対戦格闘ゲーム『ストリートファイターV CE』のプロリーグ戦「ストリートファイターリーグ: Pro-JP 2022(SFL 2022)」が9月6日に本節開幕し、約1カ月半が経過しました。10月25日の第7節 Day2をもって前半戦が終了、折り返しとなります。そこで、前半戦を振り返り、後半戦をより楽しむために、情報を整理したいと思います。

「SFL 2022」では、本節開幕前に1on1のトーナメントが開催され、そこで上位4位までに入った選手の所属するチームに、本節でのポイントが加算。優勝したふ~ど選手が所属する「名古屋OJA BODY STAR Mildom」には20ポイント、ぷげら選手が2位、ガチくん選手とどぐら選手が同率3位に入賞したことで「Good 8 Squad」には合計ポイントの20ポイントが入りました。優勝候補の「Good 8 Squad」とその対抗馬とされる「名古屋OJA BODY STAR Mildom」が20ポイントを先行し、開幕前から有利な状態で本節に挑みます。

  • 1on1で優勝したふ~ど選手。これで「名古屋OJA BODY STAR Mildom」に20ポイントが入ります

開幕前の下馬評では、大本命が「Good 8 Squad」、それに対抗するのが「v6プラス FAV gaming」と「名古屋OJA BODY STAR Mildom」とみられていました。

「Good 8 Squad」はメンバー3人がトップクラスの実力者のうえ、ドラフトで補強したどぐら選手も本来であればレギュラークラスの選手です。懸念材料があるとすれば、ガチくん選手がラシード、カワノ選手がコーリン、どぐら選手はベガと、基本的にメインキャラ1本である点。ぷげら選手はバイソン以外にポイズンも使いますが、最近はバイソン1本の傾向が強いので、4人ともアウェイではカウンターキャラクターを使われやすい弱点がありました。さらに、ベガ以外のキャラクターは調整で弱体化しており、以前よりも使用キャラの練度と相手のキャラ対策、人対策が必要です。

対抗とみられていた「v6プラス FAV gaming」では、りゅうせい選手の体調不良により、プロパーのメンバーはsako選手のみでしたが、昨年チームを組んだときど選手に加え、ボンちゃん選手が加入。さらにドラフトでは今シーズンの注目株だったダルシム使いの鶏めし選手を獲得しています。現状、強キャラクターと言われるルークをときど選手とボンちゃん選手が使い、マルチキャラ使いながら唯一無二の戦い方をするsako選手、さらに日本3大ダルシムの鶏めし選手を抑え、盤石の体制で臨みます。

「v6プラス FAV gaming」と同様に「Good 8 Squad」の対抗馬となり得ると目されていたのが、「名古屋OJA BODY STAR Mildom」です。チームメンバーはキャミィ使いのあきら選手のみでしたが、今回参戦しなかった「Mildom Beast」のウメハラ選手とふ~ど選手が参戦し、さらに愛知県に縁のあるナリ君選手が加わります。1on1トーナメントの優勝や直前に行われたTONGA Championshipでの優勝など、絶好調のふ~ど選手に、安定感のあるウメハラ選手が加わり、一躍優勝候補に躍り出ました。

以上のような戦力予想があったなか、前半戦を折り返しての結果は、「Good 8 Squad」の独走状態。「Good 8 Squad」の4人全員が強かったのもありますが、全体を通して各チームとも目論見が大きく外れた部分があった結果ではないかと考えます。それは、ルークとダルシムが予想以上に活躍しなかった点です。

本節開幕前、特にドラフトの時点で、シーズン通しての活躍が見込まれていたのがルークで、当初は強キャラを全面に押し出すことが強いと考えられていたのです。実際、ルークはときど選手、ボンちゃん選手をはじめ7名が使用。「使おうと思えば使えるレベル」まで考えると、10人近くのプレイヤーがルークを選べるでしょう。

実際にルークを強キャラだと考える人は多いでしょうが、リーグの選手全体の4分の1近くが同じキャラクターを使用するとなると、対策しやすくなってしまったのかもしれません。ルークを使っている選手のうち、勝率50%を超えているのはヤマグチ選手とマゴ選手の2名だけです。

YHC-餅選手と鶏めし選手のダルシムも、出場機会、勝率ともに予定通りになっているとは言えません。ダルシムを必要以上に警戒した結果、ルーク同様に対策されたこと、カウンターキャラが多いためアウェイで出しにくくなってしまったなど、いくつかの理由が考えられます。

