日産自動車が電動車の価格引き下げに向けた取り組みを進めている。同社ではハイブリッド車(HV)の一種である「e-POWER」と純粋な電気自動車(EV)を電動化の2本柱としているが、e-POWER車については2026年までにガソリン車と同等のコストを目指す。

  • 日産の電動パワートレイン説明会の様子

    日産の電動車が安くなる?

コストダウンの方法は?

電動車のコストダウンに向け日産は、新たな電動パワートレインを開発中。モーター、インバーター、減速機の3つの部品をモジュール化したEV用の「3-in-1」と、それら3つの部品と発電機、増速機の計5つをモジュール化した「5-in-1」だ。日産は今回、試作ユニットを公開した。

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    新型電動パワートレインの試作ユニット。左が「5-in-1」、右が「3-in-1」

EVとe-POWER車で主要な駆動部品を共用することと、ユニットをモジュール化することによる生産効率の向上により、電動パワートレインの生産コストを2019年比で約30%下げられるというのが日産の考え。e-POWER車では2026年までにエンジン車と同等の車両コストを目指すという。

新型「セレナ」の「X」というグレード(2WD)で比べてみると、ガソリンエンジン車の価格は276.87万円、e-POWER搭載車(2023年春に発売予定)は319.88万円となっている。ちなみに燃費(WLTCモード)はガソリン車が13.4km/L、e-POWERが20.6km/Lだ。

電動パワートレインについての説明会に登壇した日産 専務執行役員の平井俊弘さんによれば、今後は排ガス規制がますます厳しくなるため、ガソリンエンジン車には排ガスを浄化するためのコスト(例えば触媒としての貴金属の使用量増加など)が今よりももっとかかるようになる。そのため、ガソリンエンジン車の車両コストは増加していくことが避けられない。一方で電動車のコストは下がっていくので、双方の車両コストは2026年にも同等になるというのが日産の見方だ。

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    電動車とガソリン車の車両コストの見通しを示したグラフ。電動車のコストが下がる一方でガソリン車のコストは上昇するため、そのうち折れ線が交わるという話だ。EVのコストが2030年に向かって急激に下がっていっているところにも注目したい

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    分類上はHVの一種となるe-POWERだが、ほかのハイブリッド車ではエンジンが主、モーターが従(あるいはエンジンのサポート役)という関係性であるのに対し、e-POWERはモーターがメイン、というより走りは電気とモーターだけで行う点が全く違う。e-POWER車のエンジンは発電に徹し、駆動用モーターを回す電気を作るだけ。「発電所がクルマの中にあるEV」というのが平井専務によるe-POWER車の説明だ(写真は新型「セレナ」のe-POWER搭載車)

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  • 日産はEV「リーフ」を2010年に発売したが、同年にe-POWERの試作車も開発していた。写真はリーフの車体にe-POWERを積んだ試作車。今回が初公開となる珍しいクルマだ

なので、セレナのe-POWERが276.87万円から買えるようになる、みたいな話でもないと思うのだが、グラフを見る限り300万円は切ってくるのではないかと期待が持てる。なにより、最新のe-POWERは電気の走りがシャープで気持ちよく、加減速の反応がいいので車線変更や高速道路への合流もスイスイいけるし、電動車ならではのワンペダル走行により、ほとんどの場面をアクセルペダルのみで走れてとても楽なのは実感として間違いない。もちろん燃費もガソリン車より優れているわけなので、同じくらいの値段で買えるようになったらガソリン車よりもe-POWERを選びたくなるはずだ。

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    長く電動車を開発してきた日産。電動パワートレインの部品は小型し、点数も少なくなってきているため、ユニットは以前より小さく、軽く、少ない工数で作れるようになった。左側に並んでいるのが2016年の「ノート e-POWER」のパワートレインに使った部品、右側が2020年の「ノート e-POWER」だ

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    電動パワートレインのパワーモジュールという部品で見る進化の歴史。左端が2013年の「リーフ」、中央が2016年の「ノート e-POWER」、右端が2020年の「ノート e-POWER」