国民年金保険料を支払っている人が少ないと時々話題になります。支払わなければ、支払わなかった分だけ年金が少なくなる仕組みになっていますが、この仕組みによって老後に意外な落とし穴があるかも?

◆65歳から遺族年金のもらい方が変わる。その時……

先日、年金相談窓口にもうすぐ65歳になるという女性(昭和32年生まれ)が相談に見えました。お話をうかがうと、奥様(相談者)は現在、年間約120万円の遺族年金を受け取っているとのこと。65歳から年金の受け取り方が変わると聞いたので、どう変わるのか、いくらになるのかを尋ねにきたとのことでした。

ご自身は結婚前に3年くらい勤務していたが、その後は専業主婦とのことでした。国民年金は、ご主人の扶養になっていた期間は第3号被保険者として加入していましたが、ご主人を亡くした後は保険料を支払うことができず、免除の手続きもとっていなかったようです。

友人から、遺族年金と自分の年金はどちらかしかもらえないから、国民年金は支払っても無駄になってしまうという話を聞かされたともおっしゃっていました。

以下が、65歳前と65歳以降の遺族年金の受け取り方の違いになります。

(1)遺族年金か自分の年金かの選択制ではなくなる

(2)遺族年金に加算されていた中高齢寡婦加算がなくなる(生年月日によっては、遺族厚生年金の加算給付の1つ「経過的寡婦加算」がその生年月日に応じて加算される場合がある)

(3)自身の老齢厚生年金が優先的に支給され、遺族年金から自身の老齢厚生年金相当分(基金代行額含む)が減額される

(4)自身の老齢基礎年金が支給される

さて、この人の遺族年金は65歳からどうなるのでしょうか。

◆国民年金を払っておけばよかった! 遺族年金の意外な落とし穴

奥様(相談者)の現在の遺族年金額は年額約120万円。この中には65歳まで加算される中高齢寡婦加算約58万円が含まれていますので、65歳以降の遺族年金本体の金額が約62万円ということになります。経過的寡婦加算は昭和31年4月2日以後生まれの方は対象外ですので、加算されません。

また、先ほどの説明の(3)と(4)の通り、奥様ご自身の老齢厚生年金と老齢基礎年金が支給され、遺族年金から奥様ご自身の老齢厚生年金相当額分が支給停止となる(差し引かれる)わけですが、金額を調べてみると、老齢厚生年金が年額約5万円、老齢基礎年金が年額約35万円でした。

合計の受給額としては、以下のようになります。

(遺族年金)-(支給停止分)+(老齢厚生年金)+(老齢基礎年金)

=約62万円-約5万円+約5万円+約35万円

=約97万円/年額

なんと! 65歳前よりも年金額が減ってしまうのです。

これは、ご自身が国民年金保険料をあまり支払ってこなかったため、老齢基礎年金が低額となってしまうことによるものです。

あと数カ月でも国民年金に任意加入をして保険料を支払ってはいかがかと提案はしましたが、それでも増やせる年金額は少額であり、焼け石に水となってしまいそうです。奥様はがっかりしてお帰りになりましたが、こればかりは決まりごとなので私にはどうすることもできませんでした。

遺族年金に限ったことではありませんが、老後に少しでも安定した生活が送れるよう、国民年金はぜひ支払っておきたいところです。免除が受けられる方は、免除の手続きだけは最低限行っておくようにしましょう。

文:綱川 揚佐(ファイナンシャルプランナー、社会保険労務士、年金アドバイザー)

金融機関在職中に1級FP技能士を取得後、社会保険労務士や年金アドバイザーも取得。年金記録確認第三者委員会勤務を経て、社会保険労務士・FP事務所を開業。法人向けの労働相談や、多数の年金相談業務等を行う。

文=綱川 揚佐(ファイナンシャルプランナー、社会保険労務士、年金アドバイザー)