文●竹岡 圭、ユニット・コンパス 写真●ユニット・コンパス
※中古車参考価格はすべてグーネット2023年5月調べ。
(掲載されている内容はグーワールド本誌2023年7月号の内容です)



試乗レポートではわからない、身近でリアルな使い勝手を実車を取材してレビューするのが、「人気中古車実車レビュー」。デザイン、装備、使い勝手をレビューしつつ、中古車相場についても中古車販売店に取材し掘り下げます。



Profile:自動車ジャーナリスト 竹岡 圭
カーライフのサポーターとしてTVやラジオなどでもおなじみの人気自動車ジャーナリスト。全日本ラリーにも参戦経験を持つ。2023-2024 日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。


竹岡圭さんも所有したプレミアムハッチバック


 今回チェックするのは、イタリアの名門ブランドアルファ ロメオのプレミアムコンパクトカーであるジュリエッタ。取材させていただいたのは、2018年登録の「ジュリエッタ スーパー パックスポーツ」で、走行距離は1万1000km、販売価格は208万円。



 実車チェックを行う自動車ジャーナリストの竹岡圭さんは、ジュリエッタで全日本ラリー選手権に参戦していた経験の持ち主。元オーナーということもあって、かなり具体的にジュリエッタのことをチェックし、特徴を教えてくれます。



 「ジュリエッタって、すごくデザインにこだわっていて格好よくて、さすがアルファ ロメオって思わせるじゃない。実用的な5ドアハッチバックで、スタイルそのものはシンプルなんだけど、造形が綺麗で見飽きないし、色っぽさがあるの。日本車でも、同じようなテイストのデザインに挑戦しているクルマはあるけど、残念だけどレベルが違う。デザインに命かけてるって感じ。それから、これはあまり知られていないんだけど、じつはクルマとしての完成度が凄く高いんだよね。どのくらいかというと、VWゴルフと比べても遜色ないくらい。装備も充実しているし、後席やラゲッジルームも広くて使いやすい。これもラリーで使ってみて実感したところ」



 2012年グレード構成は、導入された当初が1.4Lエンジン(170馬力)搭載でベーシックな「スプリント」、装備が充実した「コンペティツィオーネ」、1.7Lエンジン(235馬力)を搭載する高性能モデルの「クアドリフォリオ ヴェルデ」の3タイプ。2013年に「コンペティツィオーネ」の装備をさらに充実させた「スポルティーバ」を追加。



 マイナーチェンジを受けたのは2017年。デザイン上の違いはフロントグリルの造形で、V字型がよりシャープに。また、全グレードにクルーズコントロールとナビゲーションが標準装備されたのもポイント。グレードが整理され、標準モデルが「スーパー」と装備を充実させた「スーパー パックスポーツ」、高性能モデルが「ヴェローチェ」と名称も変更されている。



 つまり、今回の取材車両は、後期型標準モデルの装備充実仕様。新車当時約390万円だったグレードが、中古車市場では200万円前半で流通しています。ちなみに、高性能モデルは300万円がおおよその中心価格。いわゆるホットハッチと呼ばれる性能だけに高価ですが、台数も多く人気があるとのこと。
 竹岡さんが乗っていたのは、取材車両と同じ1.4Lエンジンのモデル。走りについては?



 「正直に話をすると、車重が重いから、競技車両としてはパワーが物たりなかったけど、それはあくまでもラリーでの話。街中で扱う分にはもちろん問題なし。それよりも、普通に市販されているジュリエッタを限界で走らせていたのに、クルマが全然壊れなかったんだよね。それってけっこう凄いことだと思うな」



 そう聞くと、ジュリエッタがますます格好よく見えてくるから不思議。輸入車ビギナーからクルマ好きまで、幅広いユーザーにとって、魅力あるクルマだといえそうです。




後期型のベースモデルで装備が充実した仕様




 今回の取材車両は、標準モデルである「スーパー」をベースに、18インチの専用アルミホイールなどのスポーティな装いを与えた「スーパー パックスポーツ」。標準モデルといっても、ライバルに対して十分パワフルで、ドライブモードを「D」にすれば爽快な走りを楽しめる。




取材協力|アルファ ロメオ調布 フィアット調布 アバルト調布



 「中古車価格が比較的手頃でありながら、高年式モデルもターゲットにしやすいため、初めてのアルファとしてもオススメです。特に『スーパー』の物件数は、『ヴェローチェ』に比べて少ないですが、コストパフォーマンスに優れています」とアルファ ロメオ調布 フィアット調布 アバルト調布の小野店長(株式会社アクセル)。



SHOP DATA
住所:東京都調布市八雲台2-3-1
TEL:042-489-3911
定休日:火曜日・水曜日
営業時間:10:00~19:00 
URL:


ジュリエッタの実車をチェック!

