文●九島辰也 写真●コーンズ・アンド・リミテッド・カンパニー



 「当社トップがアスカリサーキットを訪れた時に、日本にもこういう場所を作れないか、という発想からスタートしました……」



 先日コーンズ・アンド・リミテッド・カンパニーが手がける「THE MAGARIGAWA CLUB」(ザ・マガリガワ・クラブ)のプレゼンテーションでそんな話を耳にしました。その時、ずっとモヤモヤしていたものが腹に落ちた気がしたんです。ここを見て何かに似ていると思っていましたし、ずっと前から日本にアスカリサーキットのような場所はできないのかなぁ、と考えていたからです。




THE MAGARIGAWA CLUB

 アスカリサーキットとは正式名称“アスカリ・レース・リゾート”といいます。場所はスペイン。温暖な気候で知られるアンダルシアの街マラガ郊外にあります。何度か国際試乗会で足を運んだことがありますが、雰囲気は通常のサーキットとは違います。その名の通りリゾート感たっぷり。特にレストランがそうで、コースを見られるテラス席はまるでリゾートホテルにいるような印象でした。



 その理由はここが会員制サーキットだからです。クルマ好きが集まり仲間と走ったり、自分のレーシングカーをシェイクダウンしたりします。よって“リゾート”といいながらもコースは本格的。一周5.5km近いレイアウトの中にかなりテクニカルなコーナーがたくさんあります。名前はかつてグランプリレースで活躍したアルベルト・アスカリ氏に因んでいますからね。ヨーロッパのカーガイが走って楽しく仕上がっています。



 「THE MAGARIGAWA CLUB」はまさにそんな感じです。アスカリにインスパイアされながらも唯一無二のドライビングクラブを掲げた会員制ドライビングクラブとなります。プロジェクトは2015年にスタートし、そこから土地探しが始まりました。南房総での着工は2020年春。そして今年2023年7月にオープンとなります。



 会員制なので利用できるのはメンバーとその家族、それとゲストといったところでしょう。正会員とアソシエイト会員があり、後者には制限が設けられます。とはいえ利用できる施設は豊富で、レストラン、バー、キッズルーム、25mインフィニティプール、スパ、ドライビングシミュレーター、カラオケルーム、日本庭園、ドッグラン、テニスコートなどが待ち受けます。そうそう、温泉も。なんと天然温泉を掘り当てたというから驚きです。





 クルマに関しては空調完備の預かりガレージがあります。スーパーカーの車庫代わりにするのもいいでしょう。なんたってそこは高級車と長い付き合いのコーンズさんですからご心配はありません。セキュリテォを含めしっかり管理してくれますし、国内外を問わずレース参戦のアシストもしてくれるくらいのプロフェッショナル集団です。



 コースは全長3.5kmでストレートは800mとなります。特徴は80mの高低差で、最大上り勾配は20%とか。確かに3周ランボルギーニウラカンで走らせてもらいましたが、それを感じました。ストレートは思いのほか長かったのがいいですし、最終コーナーに向かって上りながら連続するコーナーを駆ける感じも楽しめました。




THE MAGARIGAWA CLUB

 そんなコースを手掛けたのはティルケ・エンジニアーズ&アーキテクト。要するにヘルマン・ティルケ氏です。ドイツ人の彼は建造物のデザインや都市開発を含んだ総合的な建築家ですが、F1を開催できるようなサーキットの設計でも知られています。となると走って楽しいのは当然ですよね。しかも彼はFIAの基準がなく、観客席もいらないここを設計するのは楽しかったと言っているそうです。確かに、これまでの経験を活かし自由に設計できるのですからそうなるでしょう。もちろん、安全性に関してはFIAの基準に近づけたそうですが。



 と言ったのが「THE MAGARIGAWA CLUB」です。フェラーリやランボルギーニ、ベントレー、ポルシェ(ポルシェセンター浜田山)なんかをコーンズでお買い求めた方は一度視察するといいかもしれません。オーナーズヴィラ棟はすでに売れてしまったところもありますが、開業後も増やしていく計画があるそうです。なるほど、クルマ好き富裕層の皆さま、日本でもヨーロッパのセレブのようなカーライフを楽しんじゃってください。