かたや、予想以上の活躍をみせているのは「Good 8 Squad」のメンバーや「名古屋OJA BODY STAR Mildom」のふ~ど選手、あきら選手、ウメハラ選手、そして「Saishunkan Sol 熊本」のひぐち選手、「広島TEAM iXA」の稲葉選手など、「キャラ変えをしなかった選手」です。

特にあきら選手のキャミィは弱体化され、多くの選手が手放すことになりました。しかし、それでもキャミィを使い続けた結果、大活躍を見せています。

ガイルを使い続けているひぐち選手は、第7節まで全試合に出場し、すべての節で勝利しています。残念ながら第7節の延長戦では負けてしまいましたが、前半戦もっとも活躍した選手の1人と言えるでしょう。

つまりキャラクターの能力差よりもキャラクターの練度のほうが、今回のリーグで活躍できている要因だと言えるのです。もちろん、ルークにキャラクターを変更した選手が変える前のキャラクターを使用していたら良い結果になっていたとは言いきれませんが、全般的に練度の高さが活かされている結果だと思います。

  • ルークにキャラクターを変更し、思ったような結果が出ないときど選手と、ガイルを使い続け、連勝を続けるひぐち選手

「Good 8 Squad」は先述したとおり、キャラクターの変更がなく、練度の高さが強み。さらにラシード、コーリン、バイソンの3キャラは、ほかのチームでメインで使っている選手がおらず、対策をするのであれば、その選手のためだけに時間を割かなければなりません。

弱体化したとはいえ、レアキャラ化したことゆえの優位性も発生しています。ルークにあれほど苦戦していたガチくん選手が、いまやルークを得意としているように見えているのも、それだけの研究、対策の結果と言えるのではないでしょうか。本節最強の呼び声が高いふ~ど選手に対してカワノ選手がこれまで使用していなかったルシアで勝利したのも、ふ~ど選手のみを対象にし、数節分の時間を使って全力で対策した結果と言えます。

また、ストイックなチームリーダーのガチくん選手すら扱いに困っている、ぷげら選手の独特の話は、強さだけでない「Good 8 Squad」の魅力の1つです。

  • カワノ選手のルシアピックは相手チームや視聴者の度肝を抜きました。その前の数節出場していなかったので、ふ~ど戦に向け、ルシアを仕上げてきた感があります

「Good 8 Squad」の対抗馬は「名古屋OJA BODY STAR Mildom」。順調にポイントを稼ぎ、追いかけ続けます。しかし、第7節で3連敗を喫し、急ブレーキとなりました。特にポイントゲッターであるふ~ど選手が、第5節でカワノ選手のルシアに敗北し、第7節で同じくまちゃぼー選手のルシアで敗北したのが大きな痛手となっています。それでもあきら選手の爆発力とふ~ど選手、ウメハラ選手の安定感は高く、あと一歩勝ちに届かないナリ君選手も後半はやってくれそうな気配です。

  • 体力が低くなったことでKOされやすくなったキャミィ。それでもキャミィを使い続け、結果を出したあきら選手。追い込まれてからクリスマス衣装にチェンジし、逆転勝ちするのもいまや恒例です

前半戦終盤になって大躍進したのが、「忍ism Gaming」です。第5節、第6節と2節連続で40ポイントを稼ぎ、第7節でも30ポイントを獲得。一気に2位に駆け上がります。1位の「Good 8 Squad」とは50ポイント差ですが、本節だけのポイントを比べてみれば30ポイント差とほぼ互角で戦えているチームです。

ももち選手のコーディーは大将戦で勝ちまくり、ルークでの高い勝率を誇るヤマグチ選手、徐々に調子を上げてきた藤村選手、Gを駆使し大暴れをしているジョニィ選手と後半戦にも期待が高まります。ジョニィ選手はコメントでも大活躍。オーナーももち選手へのツッコミや、忍術にたとえる話、夢の話などは、もはや「忍ism Gaming」の勝利者インタビューの楽しみとも言えます。

  • 初参戦の緊張もあり、軒並みベテラン陣ルークが粉砕されたなか、5勝2敗の好成績を残すヤマグチ選手

アウェイながら、第7節で「名古屋OJA BODY STAR Mildom」相手に3連勝し、40ポイントをもぎ取った「魚群」も後半戦に期待が持てます。マゴ選手のルークを起点に、まちゃぼー選手のネカリが上り調子になっているのが好材料です。

