1992年に第1作が放送されたフジテレビの2時間ドラマ『赤い霊柩車』シリーズが、17日放送の『山村美紗サスペンス 赤い霊柩車39 FINAL~弔の京人形~』(20:00~)で、ついに30年超の歴史に幕を下ろす。

実は40作まで続くはずだったこのシリーズ。コロナ禍で撮影が中止になるという憂き目にもあったが、主演の片平なぎさは今作にどんな思いを抱いているのか。その舞台裏をはじめ、30年を共にしてきた共演者たちについても熱く語った――。

  • 『赤い霊柩車』シリーズ主演の片平なぎさ

    『赤い霊柩車』シリーズ主演の片平なぎさ

■40作まであと一歩「本当はもう1話撮りたかったけど…」

物語の舞台は、京都。出張で来た春彦(神田正輝)といつものようにデートをしていた明子(片平)は、幼なじみの中江伊織(松下由樹)と偶然再会する。彼女がずっと師事していた友禅下絵師・九条万葉(羽場裕一)が「時代が変わった」という言葉を残して突如、引退してしまったため、タクシー運転手へと転職したとのことだった。そんなある日、九条が殺害されてしまう。そこには九条の幼なじみである西崎朱(榎木孝明)を示すと思われる「にしさき」の血文字が。

一方、石原葬儀社では、秋山(大村崑)が、父のために“映える葬式”をしてほしいという糸谷将太(山崎裕太)と糸谷あや(景井ひな)の相談を受け入れられず、怒って追い返してしまう。その動画がインターネットに流出してしまい…!?

ファイナルらしく豪華キャストで送る今作。片平は「自分のライフワークのように長く続いた作品なので、最後というのは本当に寂しさがあります」と語り始めるが、「長くやればいいということではないと思うんです。演じる側も年を取っていきますのでね。やはり本シリーズを愛してくださった視聴者の皆さんのイメージを壊してはいけないと思うし、そういう意味ではギリギリのタイミングかなって。健康面においても最後まで誰1人欠けることなく元気で完走できたことは、何よりもうれしく思っています」と充実の表情を見せた。

実は、撮影する予定だった幻の39話があったが、コロナ禍で中止に。今回が3年ぶりの撮影となり、39作目でファイナルとなる。

「皆さんにもお会いできないと思うと寂しいけど、この“39”という数字ってちょうど、感謝の気持ちも込めて“サンキュー”でしょ(笑)。本当はもう1話撮りたかったけど、ちょうどいいんじゃない、逆に良かったと今は思えています」

この3年のブランクは、“2時間ドラマの女王”片平なぎさをしても、不安を覚えることになった。

「自慢ではないんですけど、私はセリフ覚えがいいほうなんです。これまでは現場に台本を持っていくことなく、演じられていたんですね。ですが今回は3年空いちゃって。10ページ近くある、謎解き、人を諭すという一連のシーンを覚えきれるかどうか。家では覚えていても、いざ3年ぶりの現場で、セリフが出てこなくなったらどうしようと思うと怖くて、今回ばかりは台本を持ちました。本当に恐怖でしたね。結果、台本を見ることなく集中できましたが、あの恐怖はちょっと忘れられません。そういうこともあってでしょうか、私も卒業に向けて、やり遂げた感があります」

■ファイナルで結婚させるべきか、婚約者でいるべきか

ここで気になるのは30年もの間、婚約者の関係でいた春彦との関係だ。これを問うと「引っ張りましたよね、我ながら引っ張ったなって(笑)」と冗談で笑わせる。

「10年ぐらい前でしょうか。この年齢になっても毎回、『フィアンセの春彦さん』というセリフが必ず出てくるのが恥ずかしくなったんです。もう若くないし、『どうしても婚約者って言わなきゃいけませんか?』とプロデューサーに聞いたぐらい(笑)。そんなときに神田さんがこう言ってくれたんです。『なぎちゃん、僕たちはサザエさんなんだよ』と。それが腑に落ちて吹っ切れて、それからは逆に『婚約者なんです』を楽しんで言えるようになりました」

  • 片平なぎさ(左)と神田正輝 (C)フジテレビ

だが、寄せられるファンレターの中には明子と春彦の結婚を望む声が多かった。

「私も、さすがに結婚させたらどうなのと思いまして。もう山村美紗先生もお亡くなりになり、原作のストックもなくなり、オリジナルでやらなければならなくなったとき、2人が結婚して、夫婦で事件を解決していくという流れに変えても良いんじゃないかという思いもあったんです。ですが、やはりこれは原作あってのシリーズ。関係性を壊したくないということで、婚約者のままだったんですね。このファイナルでも、結婚させるべきか、婚約者でいるべきか、スタッフ内で意見が割れました。私としては結婚に一票を投じたのですが、果たしてどうなるのか。それはぜひ、オンエアをお楽しみに」