『うる星やつら』神谷浩史が語り尽くしたスタッフ&キャストの作品愛

いよいよ2クール目に突入した『うる星やつら』。ラムのいとこ・テン、藤波親子など新たな仲間も続々加わり、あたるとラムの日常はますます騒がしくなることに!

今回は『うる星やつら』の主人公、諸星あたるを演じる神谷浩史さんのインタビューを掲載、ラム役を演じる上坂すみれさんへの絶賛、お父さん役を演じる古川登志夫さんとのやり取り、そして溢れる作品愛についてたっぷり語っていただきました。

▲諸星あたる役を演じる神谷浩史さん

>>>アニメ『うる星やつら』諸星あたるの名場面、神谷浩史さん撮り下ろしPHOTOを見る(写真18点)

――いよいよ2クール目に突入しましたが、現在のお気持ちは。

神谷 今のところは毎回アフレコを楽しくさせていただいてるんですけど、皆さんに観ていただきたいと思う反面、「ああ、始まってしまったから(作品が)終わっちゃうんだな」という二律背反の気持ちがありますね。

――『うる星やつら』は4クール放送となりますが、演じる側としても向き合い方は変わってきますか。

神谷 長く作品に関われるのは、やっぱりありがたいですね。これまで何回か1年放送する作品に関わる機会がありましたけれど、それを1~2クール放送の作品を同時期にこなすことで、声優としての ”筋肉” が短距離走と長距離走みたいに全然違う育ち方をしていくことに繋がると思うんです。

あと一番何が違うかっていうと、役者同士の繋がりですよね。昔はがっつり長い作品も多くて、どの現場行っても同じような人たちが集まって、「じゃあお疲れ様」って次の現場に行くとまた同じ人がいる、みたいな時代があって、その人のお芝居やパーソナルな部分まで含めて理解した上で気持ちのいい作品作りができていたのかもしれないな、と思うんですね。

そういう意味で今回の4クールっていうのはすごく意味があると思うんです。基本的にすみぺ(上坂すみれさん)とは一緒に収録しているんですけれど、『うる星やつら』以前以後だと、会った回数は以後のほうが超えてしまっていますからね。そういう一緒の時間を過ごせたが故のセッション感みたいなものが今まで以上に育つことで、作品にとって良い影響を及ぼしてくれたらいいなと思っています。

――諸星あたるを演じられる中で、何か意識している部分などはありますか?

神谷 諸星あたるって、登場するキャラクターの中で最も魅力的であろうラムに想いを寄せられる反面、その気持ちを横に置いといて自分の欲望のままに行動するキャラクターなんですけれど、その役を演じるにあたって必要なことって何だろう、とか一切考えてないんですよね。

女性の立場から見ると腹の立つ人物かもしれませんけれど、僕は子供の時に(前作のアニメを)観ている時、そこは不思議に思わなかったんです。僕のものの見方としては「その人はそういう人なんだ」と。みんなを楽しませるためにこの作品の中で、そういう行動に走る人っていう認識だったんです。

ギャグからシリアスまでの振り幅がものすごくあって、しかもどちらも全力でやっている感じがするキャラクターなんですね。しかも、目の前の出来事に対して本能的に動いていくタイプということで、ちゃんとしたロジックでキャラクターを演じていくっていうところからズレていると思います。『おそ松さん』とかああいうギャグ作品なんかのアプローチに近い感じでやらせていただいています。

――お父さん役で初代アニメのあたる役を演じられた古川登志夫さんが出ていらっしゃいますが、どのような気持ちで受け止められていますか?

神谷 これは邪推ですが、おそらくこの企画が立ち上がった時点で一番早く決まったキャスティングが古川さんと平野文さんのお二人なんじゃないかって思っているんです。で、その話を聞いた時「素晴らしいな!」と思わず納得しちゃったんですよ。過去に自分が演じていた役の父親をやることを快く引き受けてくださって、どういう心境だったかは僕もわからないところではあるんですけれど、生涯現役を貫く姿勢はそういうところにも表れているのかな、と思いますね。

今回古川さんのポジションをやらせていただいていますけれど、実は東映の『スペース・スクワッド』っていう実写作品のナレーションで、過去に古川さんが担当されていた『特捜戦隊デカレンジャー』のナレーションを引用していたんです。あとはBS4Kでやっている『大草原の小さな家』で過去に古川さんが演じていたアルマンゾ役を僕が新規キャストで担当していて、アルマンゾの父親役を古川さんが担当して下さっていたんですよ。考えてみたら、以前からそういう布石みたいなものがあったんじゃないかな、と。

――現場でご一緒されることもあるのですか。

神谷 分散収録なのでなかなかご一緒する機会はないんですが、初めてご一緒する機会があった時は、音響監督からダメ出しで「あたる!」って言われた時、古川さんが「はい! あ、私じゃないんだ」って言って、誰よりもあたるのダメ出しに反応していて(笑)、何か嬉しくなっちゃいました。

――現場に古川さんがいらっしゃることは、神谷さんにとってプレッシャー? それとも頼もしい?

