ホンダがコンパクトカー「フィット」のマイナーチェンジを実施した。目玉はスポーティーな新モデル「フィットRS」の登場だが、やはり「RS」の登場を待っている人が多かったのか、初期受注では全体の2割強を占める好調ぶりを見せている。

  • ホンダの新型「フィット」

    ホンダの「フィットRS」が出足好調!

具体的にいえば、新型(マイチェン後の)フィットの受注は2022年8月に始まり、10月の時点で約1.55万台の注文を獲得(10月20日にホンダ広報に確認)しているそうだが、そのうち21%がRSだったという。まだRSの展示車は販売店にいきわたっていない状況らしいので、そのあたりが整ってくれば比率はさらに伸びるかもしれない。

次世代の「RS」像を示すモデルに?

現行型「フィット」(4世代目)は「心地よさ」をコンセプトとして2020年2月にデビューしたコンパクトカーだ。「ベーシック」(BASIC)、「ホーム」(HOME)、「ネス」(NESS)、「クロスター」(CROSSTAR)、「リュクス」(LUXE)の5タイプがあり、パワートレインは2モーターハイブリッドシステム「e:HEV」搭載車と(1.5Lガソリンエンジンを使用)と1.3Lガソリンエンジン車の2種類から選べた。

  • ホンダの新型「フィット」

    旧型(マイナーチェンジ前の)「フィット」(写真は「ネス」)の販売実績は2021年が5.8万台強、2022年は8月までに4.1万台強で計画通りに推移していたとのこと。各タイプの販売比率はベーシック23%、ホーム51%、リュクス9%、クロスター14%、ネス3%、e:HEVとガソリン車の割合は63:37だったそうだ

マイナーチェンジの主な変更点は以下の通りだ。

  • デザインの変更
  • e:HEVモデル駆動用モーターの最高出力を14PSアップの123PSに
  • ガソリンエンジン車の排気量が1.3Lから1.5Lに
  • RSの追加(e:HEVは販売中、ガソリンエンジンモデルは2022年11月10日に発表予定)
  • 「ネス」の廃止(RSが加わったので全5タイプ構成は変わらず)

新型フィットの価格は159.28万円~266.42万円。マイナーチェンジ後の販売比率はベーシック14%、ホーム39%、リュクス11%、クロスター15%、RS21%、e:HEVとガソリンの割合は76:24となっている。

  • ホンダの新型「フィット」
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  • ホンダの新型「フィット」
  • 写真は新型「フィット」の「ホーム」(内装はメーカーオプションのプラミアムライトグレー・インテリア)。今回のマイナーチェンジで「ベーシック/ホーム/リュクス」では、アッパーグリルの位置を上に引き上げ、フロントノーズがすっきりと見えるよう形状を変更。「ホーム/リュクス」ではアッパーグリル上部にメッキ加飾のラインを水平に通し、より端正なデザインを目指した

  • ホンダの新型「フィット」
  • ホンダの新型「フィット」
  • ホンダの新型「フィット」
  • 写真は新型「フィット」の「クロスター」。専用エクステリアとなるフロント、サイド、リアのガーニッシュをマイナーチェンジでシルバーに変更し、タフギアらしさ、クロスオーバーらしさを強調した

RSはデザインと走りの質にさらにこだわったフィットの新タイプ。先代フィット(3世代目)にもRSがあったので、今回はフィットRSの復活という見方もできる。ちなみにホンダは、4代目フィット開発時から「そのうちRSを出そう」と準備を進めていたのではなく、4代目フィット発売後にRSの追加を決めたそうだ。「心地よさ」にこだわった4世代目フィットにスポーティーなイメージのRSは合わないのではとの考えがあったようなのだが、顧客や社内、開発陣内部からの声が高まり、走りを楽しめる新タイプとしてRSの追加を決めたのだという。

  • ホンダの新型「フィットRS」
  • ホンダの新型「フィットRS」
  • ホンダの新型「フィットRS」
  • 新型「フィットRS」は専用のフロントグリル、フロントバンパー、サイドシルガーニッシュ、リアバンパー、リアスポイラー、アルミホイールを採用。標準タイプの「フィット」よりもスポーティーな雰囲気に仕上がっている。写真は「RS/クロスター」用の新色「スレートグレー・パール」。近くで見ると少しラメっていて綺麗な色だ

新型フィットRSには、荒れた路面で車体の揺れを抑えるため徹底的に性能を突き詰めたRS専用のサスペンションを採用。e:HEVは専用装備としてアクセルオフ時の減速力を4段階で選択できる減速セレクター(ステアリング裏のパドルで調整する)、「ECON」「NORMAL」「SPORT」の3つから選べるドライブモードスイッチを搭載している。

RSのe:HEVはFF(前輪駆動)のみで234.63万円。専用のパーツ、専用の足回り、レース活動から得られた知見を活用した開発など、ホンダが新型フィットRSにつぎ込んだものを考えると、この値段は意外に安いような感じがする。ホームのe:HEVのFFが217.5万円なのだが、比べてみて、どうお感じになるだろうか。フィット開発陣の1人は、「私も、RSの値段を聞いた時にはびっくりしました(笑)」と話していた。

  • ホンダの新型「フィットRS」
  • ホンダの新型「フィットRS」
  • ホンダの新型「フィットRS」
  • 新型「フィットRS」には減速セレクター(ステアリング裏のパドルで操作)、ドライブモードセレクターなどの専用装備が。シートなどには黄色のステッチが入る

フィットRSの復活は、昔からRSが好きだったホンダファン「だけ」を狙っての施策ではない。クルマの電動化が進んでいくこの時代にe:HEV(ハイブリッド車)のRSを作って世に問うのは、これからのRS像を提示して、これからのRSファンを作っていきたいという意図があってのことだという。電動化はエコ「だけ」のためのものではなく、走りの楽しさにも活用可能だということを証明したいという思いもあるそうだ。