女優の波瑠演じる真行寺小梅と俳優の間宮祥太朗演じる福山玄之介が「まるふく工務店」で営業バディを組み、依頼人の家と人生を魔法のようにリノベしていく姿を描いたカンテレ・フジテレビ系ドラマ『魔法のリノベ』が、きょう19日(22:00~)に最終回を迎える。

大きな話題となっているのが、エンディングでヨルシカの「チノカテ」に乗せて流れる「リノベ後」の風景だ。UNIVERSAL MUSIC JAPANのYouTubeアカウントで公開されているエンディングのまとめ動画は117万回再生を超え(9月17日時点)、「エンディングまで力を入れていてすごい」「優しい気持ちになれる」と好評を得ながら、リノベされた家で新生活を楽しむ登場人物の様子に「リノベ後の家はどうやって作っているの?」と素朴な疑問も集めている。

今回は同作を手掛けるカンテレの岡光寛子プロデューサーに、エンディングへのこだわりやSNSの反響への感謝、波瑠や間宮、吉野北人などキャスト陣の芝居への思い、そして最終回の見どころについて話を聞いた。

  • 左から波瑠、間宮祥太朗=カンテレ提供

    左から波瑠、間宮祥太朗=カンテレ提供

■“ビフォー”の物件はシナリオにあわせ必死に探した

――エンディングで見せる「リノベ後」の家の様子が話題となっていますが、一体どのように作られているんでしょうか。

一番こだわった部分なので、視聴者の方に楽しんでいただけてうれしく思います。最初に『魔法のリノベ』のドラマ化を会社に提案したとき「家のビフォーアフターはどう見せるの?」と聞かれて、「なんとかします!」と威勢良く言ったものの、出来上がるまでは正直私自身もドキドキしていました(笑)。脚本を担当してくださったヨーロッパ企画の上田誠さんが「やったことのないこと」「このドラマでしか表現できないこと」に挑戦しようと仰ってくださって、背中を押されながらスタッフ皆でいろんな方法を模索していきました。原作のある話は物件を探すところから始まり、できる限り実写にこだわりながら美術でどう作るか、CGやVFXで補いながら最後は技術でどう撮るか、建築CAD、ミニチュア模型も使いながらいかに物件のシズル感とビフォーアフターのワクワク感を作り出せるか……毎回「リノベ会議」を開き全部署のスタッフで知恵を出し合って無事に全11軒のビフォーアフターが形になりました。

――家自体もセットではなく、本物の物件を探してきて撮影していたんですね。

ビフォーは実際にある物件を使っています。完全にシナリオと同じ間取りというのは難しいのですが、物語の中で重要なポイントを絞って似た物件をスタッフが必死で探しました。物件が見つかったあとで筋が通るように脚本を調整するパターンもありましたね。

■“リノベ後”は「ドラマの肝」――時間と労力かけて丁寧に

――リノベ後の様子をエンディングに乗せて届けるという座組はどのように決まったのでしょうか。

ヨルシカさんがドラマのために書き下ろしてくれた「チノカテ」がもう素晴らしい曲だったので、この世界観を活かしてミュージックビデオ風のエンディングを作るのはどうかと瑠東東一郎監督が提案してくれました。視聴者の方が、月曜夜10時にドラマを1時間見てぱっと現実に戻るのではなく、家族のその後の暮らしを見ていただくことで多幸感に包まれた余韻を味わっていただけるようなエンディングを目指しました。

――アフターの家の様子は、実写を大事にしつつもいろんな手法で作られているんですね。

まるごとセットとして建ててみたり、大きな物件の中に壁ごと持ち込んでビフォー用に部屋を作ったあと、アフターでその部屋を取り払ってみたりと、毎話大道具さんが出動し工夫しながら作ってくれました。間取りだけではなく、実際に暮らしている様子も演出しなければいけないので、インテリアや部屋の装飾でどれだけ変化がつけられるかというところも力を入れたポイントです。全部変えるのではなくて、残すべきものは残してより良くするのがリノベなので、“エモくなる仕上がり”を美術・装飾チームと試行錯誤しながら探っていきました。ある意味美術泣かせなドラマで、スタッフには感謝しかありません。

――「リノベ」を描くことへの力の入り具合が伝わります。「エンディングのためだけにこんな大掛かりなことをするの?」という声は上がらなかったのでしょうか。

私たちスタッフも今でもそう思っています(笑)。エンディングのワンカット1秒2秒のために、何時間もかけて作ったものをすぐに壊すこともあったので寂しい気持ちになったり……。でも皆で「ここがドラマの肝だよね」という共通認識を持って、とにかく丁寧に時間と労力をかけて作りました。だからこそ反響につながってとてもうれしいです。エンディングには小梅と玄之介の距離が徐々に縮まっていく様子も盛り込んできましたが、9話では物語にリンクさせて離れてしまう2人の姿も描きました。

■「チノカテ」3番を使用した9話特別EDの反響に驚き

――8話までは「チノカテ」の1番が使われていましたが、9話は「あ、待って。本当に行くんだね」という玄之介の心境と歌詞がぴったりと合った3番を使用しての特別バージョンになっていて、大きな反響を巻き起こしていましたね。

いや、もう反響の大きさに驚いています。8話までは契約が取れた後の帰り道の2人の笑顔をエンドロールに入れていましたが、9話は全然そんな心情ではないのでどうしようと思い……。これまで1番の歌詞に2人がリップシンクしていたものを、9話は玄之介だけが3番の歌詞にリップシンクして小梅の表情を差し込む形でいこうと、波瑠さん、間宮さんと相談して決めました。書き下ろしとはいえ、あまりに物語とリンクする形になったので我々も鳥肌ものでした。

――想像以上の反響でしたか。

すべてにおいてそうなのですが、制作側は「これウケるだろうな」と思って作っているわけではないので、いつもオンエアを終えて「思いがけないところで盛り上がってくださるんだな」と驚かされます。最終回のエンディングはこれまでで一番時間をかけて撮っているので、楽しみにしていてください!

――そのほか、視聴者の方の感想や反響で感じたことはありますか。

登場人物をすごく愛していただけた実感があって……ありがたかったです。梅玄コンビのファンもいれば、越後小出の“えちこい”コンビが好き、まるふく箱推しだと言ってくれる方もいる。前半は苦手だった久保寺が憎めなくなっていつの間にか応援しているというお声には、作品と共にキャラクターが育っているんだなと感じました。上田さんとも「毎週月曜日の夜にまるふくの皆に会いに行きたくなる、そんな世界観が大事だよね」と話していたので、登場人物たちに愛着を持ってもらえて幸せです。9話のオンエア後には「小梅と玄之介をなんとか幸せにしてください!」「なんで引き離すんですか!」「有川ほんとにムカつく!」と、まるで怒りの声もいただけて(笑)。皆さまの熱い思いをリアルタイムで感じられて、連ドラをやっていて良かったな、報われるなと思える瞬間でした。