  • 惜しいところで勝ちきれない水派選手が後半戦の「魚群」浮上のカギか

「v6プラス FAV gaming」は、下位に埋もれていましたが、第7節で40ポイントを獲得。なんとか浮上のきっかけとしたいところです。地力のあるチームではあるので、一気に巻き返してくる可能性があります。1位と110ポイント差と苦しい状況ですが、プレイオフ進出が可能な4位は射程圏内と言えるので、後半戦の巻き返しに期待しましょう。

sako選手のメナトと鶏めし選手のダルシムが大会を盛り上げているので、あとはときど選手とボンちゃん選手の調子が戻ってくれば勢いづくはず。第6節、第7節でルークを封印したことが後半戦にどう影響するか楽しみです。ときど選手の復活がカギとなりますが、そのきっかけとなるのがイケメン対決だとすれば、実現するのは第14節。さすがに巻き返しができない時期となるので、ガンファイト選手以外のイケメンとの対決で覚醒して欲しいところです。

  • sakoメナトならではのコンボ選択や戦い方は、勝敗を超えて、観ているものを惹きつけます

「Saishunkan Sol 熊本」は絶対的エースであるひぐち選手の星が見込めるので、ほかの選手が勝率5割をキープするだけで必然的に上位を狙えます。ただ、ひぐち選手の負担が大きいとも言えるので、それを軽減させるためにもチーム力をどう上げてくるかが見どころ。ユリアンからキャラ変えをする選手が多いなか、ユリアンを使い続けたShuto選手は「CAPCOM Pro Tour 2022 World Warrior 日本大会」でも好成績を残し、本節でもかなり良い戦いをしています。勝利につながっていませんが、実力的には勝利してもおかしくない戦いを続けているので、後半戦勝ちを重ねる可能性はあります。

  • 先鋒・中堅で出たら10ポイント、大将なら20ポイントが確実に「Saishunkan Sol 熊本」に入ると思わせるほどの安定感をみせるひぐち選手

「コミュファDetonatioN」も、序盤出場機会のなかったうりょ選手が終盤活躍をみせたので、オーダーの組み替え次第では上を狙える位置にいます。良い試合をしながら勝ちにつながっていないナウマン選手もきっかけがあれば連勝街道を突っ走れる潜在力はあります。竹内ジョン選手も勝ち切れていませんが、その実力は勝率以上のものがあるでしょう。

  • 初参戦による緊張や大将戦による重圧などを微塵に感じさせないうりょ選手

「広島TEAM iXA」はポイント的にはかなり苦しい展開。後半戦では、逆に上位陣を苦しめてほしいところです。コメントやTwitter、ゲーム中のチームジャージの数などを見る限りでは、人気はトップクラス。判官贔屓であることも否めませんが、チームやメンバーは個性的で魅力のある選手がそろっており、戦い方も唯一無二です。ある意味、一番プロらしいチームと言えるのではないでしょうか。

最後の砦として奮闘した稲葉選手も前半戦終盤では息切れした感もあります。ストーム久保選手以外はSFリーグ初参加のプレッシャーや緊張感もあったと思われるので、1周して慣れが出てきた後半戦の巻き返しに期待です。

  • チームが稼いだ55ポイント中、40ポイントが稲葉選手によるもの。稲葉選手の重責を軽くするのがチーム浮上の必須事項

後半戦と言っても、通常通りのスケジュールでまったくインターバルがないので、うまくいっていないチームは切り替えられずに、このままズルズル行ってしまう可能性があります。後半戦は一度戦った相手との再戦。前半戦とは違った戦いを見せ、流れを掴んだチームが優位に進めるでしょう。

前半戦はキャラの強さより練度が勝ったと言いましたが、後半戦では強キャラルークの練度が上がってきて活躍する可能性もあります。対策されているとはいえ、ほかの選手がやってこない新たな戦い方を見いだして、クリエイティブな戦いをする選手が出てくるかもしれません。ルークに見切りをつけてほかのキャラクターへチェンジするのか、ルークと心中をするのか、そのあたりも注目です。

チーム対策としても、独走中の「Good 8 Squad」包囲網を敷いていくのか、とりあえず本節での1位通過は「Good 8 Squad」に譲って、プレイオフで少しでも優位になるために2位を狙っていくのか、目が離せません。

©CAPCOM CO., LTD. ALL RIGHTS RESERVED.