ホンダが開発を進める電気自動車(BEV)の新たな商品群「0(ゼロ)シリーズ」については、どんなクルマになるのか気になっている人も多いはず。今回はホンダの本社ショールーム「Hondaウエルカムプラザ青山」に「サルーン」と「スペースハブ」の2台が出現したということで、じっくり見ながら話を聞いてきた。現時点でわかったことをお伝えしたい。
ホンダ0シリーズのモチーフは?
今回の2台は2024年1月に米国ラスベガスの「CES」で初公開された「0シリーズ」のコンセプトモデル。Hondaウエルカムプラザ青山での展示は3月10日までとなる。
0シリーズはホンダが「Thin, Light, and Wise」(薄い、軽い、賢い)という思想で開発を進めるBEVだ。2026年からグローバル展開する予定だという。航続距離を追求すると大容量のバッテリーが必要になるBEVは大きくて重いクルマになりがちだが、ホンダはあえてバッテリー容量をそこそこに抑え、薄くて軽いBEVを作るという逆張りの戦略を選択。「サルーン」(SALOON)は同シリーズのフラッグシップモデルという位置づけだ。
サルーンのデザインはかなり奇抜だ。市販のホンダ車に似ているクルマはないし、過去のホンダ車にも似たクルマはありそうにない。見た感じだとジンベエザメに似ているのだが、デザインを担当するホンダ技術研究所 デザインセンターの清水陽祐さんによればモチーフにしたクルマや生物は特にないという。
「いろいろなスケッチを描いて、このワンモーションのモノフォルムに行きつきました。いろいろと付け足すことで新しさを求めていくと、だんだんと、ほかのさまざまなブランドに似てきてしまいます。そんな中で、ホンダのデザインとは何かと考えたとき、本質的にはシンプルを目指したいよね、という話になり、方向性が定まりました」(清水さん)
ガルウィングが印象的な「サルーン」だが、ドアの形状については検討中であるとのこと。ガルウィングはアイデアのひとつに過ぎないものの、低いスポーツカーでも開いたときの間口が大きくとれるドア形状であるため、乗降性を向上させることができるそうだ。ちなみに、ホンダの広報に聞いてみたところ、ホンダでガルウィングのドアが付いたクルマは今までになかったらしい
ちなみに清水さんは、「アコード」「シビック」「NSX」などに携わってきたデザイナーだ。0シリーズの開発では「M・M思想」(マン・マキシマム/メカ・ミニマム思想)というホンダのコアとなる考え方こそしっかりと引き継いだものの、「デザインのアプローチとしては、全く違ったものにしないと世の中に振り向いていただけないのでは、という危機感がありました」と話していた。
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「スペースハブ」のシートの背もたれの部分にはホンダの着脱式可搬バッテリー「モバイルパワーパック」が入っていた。車内で何かを充電したり、クルマで出かけた先で取り外して車外で何かに給電したりといった使い方を想定しているそうだ
0シリーズはこのまま商品化される?
あくまでコンセプトモデルという位置づけなので、現時点でのアイデアがどのくらい市販車に落とし込まれるかは不明だ。ボディサイズについても、実物を見るとどちらも大きすぎるような気がしたので、今後は現実的なサイズに収まっていくかもしれない。サルーンがガルウィングで発売されるかどうかも今のところわからない。
サルーンは見るからに1,000万円を超えてきそうな雰囲気なのだが、0シリーズがいくらくらいになるのかは誰に聞いても教えてもらえなかった。