女性囚人が血まみれ流産、獄中出産の悲惨な現実 米

刑務所は女性を想定して作られたわけではない、とピューリッツァー賞を受賞したプロデューサー兼podcast『Lava for Good』司会者のマギー・フレラング氏は語る。刑事司法改革のジャーナリストとしては指折りの存在の彼女が、アメリカの勾留所に収監された妊婦が受けた残忍な対応を取り上げ、刑務所内出産の悲惨な現実と問題点についてレポートする。

かつてパメラ・ウィンさんは囚人番号54458-019と呼ばれていた。現在はジョージア州を拠点に活動する、有色人種の女性による有色人種の女性のための社会復帰支援団体RestoreHERの設立者だ。ウィンさん自身が収監中、人間なら経験しなくていいようなトラウマを味わわされたからだ。

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ウィンさんは2008年にホワイトカラー犯罪で起訴され、連邦政府が管理する収容施設、ロバート・A・デイトン勾留所に入れられた。当時39歳だったウィンさんは裁判所を行き来する際、他の受刑囚とともに両手を手錠で、両足を足枷で、腰を鎖で拘束されていた。同じ年、彼女は自分が妊娠していることを知った。

「ある日裁判所に向かう時、足首に食い込むほど足枷がすごくきつかったんです」とウィンさん。「耐えられないほどの痛さで、ワゴン車に乗り込もうとしたら転んでしまいました」

ウィンさんいわく、看守はすぐに彼女を起こしてくれたが、それ以上の気遣いはなかった。

勾留所に戻ると、出血するようになったという。最初はほんの数滴だったが、やがてどんどんひどくなった。ウィンさんは何週間も医師の診察を申請し続けたそうだ。ウィンさんは収監されるまで婦人科系の登録看護士だったので、出血は転倒時に胎児に何らかの影響があったことを示す兆候であることが分かっていた。

ようやくウィンさんは所内の医療棟に入院した。そこには主任と提携医師(いずれもウィンさんと同じ黒人女性)がいたという。2人もウィンさんが登録看護士だと知っていて、同情していたようだった。

「それもあって、2人は同業者のよしみで私に話しかけてきて、この施設は男性囚人用に作られているから自分たちは何もしてあげられない、と教えてくれたんです」とウィンさん。「女性の囚人、ましてや妊婦が来るとは思ってもいなかったんですね」

産科医の診察にGoサインが出るまで3カ月近くかかった。だがその産科医の手元には、ウィンさんに必要な超音波機器がなかった。そこで彼女はさらに別の医師の診察を申請した。それから4週間後、申請の返答待ちの期間に、もっとも恐れていたことが起きてしまった。

ちょうどロックダウンの時期で、時刻は夜10時ごろだった。「その日に限って蛇口から茶色い水が出てきて、一滴も水を飲んでいませんでした」とウィンさん。「それ以外の唯一の飲み物は、食事と一緒に出されるオレンジや紫や真っ赤な色をした飲み物でした。妊娠中にはよくないことが分かっていたので、飲みたくなかったんです」

キリキリとした腹痛が始まったのはその時だ。最初は脱水症状からくる痛みだと思い、蛇口から出てくる茶色い水を飲み始めた。

「腹痛はさらに悪化しました。横になって眠ろうとしました。目が覚めたら収まっているだろうと思いながら」とウィンさん。「でも腹痛で何度も目が覚めました。実はこの時、すでに陣痛がピークを迎えていたんです」

その時、両脚の間に生ぬるいドロっとしたものを感じた。

「誰かに知らせる呼び出しボタンというものがあそこにはありませんでした。監房の中は真っ暗でした」

ウィンさんが同じ房の受刑囚を起こすと、相手は叫び声をあげ、ドアを叩いて助けを呼んだ。胎児に異変が起きていた。

「医療現場での経験と知識から、常識的に判断して、横になって両脚をしっかり閉じました。すぐに誰か来て回診してくれることを願いながら」

だが、人が来るまでに4時間以上が経過した。看守が到着し、脚の間のドロっとしたものは血であることが判明した。あたり一面血の海だった。

「大量出血だったので、私の処置をめぐって職員と看護士の間で議論になっていました」。ウィンさんは救急車を呼んでくれと矯正施設職員に懇願したそうだ。血圧が急激に下がったことで、ようやく職員は病院への搬送を決断した。

看守は彼女を担架に乗せ、両足首と両手首を担架に固定した。矯正施設からの移動ではよくある措置だ。逃亡を防ぐため、そして安全面での懸念――想定される暴力から病院スタッフを守るためだ。驚くべきことに、慣例として実際の分娩出産中も拘束状態は維持される。

病院に到着すると、ウィンさんはベッドに拘束されたまま、男性看守が監視する部屋に移された。最終的に看護士から、すでに流産していたことを知らされた。

「流産の後に私がどんな屈辱を耐え忍んだか――足元に男性職員がいて、プライバシーなどお構いなしです。せめて部屋の反対側に移動してもらえませんか?と頼みましたが、それすらも断られました」とウィンさん。「動物のような扱いでした。人間扱いされず、ものすごく恥ずかしかった」。運ばれた病院は、彼女がかつて分娩研修を受けたのと同じ病院だった。大勢の看護士と知り合いだった。元同僚にあんな姿を見られたことも屈辱的だったと彼女は言う。

