ビザ・ワールドワイド・ジャパンは12月19日、公共交通機関でのVisaタッチ決済など、近年の都市環境とモビリティについての動向や事例についてメディア向けにオンラインブリーフィングを開催した。

ここ数年の世界におけるタッチ決済の傾向

公共交通機関利用の世界的なトレンドと、Visaが提供しているアーバン・モビリティ・ソリューションについて、ビザ・ワールドワイド・ジャパン ソリューション企画部の大野有生ディレクターが解説。

今後の世界的な環境予測として、まず高齢化と居住地の都市化が挙げられる。2021年と2050年予測との比較では、65歳以上の人口比率は世界で10%から16%に、都市部の居住者比率は54%から68%となり、社会環境は大きく変化していく見込みとなる。それにより、高齢者の移動手段を確保することや、都市化によって起こる過密からの渋滞など、人々の移動手段を確保し、公共交通機関の維持や拡大が重要な課題となってくる。

さらに、大気汚染や温暖化の側面からも公共交通機関の利用拡大は重要な要素に。路上走行車両の二酸化炭素排出比率は18%から33%と予測(2021年と2050年予測との比較)され、自家用車への依存度を下げ、すべての人が公共交通機関での移動を快適に行えることが環境汚染を防ぐ手立てとなる。これらの課題解決のため、同社ではアーバン・モビリティへの積極的な取り組みを行っているという。

  • コロナ禍における乗客数推移と展望

ごく近年の傾向においては、コロナ禍が公共交通機関の利用を大きく激減させた。現在は概ね復調しつつあるものの、いまだコロナ禍前の水準にまで戻っていない。各事業者は、収益回復のため運賃も値上げを予定しているところが多く、日本においては、運賃値上げに加えて不動産や商業施設、金融などの非鉄道事業による回復にも積極的に取り組んでいる。

そのような中、世界の公共交通機関におけるタッチ決済の導入推移を見てみると、導入済みとなっているのは2022年11月時点で615以上、プロジェクト進行中に関しては800以上となっており、順次タッチ決済の導入が進められている。年間利用者数が5,400万人にものぼるカナダのMetrolinx社の運用開始(2022年10月)など大型導入も成立している。

  • タッチ決済の公共交通機関での導入推移

公共交通機関での取引件数も飛躍的に伸びており、10カ月で10億件を超える決済が行われているという。これは、2011年以降はじめてのことで、いかに急速にタッチ決済の利用が広がっているかがうかがえる。特に多いのは欧州で、ロンドンでは1日に400万件の利用がある。北米では公共交通機関利用のうち1/5がすでにタッチ決済利用となっており、アジアもそれに追随するように広がっているという。また、タッチ決済は交通機関の投資利益率を高められ、その運用コストを2/3以上にも抑えることができるという。

コロナ禍により、各国で入国規制などが行われたことにより、2019年以降のインバウンドについては非常に低調な動きとなっていた。入国規制を早く解除した諸外国においては、公共交通機関で海外発行カードでのタッチ決済比率が回復しており、約1.7%まで落ち込んでいたものが2022年には約5.3%にまで回復。日本もそれに追随しており、直近の2022年11月は約5.1%となっている。2023年上半期は、景気後退や燃料高騰によりやや低迷が予測されるが、下半期には中国の入国規制緩和が実施され、回復が鮮明になると見込んでいる。

  • インバウンド回復基調

公共交通機関の利用者ニーズとしては、券売機での待ち時間が不便と感じていた人が多く、タッチ決済の利便性はサービス利用の動機になるという傾向が世界的な動向として見えている。日本においても同様の傾向がみられ、タッチ決済が簡単でスピーディであり、経済的であることへのニーズが増加している。特に20代の若者で顕著であり、日本や海外で移動にタッチ決済を利用したいかどうかについて、利用したいという声が全世代では47%であったのに対し、20代では67%と20%も多い比率となっていた。

  • 利用者意識調査

さらに今後は、MaaSへのビジネス拡張を推進していく。MaaSはバスや電車、タクシーだけでなく、ライドシェアやシェアサイクルなどあらゆる公共交通機関をITによってシームレスに結び、人々が効率よく便利に移動できるシステムのことで、欧州を中心に本格的な取り組みが始められている。同社では、MaaS統合アプリを支えている決済網を通じてすべての移動手段にソリューションを提供し、アーバン・モビリティからMaaSへの拡張を目指していく。

Visaは16億人をつなぐグローバル決済網であり、カード・トークンの情報記録や不正に対するセキュリティ、混在課金やダイナミック運賃への対応、割引やロイヤルティプログラムへの対応など、次世代モビリティを実現する機能軍を備えている。今後、大きく変化する社会環境に適応し、すべての人の移動手段を確保しながらも、サステナビリティな都市の実現を目指していく。

タッチ決済はキャッシュレス社会を支えるインフラに

続いて、ビザ・ワールドワイド・ジャパン デジタルソリューションズの今田和成ディレクターより、公共交通機関におけるVisaタッチ決済導入の実例について説明が行われた。

現在、日本国内でのタッチ対応端末の設置数は150万台以上、対応カード枚数は役8,700万枚にものぼる。タッチ取引件数も増加傾向で、昨年比で公共交通機関においては約5.3倍以上となっている。スーパーやドラッグストア、飲食店、コンビニなどでも2.1倍から3.9倍以上と増加しており、タッチ決済が急速に浸透していることがわかる。

  • 国内での公共交通機関での導入状況

全国のバスや地下鉄、鉄道でのタッチ決済の導入も拡大しており、2022年12月現在、33プロジェクト、21都道府県が導入を発表、もしくは導入済みとなっている。2020年12月では4プロジェクト4都道府県であったことを考慮すると、ここ2年で急拡大したことがうかがえる。

今後は、さらなる利用拡大や首都圏での展開を見込む。南海グループでは、2025年の大阪・関西万博に向けて全駅でのタッチ決済対応を目指し、インバウンド旅客への受け入れを強化していく。東急電鉄では、2023年夏よりタッチ決済を使った実証実験を発表、2024年初をめどに東急線全駅まで拡大していく。また、神姫バスでは、当日利用分の請求上限額を10月1位日現代で700円に設定する上限運賃適用サービスを導入した。このような新たな料金形態にも対応し、柔軟な導入、拡大を展開していく。

また11月1日より、鹿児島市交通局でタッチ決済の実証実験が行われている。鹿児島市電では現在のところ、いわゆる10カード(Suica、ICOCAなどの全国相互利用が可能な交通系ICカード)の導入はされていない。鹿児島市の市電、市バスで利用できるICカード乗車券・ラピカは利用でき、現金かクレジットカードによるチャージが可能(チャージにより1割のプレミアがつく)となっているが、オートチャージには対応していない状況だ。

  • 鹿児島市交通局での実証実験

11月1日以降、約半数の電車でタッチ決済に対応しており、新年度以降はブランド追加や全車両対応を検討しているという。この実証実験で、10カード未導入の公共交通機関にタッチ決済を導入した場合、どの程度、観光客や地元の方々に利用されるかを検証していく。


同社では、「ブランドの認知向上やインバウンドの増加により、さらなるタッチ決済の普及を加速させていく。公共交通機関での普及と、そのほか加盟店での普及を両輪として、キャッシュレス社会を支えるベースのインフラとして貢献していきたい」としている。