水島精二監督が感動した舞台『機動戦士ガンダム00』の超絶クオリティ

2022年2月7日~14日まで上演された舞台『機動戦士ガンダム 00 -破壊による覚醒-Re:(in)novation 』が、この度Blu-ray&DVD化された。TVアニメセカンドシーズンのエピソードを約3時間に凝縮した本舞台は、これまでの『ガンダム』という作品概念を大きく更新した画期的な内容に仕上がっている。

これは『機動戦士ガンダム00』という作品そのものの懐の深さが成したものではないか――本舞台に監修として携わった水島精二監督に現場での関わり方、ライブならではの魅力、そしてさらなる『ガンダム00』の展開について語って頂いた。(後編/全2回)

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――『舞台 機動戦士ガンダム00―破壊による覚醒-Re:(in)novation』で、前作に続いて水島監督は「監修」という形で関わられました。舞台参加の経緯は、どのようなものだったのでしょうか。

▲世界の歪みに抗うソレスタルビーイングの戦いも遂に最終局面へ。

水島 そうですね。最初に今のようにリハーサルから現場に足を運び、イベントに関わるようになったきっかけは2004年の『鋼の錬金術師FESTIVAL』、大阪公演での細かなトラブルが原因でした。全体構成や映像は僕ら制作スタッフ主導でしたが、ライブ自体はお任せでした。ところが登壇したキャストとスタッフとの意思疎通がうまく出来なかったらしく「東京公演では何とかしてほしい」と相談されて、アニプレックスのプロデューサーや毎日放送の竹田靑滋さんに相談したら、次のリハーサルからいろんな調整に関わることになり、公演当日も照明さんのサポートをしていました。

それをきっかけに、自分の作品がイベントで扱われたり舞台化されたりする時にアイデアを出したり、現場のリハーサルに立ち会ったりと、積極的に関わっているうちに、だんだん舞台で何ができるかが判るようになってきたんですね。MBSアニメフェスの『ガンダム00』イベントステージなども映像制作会社と密に相談し、その上で、副監督を務めていた角田一樹君や長崎健司君と一緒に映像だけでなく、ステージ用の構成を作ったり……単純に興味があるからやりたい、というのもあるし、そこで学んだものが今後の仕事にフィードバックできるだろうという思いがありました。実際、後にやらせてもらったリーディングライブなどで活かされているんです。

舞台版の『ガンダム00』もそういった流れで関わったんですが、演劇側のスタッフからライザー(人力で動かす舞台装置)を使ってモビルスーツ戦を表現するというアイデアを聞いて、僕もリーディングライブでライザーを使った演出を間近で見ていたので、『それだ!』って思いましたね。こういうアイデアを出してくれる人たちなら安心して任せられる、と思いました。メディアが変われば表現も変わるわけですから、イメージ管理はこちらでしますが、メディアに合わせての作品作りは向こう側できちんと出来るようにしてあげたいと思っています。

――では、今回もかなりしっかり取り組まれた?

水島 自分としてはガッツリというほどの温度感ではないんですけれどね。でも前回の舞台の時、稽古に顔を出したらめちゃくちゃ歓迎されまして。「場面やキャラの解釈に関して、水島監督はすぐに答えてくれる」というのが大きな理由でした。

――「演出上、ここまで変えても大丈夫か?」という問題点に関して、水島監督ならその場でジャッジできる。

水島 そうです。サンライズに対しても、「監督が大丈夫なら」と判断してもらえるわけで。自分が現場にいることでスタッフや演者を安心させる、舞台上での表現に関して物理的な問題にぶつかった時にはこちらもアイデアを出す、そういう役割として関わっている感じですね。

――では、舞台の ”『ガンダム00』らしさ” は、どのようにジャッジされたのでしょうか。

水島 基本的には脚本段階で調整していますね。演出・脚本を担当されている松崎史也さんはとてもクレバーな方で元々脚本のまとまりが良いんですが、結末で描かれる状況でのキャラクターの心理にとても悩まれていたんです。アニメのドラマを舞台に全部落とし込むことは物理的に無理だし、映像表現と舞台では違うものになるわけですから、そこはいろいろ話をしました。実際には役者の演技プランによって表情まで変わるわけだし、それを見て必要であればセリフを直してもいいんじゃないかとも伝えています。

――あくまでも演出は現場にお任せしているわけですね。

水島 そうですね、相当考えた上でやってくれているのもわかるので。場合によっては、内容がだいぶ固まったところで「今はこういう解釈で演じているかもしれないけど、このニュアンスでやった方がキャラクター的に伝わりやすい」、「こういう会話にするともっと意味のあるやり取りになるので、そっちでやってみない?」というような感じで、役者に委ねつつ、さらに調整していくこともあります。

――アニメのアフレコと舞台の指導は、やはり大きく違ってくるものでしょうか?

