神谷浩史11年ぶりのフルアルバムが表現した「スマホアプリの世界」

神谷浩史さんが2ndフルアルバム『appside(アップサイド)』を12月21日にリリース! flumpoolが楽曲提供したリード曲『希望の渦』をはじめ、『Fan×Fun Time 2022』で初披露された『Drive』などを含む新曲10曲を収録。フルアルバムとしては約11年ぶりとなる今作について、楽曲の印象や制作秘話などを神谷さんにたっぷり語っていただきました。

>>>神谷浩史さん2ndフルアルバム『appside』のジャケットなどを見る(写真3点)

――フルアルバムとしては、2011年にリリースされた1stアルバム『ハレゾラ』ぶりとなります。制作が決まった経緯などについてお聞かせください。

神谷 きっかけは、スタッフさんから「出しましょう」と言われたからではあるのですが(笑)、ミニアルバムと違ってフルアルバムっていろいろとハードルが高くて、なかなか作れるものではないので「フルアムバムを作りましょう」とおっしゃっていただけたことは、非常にありがたく感じました。

――今回のフルアルバムに込めたテーマやコンセプトについてお聞かせください。

神谷 僕は音楽活動を開始した当初からあまり能動的な意思というものがなくて……途中から自分でコンセプトも作ったりしましたけど、前回出させていただいたミニアルバムの『TP』で10枚目になったので、以降はまたスタッフの皆さんに制作をお任せしようと。

なので、今回じつは僕の意思はそんなに入っていなくて、音楽ディレクターさんから「スマートフォンをモチーフに曲を集めてみたらどうでしょうか」とコンセプトの提案があり、今回はそのテーマで選ばれた10曲になっています。

――アルバムタイトルの『appside』はどういった経緯で決まったのでしょうか?

神谷 アルバムタイトルだけは己で付けるというKiramuneの習わしがあるので、1枚目から自分で付けてきました。今回もタイトルだけは自分で付けなければならなかったので、無い知恵を絞って考えました(笑)。「upside」という金融用語で「利益が見込めるチャンス」、ビジネス用語で「伸びしろ」などを意味する英単語があるんですけど、「up」の部分をアプリケーションの「app」に変えた造語です。コンセプトの”スマホ”にちなんで、「アプリの中から」というようなニュアンスを持たせてみました。

――今年5月に開催された『Fan×Fun Time 2022』にて、今作の制作発表と収録曲となる新曲『Drive』が初披露されました。この『Drive』が今回のアルバムで最初に作られた曲だったのでしょうか?

神谷 はい、『Drive』が最初にレコーディングした曲になります。スマホのアプリケーションをモチーフに曲作りをしていくということで、一番分かりやすい「地図アプリ」から発想を得てできた曲です。

レコーディングでは「思っていたより、もうちょっと跳ねて歌わないと成立しないんだな」と思いながら歌いました。とても疾走感のある曲で、久しぶりに作るアルバムの中から先行してライブで披露させていただくにはとてもいい曲だなと思いました。

――『Drive』は地図アプリがモチーフになっているのですね。他の曲はどのようなアプリをモチーフにされているのか教えていただけますか?

神谷 『モアライブラリ』は「写真アプリ」、『パラレルピンチョス』は「動画アプリ」、『しんこきゅう』は心拍数を図る「健康管理アプリ」、『Day by Day』は「メモアプリ」。『HEART BEAT』は後半に作った曲で、明確なモチーフのアプリは無しで作っていただいた曲なのですが、裏テーマは「iPhoneを探すアプリ」です。

『Re-answer』は予定を通知してくれる「リマインダー」、『ソーシャルネット・ワーカホリック』はそのまま「SNS」、『アサカゼ』は電車オタクの指田(フミヤ)さんが作ってくれた「乗換案内」の曲で、指田版『線路は続くよどこまでも』ですね(笑)。そして最後の『希望の渦』は「ボイスメモ」になります。

(C)Kiramune Project

――リード曲の『希望の渦』はflumpoolの山村隆太さんが作詞、阪井一生さんが作曲された曲です。今回、flumpoolに楽曲制作をお願いした経緯は?

神谷 flumpoolさんとは、過去に僕が出演したTVアニメ『かくしごと』や『キャプテン・アース』で主題歌を担当されていたご縁もあったので、お願いしたところ快諾していただけました。

flumpoolさんに作っていただいた候補曲は3曲あって、どの曲もすごく良かったので結構意見が分かれたりもしたんですけど、僕自身がこの曲がもつflumpoolさんらしさや、アンニュイな雰囲気があるけれども前向きなところを気に入りまして。僕からこの曲がリードとしてふさわしいんじゃないかと提案させてもらって決まりました。

――実際に『希望の渦』を歌ってみた感想をお聞かせください。

神谷 この『希望の渦』に限らず、今回のアルバム制作では「音程がズレているわけでもないのに、なぜかしっくりこない」みたいなことが多くて。どうアプローチしたらいいか悩みつつレコーディングすることもあったりして、ほとんど全曲で試行錯誤の連続でした。

