ABCテレビのドキュメンタリー番組『追跡スペシャル 人生やり直し請負人』が、『人生やり直し請負人――元ワル社長の奮戦記』(幻冬舎 1,870円)として書籍化され、12月13日に発売される。本日よりネット書店の予約がスタートする。
■ABCテレビ『追跡スペシャル 人生やり直し請負人』を書籍化
一度犯罪を犯した人間が再び検挙される指数である再犯率。警察庁の統計によると検挙された人のうち約50%が再犯を重ねるなど、過去最悪の水準が続く。後を絶たない“負の連鎖”を断ち切りたいと立ち上がったのは、九州最大の歓楽街でビルの管理会社を経営する社長。彼もまた何度も逮捕されたことがある“元ワル”だが、刑務所を出所した人たちを雇用する“協力雇用主”として、一般社会へ戻りたいと望みながら悪の門をふたたび彷徨ってしまう人たちに救済の手を差し伸べている。元ワル社長の日ごとの葛藤と、社長の厳しくも熱い思いに応えようとする出所者たちに密着取材し、人生のやり直しに懸ける人たちの真の姿を追ったABCテレビのドキュメンタリー番組『追跡スペシャル 人生やり直し請負人』。2021年から放送されてきた同番組が、このたび書籍化される。
福岡・中州でビル管理会社の社長を務める中溝茂寿氏の会社の従業員は、そのうち半数近くが元受刑者。中溝社長は、法務省が恒常的に募集している「協力雇用主」として出所者の受け入れに取り組んできた。中溝社長のもとで働いている社員たちの過去の犯罪歴は、オレオレ詐欺、窃盗、薬物の常習者とさまざま。そんな彼らを受け入れている社長もまた、「“殺人”と“性的暴行”以外はやった」と言うほどの究極のワルだったという。極めつきのワルだった社長が暴力団員や半グレだった出所者たちの再起を手助けするのは「何度裏切られても信用したい」という思いから。しかし、その気持ちとは裏腹に、元犯罪者が出所したのちに更生する道のりは非常に険しいものでも険しい。
ひとたび犯罪を犯したことで向けられてしまう社会からの厳しい視線。それでもなんとか立ち直ろうとする社員たちのひたむきな姿を見て、何度も折れそうになる気持ちから踏みとどまる社長。そして、社長が自分自身の更生を固く誓った真相の秘密とは。シリーズ開始当初からカメラを回し続け、これまで森友学園問題や積水ハウス地面師巨額詐欺事件など数々のスクープを放ってきたABCテレビの平岩和之記者が未放送エピソードや放送終了後のその後も含めて一冊の本にまとめた。本書の売り上げの一部は、中溝社長が代表を務める更生支援事業(カオサポート博多:元受刑者や障害者等への生活支援事業)に寄付される。
■ABCテレビ・平岩和之ディレクター コメント
当初、私はこのドキュメンタリーで中溝社長の豪快なサクセスストーリーを描けるのではないか、そんな気持ちで制作を始めました。ところが、取材現場では社長や周囲の期待に反して裏切りにつぐ裏切りばかり。こんな厳しい現実が待っていようとは、想像すらしていませんでした。
テレビはその特性上、ドラマティックな場面ばかりが切り抜かれ、作る側もそう作ろうとする悪い“癖”があります。私は、中溝社長やその社員がもがく姿を目の当たりにして、これまでの取材では、社長や更生をめざす社員たちの一面しか伝えきれていないのではないかと思いました。
テレビやネットで映しきれなかった現実を、つぶさに伝えなければいけない。そして、再犯者率が過去最悪の水準を推移するなか、更生支援が社会の重要課題であることを多くの人に知って頂き、再犯防止に役立ちたいと感じたのです。そんな使命感から、根っからのテレビマンである私が初めて筆を執ったのがこの一冊です。
中溝社長を含め、様々な深刻な事情を抱えた〝元ワル〟たち。彼らが人生の失敗から立ち直ろうとする姿やその思いを感じ取っていただき、また不寛容さの度合いが日に日に強まる現代の社会で、行き詰まりを感じている人たちの励ましに少しでもなれば幸いです。