水島 ええ、声優さんの場合は作画の表情に合わせて演技してもらわないといけないので、アプローチはまるで違いますね。

(C)創通・サンライズ

――本作はセカンドシーズンの物語が描かれますが、TVシリーズとはニュアンスが異なる部分も多くなっています。

水島 変わっている部分は多いと思います。前作も「かなり変わっているので納得がいかない」みたいなことを言うファンの方もいましたが、僕が関わっていて、しかも僕自身が納得している脚本なので、松崎さんの作る舞台は間違いなく『ガンダム00』と言って間違いないです。

――前作で登場しなかった沙慈・クロスロードとルイス・ハレヴィが遂に登場しましたね。

▲戦いの渦に巻き込まれていく沙慈・クロスロード

水島 今回、彼らはドラマの中心にいる感じになっています。描くテーマによっての取捨選択は重要で、例えば舞台にマリナ・イスマイールはまったく出てこないんですが、それは橋本祥平君演じる刹那のドラマの肝がそこではないと思っているからなんです。

――それはどういうことでしょうか。

水島 TVシリーズの刹那はずっと子供のままなんですが、舞台版では世界を見ようとする意欲が強くなっている。それは祥平君が持ち込んでくれたお芝居がそう見せてくれていて、舞台という限られた尺でやる場合はそれが正解だと思ったんです。

個々のキャラクターを舞台の3時間近い尺の中でどう表現するかということにきちんと向き合った仕上がりになっています。セリフは同じでも、シチュエーションや温度感が違うのでそこも楽しんでもらえると思います。

――演じる役者さんの個性が、新しい『ガンダム00』を作り出しているんですね。

水島 役者さんが板の上で演じるからには、どうしてもその人なりのキャラクターが出るわけです。そこを肯定しながら、どうバランスをとるか。そこを松崎さんはしっかりと取り組んでいます。キャストの皆さんも、最初はいろいろアドバイスすることが多かったんですが、今は前回の物語を踏まえて、尺の中でキャラクターがいかに生きるのかを考えてくれているので「自分の思う通りにやってください」と。

――水島監督から見て、今回の舞台の印象はいかがですか。

水島 松崎さんがすごく苦心して、ドラマを実にテンポよく、しかもアニメの総集編みたいにならないように見せてくれているので、満足度の高いものになっています。

――アクションシーンも多くて、しかも観ていて「怪我をするんじゃないか」と心配になるほどの激しさですよね。

▲数多くのライザーが舞台狭しと駆け巡り、激しいMS戦を再現。

水島 ライザーに乗りながら、そこで立ち上がって戦ったりしますからね。殺陣も手数が多く、ライザーを動かしてくれるチームとの連携も素晴らしくて、前回を越えたものになったのは間違いないです。自分たちが作ったものが、これだけクオリティの高い形で舞台化されたことは、本当にありがたいですね。

――水島監督的に、今回の舞台で注目してもらいたかったポイントはどこですか?

水島 それはやはりTVシリーズどおりのストーリーではない、というところですね。変更したことで、ある意味物語を強化している部分もあります。原作だ、監修だと言っているけど、本当に新しいものを見せてもらってワクワクしている感じもあるし、まさに「いろんな『ガンダム00』があっていいんじゃないか」という表現が提示できている。いわゆる2.5次元の舞台の中でも、かなりオリジナリティが高いものになっていたと思います。

――では最後に、今後の『ガンダム00』に関して舞台以降の展開などはありますでしょうか。個人的な希望も含めてお聞かせください。

水島 一応サンライズとは「何かを作りたい」という話をしています。朗読劇でやった『RE:Vision』の内容も含めて、皆さんがまだ見ていない刹那たちの物語を描きたいですね。

さらにこれまでの『ガンダム00』の世界観で新しいことが展開できないか、ということも考えています。それは僕や黒田さんがやるというよりも、『ガンダム00』というブランドを続けていきたいということです。

――「まだ見ていない刹那たちの話」というのは、劇場版の先の世界ということですか?

水島 今まで地球を中心とした戦争を描いていましたけれど、宇宙戦争というよりは宇宙の中での秩序……みたいな大きな風呂敷を広げるのも面白いと思っています。ちゃんとSF設定を絡めた新しいアイデアを作らないといけないので、それを一緒に作るスタッフを探すことから始めないといけないですが、そういう他のガンダム作品ではできないやり方、『ガンダム00』だから広げられる考え方を提示してもいいかなと考えています。

最終的に『ガンダム00』は僕が作らなくてもいいんです。誰もが作品を展開できるプラットフォーム化を最初から考えていましたし、今後自分がちゃんとお膳立てして、若い世代に作品を楽しんで作ってもらえるアイデア出しをしていこうと思っています。

水島精二(みずしま・せいじ)

アニメーション監督。『新世紀エヴァンゲリオン』(1995)の演出などを経て、『ジェネレイターガウル』(1998)で監督デビュー。主な作品は『シャーマンキング』(2001)、『鋼の錬金術師』(2003)、『大江戸ロケット』(2007)、『機動戦士ガンダム00』(2007)、『UN-GO』(2011)、『楽園追放 -Expelled from Paradise-』(2014)、『コンクリート・レボルティオ~超人幻想~』(2015)、『BEATLESS』(2018)、『フラ・フラダンス』(2021)など。

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