先日、編集部の入るオフィスがABW(アクティビティ・ベースド・ワーキング)化し、フリーアドレスとなりました。
以前から取材で終日いない編集者もいたので、そこまで大きな違和感はないですが、変化を大きく感じるのは「日々の他愛のない会話」の減少でしょうか。
編集者により大小の違いはあれど、挨拶や雑談が空間から消えた形です。もちろん、近い座席に座れば以前と同じなのですが。そういう意味で、固定席がもたらす一体感は薄まったのでしょう。
先日、オフィスに関する製品・サービスを提供するオカムラがラボオフィス「CO-Do LABO(こうどうらぼ)」をリニューアルオープンしました。
「社内共創の実現」をテーマに、TBW(Team Based Working/以下、チーム・ベースド・ワーキング)を基本とするという同社のオフィスを内覧し、ABWの次の働く方を探ってきました。
チーム・ベースド・ワーキング
「社内共創」を目指し、同社のオフィス環境事業本部と物流システム事業本部の2つの事業部が1フロアの同じ空間を活用する今回のリニューアル。
同社の働き方コンサルティング事業部長 碇山友和氏は次のように今回の試みに関して説明します。
「コロナ禍を経て、オフィスの役割は『コミュニケーションやコラボレーションの場』に大きく変化しました。そして、部門やチームにとって最適な場を選び、チームとしての成果を最大限に発揮する働き方がチーム・ベースド・ワーキングです」
そしてチーム・ベースド・ワーキングを働き方の基本とし、そこから社内共創による新たな人脈、絆、気づきが生まれ、新たなビジネスの「種」ができることを狙っていると、その意図を明かすのでした。
共創を促す仕掛け
では、どのようにして共創を促すのか。そのための仕掛けが幾つも用意されています。例えば「陽だまり」と呼ばれる空間は、カーテンや可動性の高い家具で構築され、社内イベントや勉強会など多目的に使える場所。
また「City Farming」というオフィス菜園のような場所はイチゴを栽培し、部門や事業部の枠を超えて、みんなで育て、収穫し、食べることで「分かち合うコミュニティ」を誕生させるのが目的となっているのです。
特に面白いと思ったのが、「BUSHITSU(部室)」とネーミングされたスペースです。ここは事業部内での「部室」として、チームのメンバーが気軽に立ち寄り、交流することで結束力を高めるチームの拠り所という役割を持っています。
面白いというのは、部屋がまったく異なる内装なんですよ。
まさに学校の部室のように、利用者が好き勝手にいじっている感じ。これ、会社のお金で仕上げているのでしょうか?その点を同社の広報さんに聞いたところ、
「今回はリニューアルするタイミングでしたので、事前のヒアリングでどういう仕様にしたいかは聞いていました。ただ、そこにどんな備品を加えるかは各部門の予算で対応するので、それぞれの裁量に委ねています」
という回答でした。使い方もさまざまで、週1回集まる、ランチで集まる、若手社員は月曜日のある時間帯にはここで働くなど、集まり方は自由と言います。これ、けっこう有効だと思います。
というのも、ABWでフリーアドレスになると、ミーティング以外で集まるという機会が少なくなり、チームとしての凝集性が希薄になりがち。それを解消し、結束させる役割を持たせているのですね。
自治会の存在
とはいえ、環境を用意して「さあ共創してください」と言われても簡単にはいきませんよね。
そこで登場するのが自治会という存在。各部門から数名選出されたメンバーで構成され、彼らが音頭を取った活動が展開されているのです。
「例えばICT自治体だったら、各部のICTに対するリテラシーの違いをくみ取り、どう使っていくのかを勉強会で教えるなど、事業部の垣根を超えたアクティビティを行います」(碇山氏)
ICT自治会以外に、運用自治会、勉強会自治会、イノベーション自治会などが存在し、それぞれ活動の中で社員たちがPDCAを回し、職場環境づくり、社内共創を実現していく運用となっているそうです。
ABWの次の働き方TBW。オカムラの「CO-Do LABO」での検証と今後の成果に期待したいです。