発達障がいのある子の学習指導において配慮すべきこととは?


「うちの子は発達障がいかもしれない」そんな不安を持つ小中学校の保護者が増えています。実際、障害による学習や生活の困難の改善・克服を目的とした特別の指導である通級指導を受けている児童生徒数はこの16年ほどの間に約4倍にも増え、特別支援学級に在籍する児童生徒数もここ10年で2倍以上に増えています。

これは年々、学校の授業だけではついていけない子が急増していることを示しています。この子たちは学習指導において「特別な配慮」が必要なのですが、この「特別な配慮」が学校任せ、先生任せになっているのが現状であり、発達障がいに理解がある先生に当たればいいですが、そうでなければ適切な指導が行われないばかりか、不登校につながる場合もあります。これは何も学校だけの話ではなく、家庭や塾においても発達障がいに対する無理解から適切でない課題を強制的にやらされているというケースも多く見受けられます。

では、発達障がいのある子の学習指導はどのような点に配慮し、どのような方法で教えればいいのでしょうか。
家庭教師として、それらの子たちを多く指導してきた経験からわかった「学習指導における5つの特別な配慮」について解説していきます。

<学習指導における5つの特別な配慮>

1,簡単な問題で成功体験を積ませる
発達障がいのある子たちは失敗することや負けることが大嫌いです。失敗したり負けたりするだけで癇癪を起こしたり、そこまでいかなくてもそのことが嫌いになったりやる気をなくしたりする傾向があります。ですから学習場面では失敗させないような配慮が必要です。親や教師はその子が苦手なところや出来ないところに力を入れて教えようとしがちですが、そうすると「わからない」「できない」というマイナスの感情体験から意欲を失い、『脳が閉じた状態』を招いてしまいます。『脳が閉じた状態』とは、考える意欲を失いその課題に対して一切、脳を働かせようとしない状態のことです。この状態になってしまうとその後の学習は全く無意味になってしまいます。

まずはその子にとって楽な問題から始め「わかった」「できた」という成功体験を積ませることが大切です。そうすることで徐々にその学習に対して興味や意欲が湧いてきます。いわゆる子どもが「ノってくる」のです。この「ノリ」を活かして、少しずつ問題のレベルを上げたり、以前出来なかった問題に挑戦するようにします。

発達障がいのある子に学習を指導する上で一番大切なのは本人の「できるようになりたい」という意志です。成功体験を積ませることはその意志を呼び起こす最も有効な手段です。

2,出来た喜びを共有することで信頼関係を築く
この子たちは褒められることが大好きです。その子が上手くやれた時に言葉で、表情で、全身で喜びを表現する。その子と一緒に「できた」喜びを共有する。それがこの子たちとの心の絆を深め信頼関係を築くことにつながります。そういう意味で言えば、喜びだけでなく、悲しみや寂しさ、辛さも共有することで心の絆や信頼関係は深まります。教えるとは、知識や情報を伝えるということです。知識や情報は、子どもから信頼されていればいるほど、好かれていればいるほど、そして心が通じ合っていればいるほど上手く伝わります。そういう意味では子どもとの心の通い合い、信頼関係は指導する上で大変重要です。

3,嫌がることはさせない
この子たちと信頼関係を築く上で大切なのは「嫌がることはさせない」ということです。そうすることで彼らは安心できます。まず、安心してもらうことが信頼関係を築く土台なのです。彼らが嫌がることの多くは苦手なことです。しかし、親や教師はそこを出来るようにさせたいので、その子が嫌がっていてもしつこくやらせようとするのです。これは『脳を閉じた状態』にさせるだけでなく、子どもとの信頼関係を損なう行為でもあります。二重の意味で逆効果です。

彼らは苦手なことは避けがちですが、置かれた環境によっては自ら克服しようとそれに取り組むこともあります。それは理解者や信頼できる人がいて、安心できる環境です。そういう環境にいると前向きな意欲が出てきて苦手なことも克服しようという気持ちが湧いてくるのです。

4,叱らない。ダメなど否定語を使わない。
発達障がい傾向のある子は叱られることが大の苦手です。「ダメ!」と言われると即座に怒ってしまう子も少なくありません。「ダメ!」の代わりに「ちょっと待って」「どうしたいの?」と優しく声をかけて「こうしようか」とか「そういう時にはこうしてごらん」と代替行為を教えてあげることも大事です。

5,特性を受け入れ理解者になる
発達障がいのある子の親、もしくはその子の指導を担当する教師にとって最も基礎的であり大切なことはその子の特性を理解し受け入れることです。それはわかりやすく言えばその子のありのままを許す。その子を「直そうとしない」ということです。そしてその子の良い点を見て、それをその子にそのまま伝える。そのように接することによりお互い無用のストレスは減り、子どもも安心して楽しく学習することが出来ます。この子たちにとって自分の良さを見てくれ、苦手なことを理解し配慮してくれる「理解者」は彼らの発達を助ける最高の援助者です。

まとめ
家庭教師として多くの発達障がいのある子を指導してきてわかったことが二つあります。
一つ目は「親であれ、医者であれ、教師であれ、その子以外その子の発達障がいは改善できない。しかしその子だけは自らの意志によって改善する力を持っている。」ということです。

二つ目は「親や教師が、もしその子の良き理解者となり良好な関係を築くことが出来れば、その子の前向きな意志を引き出すことができる。」ということです。

つまり、発達障がいがある子に対して直接的にそれを直そうとするのではなく、彼らの特性を理解し受け入れ「優しく思いやりのある接し方」を通して間接的にその子の向上心や改善の意欲を引き出していく。それこそが彼らにとって最大の援助となります。

(長谷川 満:家庭教師)