祝・誕生30周年! 最新“タイプR”の実力を徹底チェック


11代目の現行シビックをベースに開発された
最新“タイプR”の実力を体感できる時がやってきた。
熟成が進んだターボエンジンや新開発の空力パーツにより、
戦闘力の底上げはどれほどのものなのか?
ホンダの聖地、鈴鹿サーキットで実施された走行会の模様をお伝えしよう!



●文:川島 茂夫 ●写真:奥隅 圭之




HONDA 新型シビック TYPE R 魅力の全て


早く走れる走行ラインを
いとも容易くトレースできる
 全制動から減速を緩めながらのターンインを行うと、クリッピングポイント付近で旋回半径は最小となり、その後の加速と共に旋回半径は大きくなっていく。
 タイヤの摩擦円を綺麗に使おうとすればコーナリングラインは楕円になるのが当たり前で、そういう意味でもサーキットコースを攻める時の走行ラインは理にかなっている。
 ただ、理想的な走りを求め、正確なタイミングで正確に操作量をコントロールするのが極めて難しい。ちょっとしたミスで0.5秒くらいはすぐにロスしてしまう。
 そんな状況で神経質な操作を求められたり、癖のある操縦性を宥める補正など、クルマ側からアレコレ要求されては堪らない。その点、最新のシビック・タイプRはドライバーへの要求が非常に少ないのだ。
 今回のサーキット試乗は、鈴鹿サーキットのフルコースを先導車付きで2分48秒くらいのペースというやや残念な設定。しかも試乗車はサーキット走行向けの純正補修用タイヤを履いているので、市販モデル以上に余裕たっぷりの状況ともいえる。それでも合間合間の車間距離を調節することで、部分的に限界付近まで試してみたが、性格も特性も目立った変化は感じない。
 強めの制動を残してのターンインや、エンブレからの追い舵、あるいはアクセルを開けながらのラインを拡げていく旋回など、さまざまな横Gを受けた状態で操舵を行っても、回頭感覚が大きく変わらない。タイヤの摩擦円の範囲での話になるが、4輪のグリップバランスが加減速や操舵で崩れない。車体方向が不安定になりやすい速度が乗ったまま飛び込むような直角コーナーも予想以上の安定ぶりで、狙ったラインに簡単に乗せることができる。コンフォートモードではちょっと接地感が甘くなる印象も受けたが、基本特性も限界も変わらない印象。ここまで素性良く仕上がっているならば、あとやることは旋回半径に応じた速度にコントロールするだけだ。

全域で扱いやすさが際立つ
ターボの熟成に脱帽
 ターボエンジンは太いトルクをやたら広い回転域で発生する特性で、細かなコントロールの追従も優れている。それでいてレブリミット付近でも息苦しさや加速ダレは皆無。幅広い回転域で素直な特性を実感できるので、変速ギヤの選択の自由度も高い。ブレンボのブレーキシステムも超高速からの一気減速でも最後まで利きを変えず、リリース側のコントロール性も極めてリニア。全制動時に4輪が貼り付くようなロードホールディング感がとても心強い。
 クルマの力はドライバーと一体なって発揮されるもの。ドライバーの負担が大きければラップタイムも安定しないしトラブルに見舞われることもある。言い方を換えるならサーキット走行においては扱いやすさや素直さは「速さ」の重要な要素でもある。最新のシビック タイプRの強味はそこにあることを実感することができたのだ。





HONDA 新型シビック タイプR
●車両本体価格::499万7300円(6速MT)
●問い合わせ先:0120-112010(Hondaお客様相談センター)

シビックタイプR 主要諸元
●全長×全幅×全高(㎜):4595×1890×1405 ●ホイールベース(㎜):2735 ●車両重量(㎏):1430 ●パワーユニット:1995㏄直4DOHCターボ(330PS/42.8㎏・m) ●WLTCモード総合燃費:12.5㎞/ℓ ●ブレーキ:ベンチレーテッドディスク(F)ディスク(R) ●サスペンション:マクファーソン式(F)マルチリンク式(R)●タイヤ:265/30ZR19






実効空力特性を煮詰めたことやサスペンションの最適化により、走行安定性がさらに向上。シビアなラインも容易くトレースできるなど、クルマの操りやすさは特筆モノだ。




パワーユニットは2ℓ直噴4気筒ターボを踏襲するが、ターボチャージャーを刷新することで最高出力は10PS、最大トルクは2㎏・mほど向上。さらに冷却系が強化されたことで、ピークパワーのレンジが拡大。より幅広い回転域での扱い易さが向上している。

スポーツ一辺倒にあらず
日常で活かせる装備にも注目
 デコレーション感というか、そういった「改造」の雰囲気の払拭がエクステリアの狙いのひとつ。例えばリヤフェンダー周りはパネルと一体成型で元デザインに溶け込んだ造形に仕上げられている。エアインレットやアウトレット、リヤウイングにしても然り。こんな細かな改良もあって、先代と比較すると大人っぽい落ち着きを感じることができる。
 熟成という言葉がしっくりとくるエクステリアに対して、インテリアは赤と黒のコンビカラーやレーシーなセミバケットシートなど、一目で只者ではない印象を受ける硬派な雰囲気。内外装のイメージをドライバーに見立てれば、集約させた高性能と内に秘めた情熱といった感じにも思える。
 走行ハード関連も特別仕立て。エンジンは北米オハイオ工場で生産された2ℓターボ。最高出力は330PSにも達し、それでいて6500回転に至っても36㎏・mを超えるトルクを発生するフラットなトルク特性を持つことも特徴だ。
 サスペンションはフロントはタイプR専用のデュアルアクシスストラットを採用し、電子制御式の可変ダンパーが組み合わされる。最近のホンダ車でお馴染みのアジャイルハンドリングアシストも装備している。
 妙に感心させられたのは安全装備関連で、マニアックなスポーツモデルながら、ACCやLKAを含むホンダセンシングが標準装着される。日常用途での安全性から長距離ツーリングでの運転支援まで対応していることは、現代の超高性能車らしい部分ともいえる。








ダッシュ上にモニターが配置されるなど、基本レイアウトは標準車と共通だが、ブラックとレッドを上手に織り交ぜるタイプRらしいキャビンカラーが高揚感をかき立てる。






グラフィカルな表現が可能なタイプR専用10.2インチフルカラー液晶メーターを採用。




車載ITはホンダコネクトディスプレイが標準装備される。タイプR専用データロガーも搭載するなど、デジタルアプリとの親和性が高まっている。