貯蓄がないなか、4300万円の住宅ローンを組んだ40代会社員男性。今後の家計管理や働き方などについて、ファイナンシャル・プランナーの平野泰嗣さんがアドバイスします。

◆親の借金240万円を返済。妻にもっと働いてもらうほうがいい?

皆さんから寄せられた家計の悩みにお答えする、その名も「マネープランクリニック」。

今回の相談者は、貯蓄がないなか、4300万円の住宅ローンを組んだ40代会社員男性。今後の家計管理や働き方などについて、ファイナンシャル・プランナーの平野泰嗣さんがアドバイスします。

◇相談者

たろうさん(仮名)

男性/会社員/43歳

持ち家・一戸建て

◇家族構成

妻(パート・30代)、子ども3人(7歳、4歳、2歳)

◇相談内容

妻の親の負債の返済中ながら、無謀にも4300万円の住宅ローンを組んでしまいました。今後は私が住宅ローンの繰上返済として1000万円、嫁さんが教育資金600万円をそれぞれ貯蓄目標としています。ただし、予定どおりにいくとは限らず、老後についてはまったく考えられません。

また、嫁さんは昨年、正社員からパートになってしまい、年収150万円程度となり、国民年金と国民健康保険を払っております。嫁さんを扶養に入れるため、転職させて、103万円以下に抑えるべきなのでしょうか? それとも社会保険加入を目指すべきでしょうか?

保険についても嫁さんは何も入っていませんが、見直しが必要でしょうか? アドバイスいただければと思います。よろしくお願いします。

◇家計収支データ

たろうさんの家計収支データは図表のとおりです。

相談者「たろう」さんの家計収支データ

◇家計収支データ補足

(1)加入保険の内訳

・相談者/収入保障保険(60歳まで月額15万円)=保険料5500円

・相談者/終身保険(死亡保障300万円、65歳払込終了、医療特約入院5000円)=保険料9600円

・相談者/がん保険(終身保障、65歳払込終了、入院1万円)=保険料3500円

・子ども/学資保険=保険料3万5000円

(2)妻の親の負債

詳細は不明(おそらくカードローンとのこと)。数年前に身内数人からの借り入れで完済。相談者の親には240万円を借り入れ、相談者が返済を行っている。あと2年で完済。

(3)ボーナスの使いみち

親への返済120万円、残りは固定資産税の支払いと貯蓄(25万~30万円)

(4)住宅ローンについて

借入総額……4300万円

返済期間……35年間

毎月の支払額……11万5000円

ボーナス払い……0円

金利……変動金利0.725%

借入残高……4100万円

(5)教育費の内訳

保育料(2人分)4万3000円、学童5000円、給食費4400円、通信講座5000円

(6)通信費の内訳

携帯(2人分)1万6500円、ネット6500円、固定電話2000円

(7)車両費の内訳

ガソリン5000円と、残りは車検と自動車税と任意保険を毎月で割ったもの。

◇FP平野泰嗣の3つのアドバイス

アドバイス1:定期的にライフプランをチェックしよう

アドバイス2:収入の損得よりも本人の意向を優先させたい

アドバイス3:妻の死亡保障は原則不要、医療保障は最小限に

◆アドバイス1:定期的にライフプランをチェックしよう

親御さんの負債を返済しているということですから、住宅ローンの返済と重なれば確かに大変ではありますが、おそらくご相談者の年収は700万円超。

そこに、奥様のパート収入が加算されるわけですから、そんなにきびしい家計状況にはならないはずです。住宅ローンも返済でき、教育資金も十分用意できるでしょう。

ご相談者の昇給を年0.5%として試算してみると、親御さんへの返済が終了する2年後以降、年間収支が200万円弱のプラスでずっと推移していきます。

お子さんの進路ですが、高校まで公立とすれば、一番上のお子さんの大学進学あたりから、貯蓄ペースは落ちますが、学資保険もありますし、ご相談者が定年するまで年間収支がマイナスになることはないでしょう。

ただし、定年を60歳とすれば、その時点でまだ2人のお子さんが大学生ですから、再就職されても収入によっては赤字になる年も出てきます。

それでも、退職金が例えば2000万円受け取れるとすれば、その時点で資産は5000万円に達します(投資商品は運用利回り0%とする)。公的年金や、定年後もおそらく働かれることを考慮すれば、老後資金もさほど心配する必要はありません。

とはいえ、ご相談者も言われるとおり、予定どおりに物事が進むとは限りません。先の試算も、クルマの買い替えや家族での旅行といった、不定期な支出は盛り込んでいません。

また、お子さんの教育費も、進路によって大きく変わります。したがって、年に一度でいいですから、自分たちの貯蓄状況や家計収支をチェックし、必要に応じてライフプランを見直していくことが大切となります。

◆アドバイス2:収入の損得よりも本人の意向を優先させたい

奥様の働き方については、現在のパート収入と社会保険料や税金の損得勘定でいえば、おそらくトントンだと思います。ただし、ご相談者の勤務先で扶養手当が付くのであれば、現状のほうが損となる可能性が高いと思います。

ただ、本当に考慮すべきは、収入の損得ではなく「妻の働き方」です。どういう状況で働きたいのかという、奥様の意向をまずは優先させるべきでしょう。

もしかしたら、お子さんとの時間をより多く取りたいという理由で正社員からパートに変わったのかもしれません。そういう意向を職場が聞き入れてくれたのなら、今後また正社員に復帰できる可能性もあるのでは。

実際、小さいお子さん3人を育てながら正社員で勤務し続けるのは、相当に大変なはずです。もし、奥様の意向をご存じないのなら、まずはそこを確認した上で判断することが重要だと思います。

また、奥様の働き方に関連して「10年間で嫁さんが教育資金600万円を貯蓄する」とありますが、パート収入からこの貯蓄目標は、そう簡単ではありません。

ご相談者が10年後に1000万円を貯めて繰上返済をすることについては、おそらく可能ですし、ローン減税や現在の金利を考慮すれば、効率的な返済方法といえます。ですが、奥様の貯蓄目標については調整が必要でしょう。

◆アドバイス3:妻の死亡保障は原則不要、医療保障は最小限に

家計について、大きく無駄があると思える費目はありません。しいて言えば、通信費がやや割高でしょうか。契約プランが古いままという可能性があります。見直せば何割か安くなるはずです。

保険に関して、まず奥様ですが、死亡保障を確保する必要性は低いと考えていいでしょう。基本的に働き手はご相談者ですし、仮に奥様に万が一のことがあった場合、末子が満18歳に到達する年度の末日(3月31日)まで、ご相談者も遺族年金を受給できるようになりました。

医療保障は、高額療養費などの公的な制度がありますし、また、まとまった貯蓄もこれからできますので、単体の医療保険や共済で、最小限(入院5000円程度)確保すればいいと思います。

また、ご相談者加入の保険ですが、終身保険に付加している医療特約が気になります。65歳以降も継続を希望する場合、それまで支払っていた特約保険料よりも保険料がアップするというタイプであれば、今から特約部分だけ解約してもいいでしょう。

医療保障も必要と考えるなら、単体の医療保険で新たに終身保障を確保しておくと合理的だと思います。

教えてくれたのは……平野泰嗣さん

ファイナンシャル・プランナー、キャリアコンサルタントとして活躍。FPの妻と2人でFPオフィス Life & Financial Clinicを創立し、「自分らしく生きること」をモットーにライフ・ファイナンス・キャリアの3つの視点でのアドバイスをする。中小企業診断士として経営者・従業員のライフプラン支援も行っている。

取材・文:清水京武

文=あるじゃん 編集部