」と締めました。

番組のエンディングでは、杉浦と村上が今回学んだ「iDeCo」について復習。2人が特に注目したポイントをピックアップして発表します。村上は注目ポイントとして“iDeCoのメリット 知ってね”と挙げ、「iDeCoにたくさんのメリットがあると分かったので、皆さんにも知ってほしいなと思いました」と話します。続いて、杉浦は“12月からiDeCoの制度が改正されて加入しやすくなります”とポイントを書き、「メリットに加えて、加入もしやすくなる点も知ってもらいたいですね」とコメントしました。


(左から)杉浦太陽、村上佳菜子



<番組概要>
番組名:杉浦太陽・村上佳菜子 日曜まなびより
放送日時:毎週日曜 7:30~7:55
パーソナリティ:杉浦太陽、村上佳菜子
番組Webサイト:https://www.tfm.co.jp/manabiyori/