【デザイン】とにかくデザイン命!そのこだわりにはイタリア魂を感じます




 欧州Cセグメントのハッチバックといえば、VWゴルフに代表されるように、実用車の王道中の王道。当然、各社差別化のためにデザインには力を入れます。そのなかでもトップクラスに個性的で美しいのがジュリエッタ。特にフロントマスクの造形は、シンプルでありながら、見れば見るほど引き込まれます。往年のイメージを取り込みながら、現代のクルマらしく見えるディテール表現は見事。美しさと実用性をハイレベルで両立しているのがその特徴です。




宝石のように光を反射するライト、かつての砲弾型ミラーを想起させるミラー形状、隠された後席ドアのハンドルなど見どころたくさん。

【装備】このクラスで備えてもらいたいものは用意されています




 世間のイタリア車に対するイメージは、「スタイリッシュだけど、装備の種類や充実度合いはドイツ車にかなわないのでは?」という部分が、正直に言うとあると思います。しかし、驚くべきことにジュリエッタは、オートエアコン、ドライブモード、後席用エアコン吹き出し口など、同年代の同クラスと比べて遜色ない装備の充実度。また、取材車両はさらに装備が充実したパッケージオプション装着車両。中古車になると価格差が圧縮されるので、お買い得感はさらにアップ。




トグルスイッチでドライブモードを切り替える「D.N.A.」。「パックスポーツ」では、ホイールやシート表皮などが専用デザインになる。

【使い勝手】想像している以上に使い勝手のよさは考え抜かれています




 スポーツカーのようなルックスなのに、いざ使ってみると実用性に優れているのがジュリエッタというクルマ。たとえば、このクラスだと快適なのはフロントシートまでで、後席は割り切った設計になっているクルマが多いところ、運転席に身長165cmのドライバーが座った状態で写真のようにかなりのゆとりがあります。また、後席ガラス窓もかなり下まで降りるので、閉塞感がありません。その実力の高さは、クラスの模範といわれるVWゴルフにも劣りません。




しっかりと下まで降りる後席窓ガラス。後席用にも明るい照明を用意。ハッチゲートのロック解除はエンブレムがスイッチ。爪も傷みません。

じつは実用車として文句なしの使い勝手を誇る



竹岡 圭 レビュー

デザイン[★★★★★]

 なんでこんなに色っぽいんでしょう。カッコイイことに命かかってます!という感じなんですが、使い勝手等々を犠牲にしていないのがスゴイ。インナードアハンドルなんて艶っぽさの極みです。オシャレはガマンなんて言われますが、ジュリエッタはガマン一切ナシ。このクラスのお手本車と比べても引けを取りません。


装備[★★★★★]

 アルファ ロメオってカッコだけって思っていませんか? じつは、この車格ならコレは欲しいと思う装備、ほぼ全部付いています。意外と小物入れが用意されていたり、エアコンの調整が大きなダイヤルだったり、ドライビングモードの切り替えスイッチも大きめだったり。使いやすいのにカッコイイのは感動レベルです。


使い勝手[★★★★★]

 後席のドアノブの位置が絶妙な場所にあり、ドアの形状も高すぎず長すぎずで、身体をずらさずともスッと開けたり、バックドアから移動して後席背もたれを倒すなんていうときも、移動距離が短く済んだりと、動線が上手く考えられています。正直に言って使いにくいところはひとつ、サイドブレーキが短いことだけ。


編集部 レビュー

デザイン[★★★★★]

 戦前から続くアルファ ロメオの歴史。当然、名車もたくさん存在しているのですが、ジュリエッタはそうした過去のDNAを現代に受け継いでいます。パッと見が気に入って選んだとして、それからアルファの歴史を振り返ると、愛車のディテールの意味に気が付き、さらに好きになるかも。さすがイタリアと思わせる完成度。


装備[★★★★☆]

 ジュリエッタの装備については、先進安全装備が一切備わらないところをどう考えるかだと思います。取材車両はベーシックな「スーパー」ですが、パッケージオプション装着車だったので、アルミホイールやシートも専用デザインで魅力的。上級モデルの「ヴェローチェ」になると装備はさらに充実。エンジンもパワフルです。


使い勝手[★★★★★]

 ここが一番の驚きでした! もしかしたら、開発スタッフは横にゴルフを置いて研究したのかも……と妄想してしまうくらい、使い勝手が考えられているのです。小物置きや肘置き、シート背後のポケット、後席用エアコン吹き出し口など手抜かりなし。操作の動線も整理されていて、後席シートの展開も簡単でした。


ライバルモデルをチェック!

フォルクスワーゲン ゴルフ(先代)



 Cセグメントハッチバックの絶対的ベンチマーク。あらゆるクルマがゴルフに挑むものの、つねに半歩先を行く。ジュリエッタのライバルになるのは、ゴルフⅦの世代。



中古車参考価格帯:60万円〜300万円(13年〜21年 全グレード)


メルセデス・ベンツ Aクラス(先代)



 それまでのモデルと比較して、グッとスポーティになった3代目Aクラス。ルーフラインを大きく下げ、スタイリッシュなデザインを実現。それでもメルセデスらしい重厚さを持つ。



中古車参考価格帯:60万円〜280万円(12年〜18年 AMGを除く)


BMW 1シリーズ(先代)



 クラスで唯一、後輪駆動を採用する1シリーズ。そのメリットは走りの質感に表れており、ライバルを頭ひとつリード。その代償として、後席空間とラゲッジルームは狭くなる。



中古車参考価格帯:50万円〜370万円(11年〜19年 全グレード)


アウディ A3 スポーツバック(先代)



 上質な内外装のデザインでプレミアムブランドらしさを表現しているA3スポーツバック。ゴルフの兄弟車で装備はさらに上、予算が許せばジュリエッタの強力なライバルに。



中古車参考価格帯:70万円〜220万円(12年〜19年 全グレード)