神谷 両方ですね。現場にいらっしゃると緊張はしますけれども、自分のことを認めてくださっていることが僕にとって何より心強いんです。古川さんが全力でお父さん役をやってくださっているので、僕もそれに応えなきゃいけないし、そういった意味では気合も入ります。

(C)高橋留美子・小学館/アニメ「うる星やつら」製作委員会

――神谷さんから見た、今回のラムちゃんの魅力はどこにありますか。

神谷 まず(キャラクターデザインの)浅野直之さんの描くラムちゃんがどえらく可愛いな、と。浅野さんの絵って止めの状態は勿論のこと、動かした時により魅力を発揮するっていうことは過去作でご一緒させていただいた時に思っていたんですが、本当にその通りで。まさに高橋留美子先生のオリジナルキャラクターと、浅野さんの才能の化学反応の結果です。

あと、すみぺが本当にラムちゃんなんですよね。最初は「ラムって平野さん以外の誰ができるんだろう」って思っていたんですよ。今あんな声で喋れる人いる? あんな天然のあざとさをいやらしくなく成立させられることができる人ってこの世の中にいるの? って。でも、すみぺは非の打ち所がないラムちゃんになっているんです。

平野さんがラムちゃんのお母さん役で登場した時、お母さんが喋っている宇宙語にラムが地球語で翻訳していく中でどんどん翻訳のスピードが速くなって二人の会話が重なっていくんですが、あれをイヤホンで聴いてきたら「ラムが二人いる!」と脳がバグり始めて(笑)。それくらい、すみぺのラムの存在感はすごかったです。

――では、令和版『うる星やつら』の見どころはどこだと思われていますか。

神谷 今作の一番の特徴としては、留美子先生の原作を忠実に描くというところですね。もちろんアニメ的アレンジはあるんですが、原作から選りすぐりのエピソードを映像化してお届けする形になっています。前作のアニメも勿論面白くて、僕も子供の頃観ていて好きでしたけれど、それとはちょっと違う、あくまで原作を今の技術でそのままアニメーションに落とし込んだらこうなりますよっていうものをお届けしている感じです。

やっぱり留美子先生の原作って1コマ1コマが繊細に描かれていてギャグも細かく展開するし、コマ運びがまた凄く自然でめちゃくちゃ面白いんですよ。それが画面上で再現されているところが大きな見どころじゃないでしょうか。

色味も「こんな感じだよな」って納得しちゃうし、原作が好きな人にとっては、ある意味答え合わせというか「やっぱり高橋留美子って面白いよね」という再認識ができるでしょうし、初めて観る人にはすごく新鮮に映っているんじゃないかなと思っています。

――神谷さん個人も『うる星やつら』の大ファンだと思うんですが、満足のいく内容に仕上がっている感じでしょうか。

神谷 やっぱり自分の声が入っちゃってる時点で「もっとこうした方が良かったかな」っていう反省がどうしても出てしまうんですけれど、それ以外のところはマジで面白くてワクワクしましたね。スタッフやキャストみんながこの作品を好きで、楽しんで作ってるなっていうムードが滲み出ちゃってますから。

あと僕は前作のアニメや原作がすごく好きな、ある意味面倒くさい古のオタクのひとりだと思っていて(笑)、自分が関わってるからこそ今すごく前向きに観られていますけれど、もしそうじゃなかったら悔しくて観られなかったと思います。

――本作では80年代のイメージを強く打ち出していますが、その辺りの印象は?

神谷 そうですね、ビジュアル面では80年代イメージが強く感じられましたし、それを今風にアレンジするとこうなるんだろうな、と。実は僕、申し訳ないんですが80年代のカルチャーって「ちょっとダサい」みたいなイメージを持っていたんですよ。でも『うる星やつら』にはそれが当てはまらなくて、それを違和感なく受け取れるのは才能あるスタッフさんたちの力なんでしょうね。

――最後に、放送を楽しんでいるファンの皆様にメッセージをお願いします。

神谷 これまでいろんなところでくり返していますけれど、『うる星やつら』が毎週新作として観られることがある意味ひとつの「事件」であり「お祭り」だと思うんですよ。色々な意見はあると思うし、確かに原作は古い作品かもしれませんが、せっかくのお祭りなんだから参加しないと損じゃないですか。楽しい時間を皆さんと共有できるように今後も全力で作品作りをしていきますので、皆さんもぜひこのお祭りに参加してください!

(C)高橋留美子・小学館/アニメ「うる星やつら」製作委員会