女優の生田絵梨花が、フジテレビのドキュメンタリー番組『ザ・ノンフィクション』(毎週日曜14:00~ ※関東ローカル)のナレーション収録に初挑戦した。担当したのは、18日に放送される日中共同制作『遠く故郷を離れて ~この国で命を救う人になる~』。中国からやってきた研修医・朱海さん(36)の奮闘を追った作品だ。

念願だったという『ザ・ノンフィクション』のナレーションで、登場人物たちに寄り添うような優しい語り口を披露している生田。番組の映像から、「読み方を自然に変えてもらうような感覚があったんです」と語る――。

『ザ・ノンフィクション』のナレーションを担当した生田絵梨花

『ザ・ノンフィクション』のナレーションを担当した生田絵梨花

■異国の地で奮闘「この物語は1人では成立しない」

幼い頃から日本のアニメが大好きだった朱海さんは「日本で救急医になる」という夢をかなえるため、6年前に妻子を連れて来日。研修先は、医師不足に悩む鹿児島県・大隅鹿屋病院で、言葉の壁に苦戦しながらも地域医療の最前線に立っている。

その姿に、「異国の地でずっと働き続けるのは本当に覚悟がいることだと思うのですが、きっと朱先生が出会ってきた人たちや、支えてくれる家族がその道を後押ししていて、朱先生も誰かのために頑張ろうと、常に人とのつながりを原動力にされながら進んでいる方なのだと思って、この物語は1人では成立しないんだろうなというのをすごく感じました」という生田。

中国での医師のキャリアを捨て、日本の医師国家試験に挑戦するが、4年も不合格が続き、それでも諦めることなく猛勉強を続けた結果、資格を手にしたという努力家で、「普通だったら、もう投げ出したくなってしまうと思うんです。師匠の期待に応えたいという思いがあったとしても、そこまで頑張れるのはすごいですよね」と驚いた。

■“背中を追いかけたい”存在は…

その朱さんの師匠というのは、大阪の病院に勤務していたときに指導してくれたベテラン医師。番組では、尊敬する師匠との交流も描かれるが、生田にとってそうした“背中を追いかけたい”存在を聞くと、「舞台と映像を両方やってらっしゃる方は、本当にリスペクトします。私は今まで舞台が多かったのですが、映像で知ってもらうことによって劇場にお客さんを呼びたいという思いもあるので、先輩方の活動をいつも目指して、自分も頑張りたいなと思いますね」と明かしてくれた。

改めて、今回のドキュメンタリーを見て、「お医者さんの人間的な部分を覗くことは、普段あまりできないことだと思うのですが、どういう経緯で医者になって、いまを生きているかというところがすごく丁寧に描かれています」と紹介。

その上で、「朱先生が在宅医療に訪れたときに、『患者さんにも家族がいるということを忘れないでほしい』と先輩の先生に言われていたのですが、それと同じように私たち患者側も、お医者さんに1人の人間としての生活があるんだということを知っていただけるといいのではないかと思います」と呼びかけた。

  • 診療する朱海さん (C)フジテレビ

■「少しでも私の声で没入してもらえたら」

以前から、『ザ・ノンフィクション』を見て、「ナレーションによってより没入させてもらうような感覚があって、しかも回ごとに違う女優さんが担当されているので、いつかやれたらいいなというのが、自然と目標みたいになっていました」というだけに、今回のオファーには「『やっとかなった!』と思いました」と、念願達成を喜んだのだそう。16日に公開された映画『Dr.コトー診療所』に出演しており、「地域医療というテーマとも重なる部分があったので、それもうれしかったです」と感想を語る。

ナレーションの経験はあまりないというが、「VTRで流れてくる音楽とか、出てくる方々の表情やトーンとかで、読み方を自然に変えてもらうような感覚があったんです。それは番組の素敵さだなと、改めて実感していました」と、導かれるように語りを吹き込んでいったのだそう。

公開中の映画『Dr.コトー診療所』で看護師役を演じた際、「医療指導の先生が、『いろんな治療方法があるけど、最終的には触れてあげたり、声をかけてあげたりということが、一番その人の救いになる』と伺ったんです。実際に研究でもそうしたことで治癒力が高まることがあるそうで、“寄り添い”というのが看護師さんとしてもすごく大切なことだというのを学びました」というが、今回のナレーションも登場人物たちに寄り添うような語りを披露。

「感情は出てくる方々が十分に宿しているから、自分の感情はあまり込めすぎず、なるべく心地良い声でできたらいいなと思っていました」と意識したそうで、「私がこの番組を見ていたときのように、皆さんにも少しでも私の声で没入してもらえたらうれしいです」と願った。

  • 娘を肩車する朱海さん (C)フジテレビ

●生田絵梨花
1997年生まれ、ドイツ・デュッセルドルフ出身。乃木坂46の中心メンバーとして活躍し、21年末に卒業。多くのミュージカル作品に出演し、19年には「第44回菊田一夫演劇賞」演劇賞を受賞した。今年は映像作品にも多く出演し、ドラマ『オールドルーキー』『PICU 小児集中治療室』、映画『コンフィデンスマンJP 英雄編』『Dr.コトー診療所』などに出演。23年にはミュージカル『MEAN GIRLS』『GYPSY』の上演が控える。