「歌い方を工夫しないと、曲として全くかっこよく聴こえないんだ」と感じて、何度も歌っているうちに正解に辿り着いたりはするんですけど、初めから正解のビジョンが見えていたわけではなかったので、収録自体はどの曲も結構しんどかったです。

――そして、『パラレルピンチョス』の作詞を只野菜摘さんが担当されています。只野さんといえば、神谷さんの楽曲でも印象的なものを手掛けていらっしゃる印象ですが、歌詞を見た時の感想を伺えますでしょうか。

神谷 相変わらず、本当に素晴らしいなと。こんなこと言ったら失礼に聞こえるかもしれませんが、曲自体はアゲアゲの雰囲気の珍妙な曲なんです。なので、これにどんな詞がつくのか全く想像つかなかったんですけど、「只野さんだったら大丈夫」という、謎の信頼があったんですよね。只野さんにしてみれば、プレッシャーだと思うんですけど。

だから、出来上がった歌詞の、サビの最後のフレーズで「ピンチョス」って単語をはめてきたのを見た時はやっぱり只者じゃないなって感じました。

――その他の収録曲で、神谷さんご自身が今回チャレンジだなと感じた曲はありますでしょうか?

神谷 リード曲の『希望の渦』以外は、楽曲制作にも僕はあまりタッチしていなくて。僕が細かく意見を言うとどうしても選曲が偏ってしまうので、基本的にはスタッフさんに提案していただいた曲を受け入れるスタンスで臨みました。歌いやすい・歌いにくいは一回横に置いておいて、レコーディングの時に頑張ればいいかなと……なので、全体的にチャレンジになりました。

(C)Kiramune Project

――豪華盤のBDには『希望の渦』のMVも収録されます。どんな映像になっていますでしょうか?

神谷 ずっと僕のMVを作ってくれている河谷(英夫)監督が、今回もまた担当してくださいまして、その河谷監督からのアイデアの一つが螺旋階段だったんです。

鬱屈とした気持ちを抱えた男が、夜中に地下駐車場に停めた車の中から悩みを吹っ切るように螺旋階段を登っていき、朝焼けを見ることで気持ちを新たに次の場所に向かっていく……歌詞の内容から、そんなインスピレーションを得たMVになっています。

――MVの撮影裏話などあればお聞かせください。

神谷 実は当初、朝焼けの代わりに夕焼けで撮影することが予定されていたんです。ところが、台風の影響で撮影予定時刻に天気がメチャクチャになりそうだということが前日に判明したので、僕のほうから「撮影の集合時間を早めて、天気が崩れる前にマジの朝焼けを撮影してはどうですか」と提案させていただきました。

そこで急遽スケジュールを全体に動かしていただいて、僕は朝4時半に現地入りすることになったんですけど、到着したら既にいい感じの朝焼けが出てしまっていて(笑)。メイクもそこそこに、一瞬の朝焼けを狙って撮影しました。撮影前日に全てのスケジュールを調整し直してくださったスタッフさんたちはとても大変だったとは思うのですが、波みたいになってる独特な雲も含めてすごく綺麗な映像が撮れたので、朝焼けの撮影にしてよかったんじゃないかなと感じています。

――フルアルバムがリリースされると、ワンマンライブの開催など期待するファンも多いと思います。今後のライブでやってみたいことなどあればお聞かせください。

神谷 僕自身がやりたいことは特にないんです。スタッフさんが提案してくれることに、どこまで僕がついていけるのかということしか考えていないので。ライブで皆さんから大きな拍手をいただくことはありがたいですし、その時は「やった!」と思ったりもするんですけど、今は「さらに大きな拍手をいただけるように、もっといいパフォーマンスができるようになっておかなきゃ」と思っています。

――2009年にKiramuneへ加入されて今年で13年目となります。これまでの活動を振り返っていかがでしょうか?

神谷 もう13年経つんですね。よく分からないまま13年経ってしまったというのが僕の印象です。よく言っていますが、音楽活動を始めたばかりの頃は、CDを1枚出して『キラフェス2009』に出演したらそれで終わりだと思っていたので。CDリリースを重ねて、ライブの開催会場がどんどん大きくなっていって……ついには西武ドーム(現・ベルーナドーム)に立たせていただいたりソロライブを経験させていただいたり。

Kiramuneの活動をやっていなかったら立てなかっただろうなというステージはいっぱいありますし、声優として皆さんにぜひ観ていただきたいリーディングライブもやらせていただいたりして、こういった幅広い活動はKiramuneだからできるんだろうなと思っています。

基本的に声優の仕事って受け身なので、自分で仕事を作ることはできないんですよね。そんな中で、僕にとって音楽活動は声優の活動の一環で、「こういうものを作りましょう」と提案してもらったことに対して、自分の声でどういうふうにアプローチしたら成立させられるのか、その作品が完成できるのかということにしか興味がないんです。

音楽活動をこの先も続けて行けるのであれば、いつまで言ってもらえるか分からないですけど、「CD出しましょう」「ライブしましょう」とおっしゃっていただける限りは、頑張りたいなというスタンスは今後も変わらないと思います。

(C)Kiramune Project