退院後、ウィンさんは「経過観察」のために8カ月独房に入れられた、とウィンさんは涙をこらえながら語った。PBSはウィンさんの話を短いレポートにまとめた。

だが恐ろしいことに、これはウィンさんだけの話ではない。

基本的にアメリカの刑務所制度は、男性受刑囚を想定して設計されている。何よりも出産用の設備を見てみれば、このことがよく分かる。多くの場合、妊娠した女性は分娩出産の際に医療施設に搬送される。ところが、留置所や刑務所に入れられる妊婦の数は年間推定5万8000人以上。政府職員による集計が行われていないため、実際の数字はもっと多いと思われる。つまり数千人もの女性が収監中、満足な設備のない矯正施設で出産しているのだ。

Prison Policy Initiativeというシンクタンクによれば、女性の収監率は男性の倍のペースで増加しているという。1978年と比べると、州刑務所の女性受刑囚数は834%も増加し、とくに貧しい有色人種の女性が圧倒的な割合を占めている。筆者のpodcast『Lava for Good』のシーズン2「Wrongful Conviction with Maggie Freleng」では、こうした女性たちの話や収監を取り巻く状況を取り上げている――妊娠中に不適切な治療を受けたという話や、出産中におぞましい環境に置かれたという話、母子対面の機会を与えらることなく新生児を取り上げられたという話などだ。

2018年の研究によると、妊娠した女性受刑囚を担当した病院看護士のうち82.9%が、患者が拘束状態だったと回答している。場合によっては常時拘束されていたという。

非人道であること、品位を貶めることは火を見るよりも明らかだ。女性たちは出産中に拘束されるべきではないし、新生児が生まれてすぐに心の傷を負うなどあってはならない。拘束状態での分娩出産は母子ともに身体に深刻なリスクを招くし、新生児の発育にも有害な影響を残す。アメリカ産婦人科学会(ACOG)はかねてより、拘束は医師の安全な医療措置を妨げる上に「屈辱的かつ不必要」だと述べている。

幸いなことに、いくつかの取り組みや支援団体によって拘束という野蛮な行為が排除されてきた。多岐にわたる連邦刑事司法制度改革案「ファーストステップ法」が2018年に可決されたことで、妊娠中、出産中、産後の回復期の拘束が禁じられた。可決にあたってはウィンさんの存在が大きかった。だがEqual Justice InitiativeというNPO団体によると、現在収監されている22万5000人強の女性のうち、この法律の保護対象となる連邦刑務所に収監されているのはわずか15%前後にすぎない。

そこでウィンさんも州レベル、とくに南部での法制定を自らの使命とした。現在少なくとも37の州で、妊娠した受刑囚の拘束を制限する法律が可決されている。

残忍性――それと出産時の深刻な健康リスク――を別にしても、拘束という慣習は常識にも反している。武装した看守が監視に立っている中、子どもを生んでいる最中の女性に暴力の危険や逃亡の恐れがどれほどあるというのか?

拘束以外にも、刑務所制度は出産にかかせない別の側面も蔑ろにしがちだ。そのひとつが母子の絆だ。

2011年、ヴェロニカ・タフトさんは妊娠3カ月でニューヨーク州ビンガムトンのブルーム郡留置所に収監された。なんとも胸がつまされる話だが、タフトさんは収監される1カ月ほど前に、収監中に子どもが生まれる時は必ず病院に連れていくと言い含められていたそうだ。タフトさんは出産中も出産後も、拘束された状態だった。

だがタフトさんいわく、最悪なのは出産後だった。息子に会えるのはたった2回、それも10分間だけだった。「車いすに足首と手首を拘束された状態で新生児集中治療室へ行き、息子と面会しました」と本人。息子はその後母親から引き離され、養護施設に送られた。タフトさんの信頼できる知人が息子の世話を申し出ていたにもかかわらず。

タフトさんは2016年に有罪判決を撤回された。だが、現在も息子を取り戻すべく戦っている。

一般的に、新生児と母親の絆が形成されるには産後数日から数週間かかる。赤ん坊が一番身近な人間と心を通い合わせる、子どもの発育には非常に尊い時期だ。このときに新生児が長期的な心理的影響を受け、大人になるまで尾を引くケースもある。多くの刑務所では、母親が赤ん坊と一緒にいられるのはせいぜい1~3日間。その後母親は施設に戻され、赤ん坊は親戚に引き取られるか、養護施設に送られる。

ある研究によると、刑務所内の保育所で育てられて早いうちから母親と触れ合った子どもより、幼少期に収監された母親から引き離された子どものほうが不安症や鬱になりやすいことが判明した。大事な時期を母子が一緒に過ごせるよう、刑務所内で保育所を運営している州は10にも満たない。

2021年7月、ミズーリ州は「ヘルシースタート法」を制定して新たな歴史の1ページを開いた。この法律により、絆を形成する重要な時期に収監中の親と新生児を離別させるトラウマ的な行為に終止符が打たれた。さらにこの法律では、出産前・出産後の母親が地域に根差した代替施設で治療を受けられるようになった。

いくつかの措置が講じられたおかげで変化が起きたものの、あまりにも多くの女性たちがいまだに出産前後、出産中に非人道的な扱いを受けている。変化を起こすのに手を貸したければ、様々な選択肢がある。ウィンさんのRestoreHERやThe Rebecca Project For Justice、アメリカ自由人権協会、Avocasy and Research on Reproductive Wellness of Incarcerated Peopleなど、変化を起こそうとロビー活動を行っている支援団体を応援する、あるいは提携を結ぶのもひとつの手だ。州議員に直談判して大義に加わり、妊娠中の女性受刑囚と新生児を保護する法律の可決を要求するのもありだろう。

どんな母親も、安全かつ健康的に出産する権利がある。どんな赤ん坊も、人間らしい扱いを受けてしかるべきだ。社会が人間の基本的ニーズを無視するなど、あってはならない。アメリカの刑務所制度は、妊娠中の女性受刑者に関する政策を見直すべきだ。

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