経営発展を目指す農業者の交流

次世代農業サミットは意欲ある次世代農業者らが先進的な取り組みを披露するとともに、グループ討論やパネルディスカッションを通じて情報を共有し合い、経営ノウハウや知識を学ぶ機会を提供することを目的に、毎年開催されている。初の長野県開催となった今回は、関係者を含む総勢128人が参加。先進的な農業経営に取り組む組織の代表者らが、事例報告や基調講演を行った。

開会に先立ち、実行委員長の酒井貴弘(さかい・たかひろ)さん(アイ・エス・フーズ徳島株式会社)は「(本サミットは)視野を広げ、視座を高めていただくことを目的に開催しています。今回得た知識を共有していただくことで、各会社の成長につなげていただければ」と挨拶。日本農業法人協会の紺野和成(こんの・かずなり)専務は「都道府県、業種、農業経験など、それぞれ違う活動をしてこられた方々が一堂に会し、意見を交わすことは非常に意義深いことだと思う。色んな気付きを深めていただき、充実した2日間となれば」と話した。

産業ビジネスとして農業に向き合う経営者へ/アグベル株式会社

初日はアグベル株式会社の丸山桂佑(まるやま・けいすけ)さんが登壇し、基調講演を行った。
アグベルは山梨県山梨市で60年以上にわたってブドウ栽培を手掛けてきた老舗農家。シャインマスカットのほか、巨峰やピオーネ、デラウエアなど多種多様な品種のブドウなどを栽培している。

先代まではJAへの出荷が主だったが、現代表の丸山さんが事業を承継して2年目の2019年からは海外輸出にも挑戦。ホンコンやシンガポール、タイなどへ販売先を広げている。丸山さんは海外輸出にかじを切った背景について「どうせやるんだったら、もっと海外へ直接販売をしたりといったアグレッシブな経営スタイルに挑戦したかった。生産もできて農業経営もわかるという、産業ビジネスとして農業を捉えている経営者を目指そうと考えました」と話した。

海外輸出が順調に推移する背景について丸山さんは、自社選果場の運営によって「ビジネス的な出荷や計画的な輸出が可能になっている」と説明。「自社で定めた選果基準によって品質を守りつつ、産地からダイレクトに販売・貿易を行うことができており、特に輸出においては短いリードタイムで鮮度の良いものを展開できる」と強調した。

基調講演の後、参加者は15組のグループに分かれて「農業のポテンシャルと経営戦略」について討論。それぞれ感じている農業の産業としてのポテンシャルについてや、それに基づいた経営戦略案などについて意見を出し合った。

コロナ禍を機に、経営方針を一新/やまふじぶどう園

続いて、ブドウ観光農園「やまふじぶどう園」を運営するホーライサンワイナリー株式会社の山藤智子(やまふじ・ともこ)さんが登壇し、事例報告を行った。
やまふじぶどう園は1927年に創業した初代園主が富山市の山を開拓し、何種類かの果樹を定植したのが起源。1933年には北陸地方では最も古いワイナリーを開き、ブドウ栽培からワインの醸造、販売までを一貫して手掛けてきた。家族でブドウ狩りを楽しめる観光農園としても、長年にわたって人気を集めてきた。

山藤さんは、約35年前から観光農園の運営や、ブドウ棚の下を開放したバーベキューなどを手掛けてきたことを紹介。かつては一日600人ほどが集まる盛況ぶりだったことを振り返りつつ、コロナ禍を機に経営の在り方やイベントの仕方を一新したことを説明した。
「とにかく大勢に来てもらうスタイルから、現在はゆったりとブドウやワインを楽しんでいただけるスペースの提供に切り替えました」と山藤さん。

「ライトアップしたブドウ棚の下で食事ができてワインが飲めるのは、日本の栽培方法ならでは」と、同農園が世界から注目を集めている理由を明かした。

この後行われたパネルディスカッションでは丸山さん、山藤さんに加え、茨城県水戸市でトマト栽培などを手掛ける株式会社ドロップの三浦綾佳(みうら・あやか)さんが登壇。「資金調達について」や「人材の確保について」などについて、経営者としての本音を交えながら意見を交わした。

2日目となる7月10日には、広島県放牧を営む砂谷株式会社の久保宏輔(くぼ・こうすけ)さんがコロナ禍での地域との関わりや、牧場のポテンシャルを生かすためのビジョンなどについて基調講演。その後、長野県で露地野菜を栽培する株式会社ベジアーツの山本裕之(やまもと・ひろゆき)さんが、JGAP取得による生産管理への取り組みなどを事例報告した。