村上春樹「(歳は)自分でも忘れるようにしていますし、実際に忘れていることが多いです。そんなのただの数字ですから」
作家・村上春樹さんがディスクジョッキーをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「村上RADIO」(毎月最終日曜 19:00~19:55)。11月27日(日)の放送は「村上RADIO~ホーギー・カーマイケルをご存じですか?~」をオンエア。名曲「ジョージア・オン・マイ・マインド(我が心のジョージア)」「スターダスト」などを生み出したアメリカのソングライター、ホーギー・カーマイケルの音楽と彼の魅力を、エピソードを交えながら紹介していきました。
この記事では、その一部の内容をお届けします。



◆Hoagy Carmichael「New Orleans」
カーマイケルの曲のタイトルにはなぜか地名がついたものが多いんですが、これも名曲です。「ニュー・オーリンズ」。ホーギー自身が歌います。
これは『Hoagy Sings Carmichael』というタイトルのアルバムに収められています。このアルバムではホーギーが自作の曲を10曲、歌っています。伴奏はジョニー・マンデルのアレンジメントと指揮。名のあるミュージシャンを集めていますが、なんといってもアート・ペッパーのソロがきらりと光ります。1956年の録音です。
このときカーマイケルはもう60歳近くで、声域もいくぶん狭くなっているけど、さすがに雰囲気がありますよね。聴いてください。「ニュー・オーリンズ」。

<クロージング曲>
‎Paul Desmond「Skylark」

今日のクロージングはポール・デズモンドが演奏する「スカイラーク」です。空のヒバリに語りかける美しいバラード。

今日の言葉は「パパラギ」という本の中に出てくるサモアの島の部族長、ツイアビさんの言葉です。ツイアビさんは20世紀の初め、招かれてヨーロッパ諸国を旅行して、そのときの体験を島に帰ってみんなに語ります……という構成になっているのですが、これは実はドイツ人が作ったフィクションだったと、あとになって判明しました。でもそれはそれとして、なかなか愉快な本です。

ツイアビさんは、ヨーロッパでよく「あなたは何歳か」と質問されました。そのたびに「知りません」と答えていたのですが、そう言うとみんなに「自分の歳を知らないなんて、かわいそうに」と言われました。
でも彼に言わせれば、「そんなこと知らないほうがいいのに」ということになります。
彼はこう言います。

「何歳かということは、何回月を見たかということだ。この考えはよろしくない。なぜならたいていの人は、死ぬまでに何回月を見るか、決められている。だから、数をかぞえてみて、もしたくさん月を見ていたら、『私はもう死ぬんだ』と思う。すると、どんな喜びも消え、彼はまもなく本当に死んでしまうだろう」

僕も実にそう思います。だから自分の歳がいくつかって、できるだけ口にしないようにしています。ていうか、自分でも忘れるようにしていますし、実際に忘れていることが多いです。そんなのただの数字ですから。

世間にはよく「私はもうおばさんだから」とか口にする人がいますが、そういうのってよくないです。そんなことを言っていると、ほんとうにおばさんになってしまいますよ。必要以上に若くなる必要はありませんけど、年齢的に自分を決めつけるっていうのはよくないです。
自由に自然に、心を広げて生きていきたいですね。

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もう来年の話になりますが、今度、番組で「80’s オール・リクエスト」というのをやりたいと思います。1980年代に流行ったポップ・ミュージック、お好きなものがあればどんどんリクエストしてください。ベタでも全然構いません。僕も80年代はいろいろ事情があって、ポピュラー音楽っていうか、ポップスをたくさん聴いていました。どういう事情かは、またその時にお話します。
番組サイトからリクエストとメッセージを送ってください。よろしく。
それではまた来月。

<番組概要>
番組名:村上RADIO ~ホーギー・カーマイケルをご存じですか?~
放送日時:11月27日(日)19:00~19:55
パーソナリティ:村上春樹
番組Webサイト:https://www.tfm.co.jp/murakamiradio/